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第14話 争奪戦 その1

 ナナミが俺の家に引っ越してきた。両親は二つ返事でナナミを受け入れて、抵抗する暇もなかった。俺の部屋に家具を持ち込み、そのまま居座ってしまったナナミ。結婚したという義務感から、毎日同じベッドに入り……。することをしている。


「晴斗。朝起きて元気いっぱいというタイミングで、一勝負お手合わせ願いたかったんだけど」

「…………。さすがに朝っぱらからはしない」

「私たち、もう夫婦でしょ。私のリクエスト、聞いてくれてもいいと思うんだけど」

「ふふっ。お義兄さまとお義姉さまは、仲がよろしいですね」


 今は、学園への登校途中。俺とナナミと沙夜ちゃんと。三人で並んで、国道沿いを進んでいた。


「確かに私と晴斗は昔からケンカしてても仲はいいんだけど、でも沙夜ちゃん」

「なんでしょう、お義姉さま」

「晴斗がその、沙夜ちゃんともシてるの、我慢してなくちゃいけないの?」

「はい♡。それがお義姉さまの同居を認める私からの条件ですので」


 沙夜ちゃんがにっこりと微笑む。二人の会話の通り、俺は妻のナナミと夫婦の営みを行い、沙夜ちゃんとも寝ている。周囲の流れに逆らえなかったというか、そういうものなんだと両親にも説得され、衣食住を頼っている以上、否は言えなかったのだ。


「でも確かに、お義姉さまがお義兄さまを一人占めしたいという気持ち、よくわかります。できるだけ多くの男性と関係を持ちたいという方がいる一方で、愛した一人と添い遂げたいと思われる女性もまだまだ多いのです」

「私、実は古いタイプの女の子だったんだね」

「はい。何を隠そうこの沙夜も、お義兄様以外の男性とカラダを重ねるつもりはありません。お義兄さまが他の女性となさるのは、甲斐性だと理解した上でのことです」

「私は、沙夜ちゃんだから認めてるけどでも……」

「お義姉さまの複雑な気持ち、理解しているつもりです」


 ナナミと沙夜ちゃんの会話が続いていた。割って入ることもできたのだが、女性陣の男絡みの話に首を突っ込むとろくなことがないと、この世界に来てからの経験で学んだ。だから黙って二人のトークを聞いていると……。


「晴斗君。ナナミさんと結婚したんだってね!」


 声が聞こえてそちらを見やった。クラスメートの近江さんが、通りすがりに俺たちに話しかけてきたのであった。


「裏サイトでも話題になってるよ。ナナミさんが投稿して、澪さんとサリーさんが低評価をつけてるって話。晴斗君、付き合ってる女の子たちの仲悪いの大変だなーとか思いながら、他人事のようにタイムラインを楽しんでるよ」

「酷すぎない、それ!」

「えー。晴斗君が魅力的過ぎるのがわるいんだよ。私だって、澪さんとかナナミさんみたいなカースト上位陣が相手じゃなかったら、晴斗君にアプローチしてたもの」

「そ、そうなの……」


 いきなり好意を伝えられて、ドキドキと戸惑ってしまう俺。この近江さんも、クラスでは相当可愛い部類に入る子だ。その子からニコニコと見つめられたら、胸おどらない男はいないと言っていいだろう。


「近江さん。妻の目の前で夫に手を出そうとするの、やめて欲しいんだけど」

「ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったの。横取りしないから安心して。じゃあ、退散退散」


 近江さんはそういうと、丘上の校舎に向かってスロープを駆けていった。ナナミが不機嫌そうにそれを眺めている。俺の女関係は乱れに乱れきっているのだが、それをのぞけば特にいつもと変わり映えのない、穏やかで平穏な登校風景なのであった。



 ◇◇◇◇◇◇



 昇降口で一組のナナミ、一年の沙夜ちゃんと別れてクラスにたどり着いた。中に入って自分の席に座って五分。「おはようございます」と流麗な響きとともに、澪が教室に入ってきた。


「おはようございます、晴斗さま」

「あ、ああ。おはよう」


 隣の席にきて俺に挨拶をした澪。穏やかな声音で表情は微笑んでいたが、眼光が俺を射抜くように鋭い。そのまなこのまま、俺に言い放ってきた。


「晴斗さま。これから少し、よろしいでしょうか?」

「え。でも、もうホームルームが始まる……」

「きてください」


 澪は俺の腕をガッシとつかむ。そのまま引きずるようにして、力づくで俺を教室の外に連れ出したのだった。

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