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第11話 幼馴染ナナミ その1

「晴斗。澪さんやサリーさんと、その……ヤッたらしいじゃない」


 そう口にしてきたのは、幼稚園以来の幼馴染、若狭ナナミさん。俺の部屋の座卓をはさんで、険しい顔つきでにらみつけてくる。


 時間は、日曜日の昼過ぎ。一週間の学園生活を終え、休日になって疲労した身心を休めているところだったのだ。その俺の家にナナミが押しかけてきて、部屋にまで押し入り、今の状況になっている。


「裏サイトで澪さんがはしゃいでいるし、その書き込みにサリーさんや他の女子生徒も絡んで、しっちゃかめっちゃかになってるんだから!」

「裏サイトっていったいどこにあるんだ? あることないこと書かれて迷惑しているのは、俺の方なんだが」


 と、ナナミがその厳しい視線に怒気を含んで言い放ってきた。


「どんなのはどうでもいいから、ヤッたの? ヤッてないの? どっち?」


 俺は、その圧に抵抗しきれない。昔からの付き合いであるナナミに嘘をつくのが心苦しかったのも理由の一つ。俺は、ナナミに正直に吐露した。


「ヤッた。二人から求められたからだが、俺も男だから性欲に従った部分はある」

「…………」

「後悔はしてないし、悪いことをしたとも思ってない。この世界の常識にも慣れてきたところだし、悪いことだなんて思うのは澪やサリーに失礼だと思ってる。高校生同士でするのがいけないってほど固い考えもしていない。そもそもなんでナナミが怒っているのかが俺にはさっぱり……」

「なんで私をほったらかして他の女にてーだすのって話!!」


 ナナミが、身を乗り出して俺に言葉をぶつけてきた。その顔に、俺に対するいきどおりみたいなものが浮かんでいる。


「私も澪さんやサリーさんと同じ、学園の四大美花なんだけど?」

「そこは確かに、ナナミが可愛いのには違いないんだが……」

「前に私の裸、見たでしょ? 胸とか自信あるんだけど、実際のとこ、どうなの?」

「それは……。澪ほど大きくはないけどサリーよりはずっとボリュームがあって……。すげー柔らかそうだなって……」

「ならなんで私にてーださないの!!」


 俺は、大声でしかられてしまった。澪、サリーとしたことには違いないが、成り行きでああなった訳で、それをとがめられても困る……と思っていると、目の前のナナミがいつの間にか涙目になっているのに気づく。その濡れた瞳で、怒りを込めて見つめてくるナナミ。俺は、素直に驚いていた。


「ナナミ、お前……。一週間前に俺のベッドに忍び込んできたときには、なんでもいいからとにかく子供ができればいいんだみたいなことを言ってたと思うんだが……」

「私もそう思ってた、晴斗が他の女とするまでは。立派なことして褒められて承認欲求がみたされて将来が保証されればって……。でも実際に今の状況になったらなんかもう、頭ぐちゃぐちゃになって自分でも自分がわからなくなって……」


 ナナミが拳を握り、唇を噛みしめながらぽたぽたとテーブルに涙を落とす。ナナミはごしごしと顔をぬぐったが、雫は止まらなくて、鼻をすすり始める。


「私、どうすればいいのかな……。晴斗とどうなりたいのかな……。他の子がうらやましくて、他の子のように晴斗としたいんだけど、ただそれだけじゃないような気がして、自分がわからなくて……」


 せきを切ったように気持ちをこぼし出してくるナナミに、俺はどうすればいいのかわからない。ただただナナミを見つめるばかりだったのだが、そんな場面に沙夜ちゃんが入ってきたのだった。

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