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ひたすら北へ

 池袋の地下街も半分以上の灯りが消えていて、かなり暗かった。

高利と黒田は一夜を明かせそうな場所を探しながら、先ほどの出来事「はるかがUFOを消滅させた」を話していた。(はるかはまだ高利の腕の中で眠っている)

二人はUFOが粉々になっていく光景を前に見た事があった、そうあの自転車屋の前で、同じようにUFOがボロボロになって地面に崩れ落ちてきた。そしてその後にRRTLが現れた。

「同じことを考えてますよね?きっと黒田さんも」高利から切り出した。

「たぶんね」

高利が地下街の飲食店内の椅子にはるかを寝かせて、自分のシャツをかけてあげた。

黒田も同じ店の椅子に腰掛けて「おなかすいたね」と言って、無人の厨房を眺めた。

「何か食べる物を探してみます」高利は厨房に入ってゆき、冷蔵庫を開きながら「お店の(かた)、勝手に開けてすみません」とことわった。

今日初めての食事にありついた二人。

「私、非常事態の時にお店の物とか持っていっちゃう人ってどうなんだろうって思ってたけど、自分もそういう人間だったんだと思い知らされた」

「そうですね、人様の物なのにいただいてしまって、でも、とても美味しいです」高利がそう言うので黒田はクスクスと笑った。

「はるかちゃんが起きたら、食べさせてあげよう」

二人は、おにぎりとお惣菜をありがたくいただきながら、さっきの話しの続きを始めた。


「RRTLは私や高利くん、それにはるかちゃんにもあんなに強力な力を渡して」

「そうなんです、それなのに……」

「うん」

「敵の攻撃が、サッチ合金の球を撃ってくるだけなんて、何かおかしいですよね?」

「そうなの」

声が大きくなってきたので、はるかが目を覚ましていないかチラッと見て。

「私も初めは人肉を傷つけないようにサッチ合金のみの攻撃をしているのかと思ってたんだけど」

「はい、RRTLがあれほどの力のある装備を持っているということは、敵のUFOも同等かそれ以上の武器や装備を持っていると考えるのが普通ですもん」

「そうよね」

その時、地下街の向こうの方で小さな灯りが動くのが見えた。

「今、光った」

「はい、黒田さんも気づきました?誰か生存者の方でしょうか?」

二人は少しだけ身構えた。何が出てきてもちょっと怖いと感じてしまう、闇とはそういう気持ちを増幅させるのだ、ましてやこんな状況では。

「すみませんー」逆に向こうから声をかけてきた。

「人だ」高利がそう小声で漏らすと、黒田が声の主に応えた。「はいー!大丈夫ですか?」

スマホのライトで足元を照らしながら20代くらいの男女カップルが歩いてきて「よかった!人に会えた」と肩をおろして安堵しているようだった。

とりあえず、カップルを店の中に招いて食べ物と飲み物を差し出した。

高利と黒田はとにかく情報が欲しかった。

カップルは今日デートをする予定で、池袋の待ち合わせスポットである地下街の”いけふくろう”で落ち合った。しかしデートを始める間もなくすぐにUFOの攻撃(地上での)が始まったらしい。一度外に出て様子を見ようとしたがあまりの光景にまた地下に戻ってきたのだった。

「地下街に敵は入って来なかったんですか?」黒田が尋ねると

「いえ、大量に入って来ました」カップルの男性が答えた。

「!」高利と黒田は息を飲んだ。


池袋の地下街には一人乗りのドローンのような乗り物に乗ったエイリアンが、少なくとも20人は入ってきた。

音もなく高速で進むドローンに立ち乗りしているエイリアンたちは統率の取れた動きで、やはりサッチ合金の球を撃ち出す銃で次々に人間を撃っていった。倒れた人間たちはドローンの後ろに牽引しているポッドからマジックアームが出てきて回収していった。

カップルたちは初めトイレに逃げ込もうとしたが、先に中に入って行った人々の様子を見てやめた。

エイリアンはトイレのような隠れ場所になりそうなところに、小さな装置を投げ入れていく。

小さな装置からは、おそらく耳に聞こえない音、例えば超音波のようなものが発せられているようで、トイレに駆け込んだ人たちは頭を抱えて苦しそうに飛び出してきて、次々に倒れていった。

カップルが隠れたのは地下街のメーンコンコース(広場のようになっている場所)中央の床下だった。

たまたま、床のプレートがずれたところを見つけて、隠れられるかもと思い二人で逃げ込んだ。中は電気配線や配管パイプのようなものがいくつもあり、保守点検用のハッチであることがわかった。

人間が隠れそうな店舗内やくぼみなどは徹底的に調べられたが、まさか大広間の床下に潜んでいるとはエイリアンも思わなかったらしい。

1時間半くらい過ぎて、静かにはなったのだが怖くて出られなかった二人はさらに4時間アナグマ状態を続け、15時くらいにやっと出てきた。

コソコソと外の様子も見に行ったがあまりの恐怖にやはり地下に戻って時が過ぎるのを待った。


「一人乗りドローンか……それでもやっぱりサッチ合金の球なんだな」高利がそう言うとカップルの男性が聞き返した「サッチ合金ってなんですか?あと、その、あの」

男性が言い淀んだのでカップルの女性の方が言葉を発した

「あの、そのお身体が銀色なのは、なんなんですか?そちらの方も背中に武器のようなもの」

ずっと不審そうに眺めていたので、やっと聞けた!という感じだった。

高利と黒田は、今度は自分たちのいきさつや、はるかの事も隠さず話した。


「エイリアンから提供された装備(もの)だったんですか?大丈夫なんでしょうか?それって」

男性は隣に座る女性の手をギュッと握り緊張を見せていた、それはそうだ。敵か味方かわからないやつからもらった武器を信じて身につけるなんてやっぱりどうかしてる。それは黒田と高利にもわかっている。

だが、この現状。そこに身を委ねるくらいしか生き延びる術がないのでは……とも思っていた。

「お二人はやっぱり北に向かうんですか?」男性は少し話を変えてそう聞いてきた。

黒田は不思議そうな顔をして「やっぱりって?」

カップルは店内のコンセント(かろうじて生きているやつ)で充電していたスマホを取り上げ、何かを見せてくれようとした。

「横浜の方はかなりヤバいみたいです」そう言いながら男性はあるサイトを見せてくれた。

「とあるユーザーが立ち上げているサイトです。今、日本語のサイトは15くらいあって、有志の方たちがプログラムを書いて一から作ってるみたいです」

それを見て高利たちは驚いた。「あの”Wi-Fi DOMOGarus”を使ってるの?大丈夫なんだ?安全?」

「今のところは」男性がそう言うと、横から女性が違う画面を見せてきた。

「ここのサイトは掲示板みたいになってて、かなりの人が情報をあげてますよ!」

高利と黒田は急いで自分たちのスマホを立ち上げて”Wi-Fi DOMOGarus”に接続した。


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『世紀末おじさんの情報掲示板』ver.3 一部のキャリアからアクセスすると文字化けするというバグを解消しました


「世紀末おじさんありがとうございます」

「感謝です!」

「ここだけが生きる望み」

「みんなで4のうぜー」

「家族にこの掲示板の事を知らせたい」

「茨城県桜川市の片岡ゆみです!情報ください!お母さん、お父さん、笹野のおじさん。連絡待ってます!」

「新潟県胎内市、UFO2機飛来中」

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スクロールすると700以上の書き込みがあった。言葉の規制がない分ひどい書き込みも多いがその中で有益そうな情報も1割くらいはありそうだった。

「これ見てください」男性がとある書き込みを見せてきた。

「横浜上空に超巨大UFO来てる!ヤバい、今までのやつの20倍くらいデカい!オワタ」

20倍……その大きさのインパクトは高利と黒田を打ちのめした。

「ニュートリートメントは……あぁ、、その、エイリアンね、聞いた情報によれば2,500人くらいしかいないっていう話だったけど、そんな人数で全世界を攻撃したり、巨大UFOを運用したりできるものなのかな?」高利がなんとなくカップルの方に向かってそう尋ねた。

「僕が聞いた情報ではエイリアンは3万人以上地球に侵入してるって」

男性がそう言うと、隣の女性が横から「私は10万人だって聞いたよ!」と競うように言った。

黒田が画面をスクロールしながらつぶやく「千葉でも巨大UFOの目撃情報出てる、同じUFOかな?複数機いるのかな?」

それを聞いてカップルの男性がさっきの話に戻すように「そうなんです、だから千葉や神奈川に巨大UFO上陸という情報が多いので、みんなで北に避難しよう!と掲示板が盛り上がってるんです」

「北って、どこに?」

「わかりませんがとにかく北に!」

ズゥウウウウウン!大きな地鳴りが起きたと思ったら。地下街の電気が全て消えた。

「きゃぁ!」カップルの女性の悲鳴。

ズゥウウウウウン!また大きな地鳴り。「UFOとかそういう感じの音じゃないよね?」ズゥウウウウウン!

「怖い」カップルの女性はスマホの明かりをつけて、男性の方に身を寄せた。

ズゥウウウウウン!地下街の天井からポロポロとホコリが落ちてくる。ズゥウウウウウン!

「何かの足音?」

「確かにそんな感じかも」

ズゥウウウウウン!

その音と振動はだんだんと近づいているようにも感じた。



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