4.遥か闇なる世界からの使者、黒神子の力
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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意地悪三人組のリーダー、アカイです。
4.遙か闇なる世界からの使者、黒神子の力
「ぐっはっ! がはっ! グッえっ!」
「いい加減にしろよ、ラエルロット。お前はしつこいんだよ。いい加減に諦めて倒れろや。弱いくせにもうこれ以上立ち上がるんじゃねえよ!」
ドカッ! バキッ! ズカッン! バッコーン! バタン!
三人の勇ましい若者達に囲まれたラエルロットは三体一という不利な状況であった事もあり、殴られ蹴られサンドバック状態のまま一方的にやられてしまう。そんなラエルロットを見下ろしながら三人の若者達はそれぞれ驚きと焦りにも似た悪態をつく。
「はぁ、はぁ、はぁ~っ、全くラエルロットの分際でふざけやがって、なかなかに手こずらせてくれるじゃねえか!」
「全くだ、結構粘る物だから本当に殺してしまいそうだったじゃねえか!」
「思いのほか根性だけはあるようだな。それとも年上だからって無理をしているのか。いずれにせよだ、弱いくせに無様に何度も立ち上がるんじゃねえよ!」
息絶え絶えの三人の傍らでボロ雑巾のようになったボロボロのラエルロットがうつ伏せの状態で倒れている。その戦いはとてもフェアとは言えず、力の強い大人が三人がかりで取り囲み、非力な青年を袋叩きにしているようにしか見えない。
それでもラエルロットは剣で吹き飛ばされても、殴られても、或いは蹴られても、更には投げ飛ばされても必死になって立ち上がり死に物狂いに挑んだが、やはり多勢に無勢と言う事もあり、ついには疲れ果て動けなくなってしまう。
疲労困憊でもう一歩も動けないと言う状態でもあったが、それ以上に体中に受けた切り傷や打撲そして打ち身が見るからに痛々しく皆の目に入り。その傷を負わせた三人の若者達ですら、ちょっと調子に乗り過ぎたのではないかと言う空気がその仕草と表情に重く出てしまう。
「お、おい、アカイ、こんなもんでいいんじゃないのか。このままだとこいつ本当に死んでしまうぞ」
「そ、そうだな、ちょっとやり過ぎたかな。それにこいつも弱いなりにも結構頑張ってたし、そんなに弱くはないよな。ここまでやれるのに、なんでこいつ8級の試験を落ちたんだ?」
興ざめした青い顔をアカイに向けながらオジエルとキイオは言葉を掛ける。だがそんな二人の遠回しな停止をアカイは聞かず、近くにあった柄の長いバトルアックスを振り回しながら豪快に構える。
「いいや、まだだ。見ろラエルロットを。奴はまだやる気だぞ!」
アカイの言葉に皆の視線が倒れているはずのラエルロットに一斉に向けられる。そこには虫の息のはずだったラエルロットが銅剣を杖代わりにしながら何とか立ち上がろうともがいている真っ最中だった。
「お、俺は……負けない……負けないぞ。いつか必ず遺跡発掘の……冒険者になるんだ。それが俺の夢だから……」
「ならその夢、俺が完膚なきまでに叩きのめして打ち壊してやるよ。その銅剣が折れればもう練習も暫くは出来ないだろうし、現実を直視できるだろ。夢は所詮夢だし、夢とは才能や財力や権力や力の無い者には決して叶わない物なんだぜ。だからいい加減に諦めろや。お前には冒険者としての才能が無いんだよ!」
「そんな事は無い。夢に才能なんか関係あるか! 後悔しないように……己の信念と好奇心を武器に、気が済むまで夢に可能性に挑み続けてもいいじゃないか!」
「そんなのは時間の無駄だ。お前には才能が無いんだよ。少しは身をわきまえろや!」
「うおおおおぉぉぉぉーっ!」
血反吐を吐かんばかりに雄叫びを上げたラエルロットは渾身の中段突きの一撃をアカイなる人物に勢いよく放つが、その一撃を迎え撃つかのようにアカイのバトルアックスの一撃がラエルロットの銅剣を凄まじい勢いではじき飛ばす。
ガッキイィィィーン!
「ぐっわぁぁぁぁーぁぁ!」
激しい金属音が交差したその瞬間、大きく空中に吹き飛ばされたラエルロットの銅剣はボタリと地面へと落ち、その後にラエルロットが凄まじい勢いで地面へと倒れ込む。
その銅剣をまだ拾おうと這いつくばりながらも目指すラエルロットはまるで芋虫のように体を動かす。
そんな光景を面白半分に見物していた野次馬達も流石にこの状況はやばいと思ったのか「もう止めてあげて」と言う女子もいれば、「もうそのくらいでいいだろう」と言う他の男達の声が飛び合い、周りが騒ぎ出す。
ちょっとした面白半分のつもりがまさかこんな惨事になろうとは、流石のオジエルとキイオも思ってはいなかった事だろう。少し力を見せつけて脅せば怯えて頭を下げると思っていたからだ。だがラエルロットは弱いながらも必死の思いで立ち上がって来る。黙ってそのまま倒れていればその場をやり過ごせると言うのに……意地かプライドか、それとも冒険者になる夢を否定されたからか。いずれにせよアカイ・オジエル・キイオの三人は、そんなラエルロットの気持ちを理解できずにいた。
「まだだ、今ここで俺が諦めたら俺の夢や思いが……全てが嘘になってしまう。だからあいつらに俺の思いを認めさせないと……俺は……前には進めない……進めないんだ!」
あと少しで銅剣に手が届こうとした時、両手でバトルアックスを構えていたアカイが憮然とした顔を向けながらラエルロットを上から見下ろす。
「後悔が残らないように俺がこの汚らしい銅剣をへし折ってやるよ!」
「まて、その剣が折れたら練習する剣が無いんだ。や、やめろ、止めてくれぇぇぇーっ!」
そんなラエルロットの懇願も空しくアカイの持つバトルアックスは力強く地面へと叩き落とされ、その直撃を受けた銅剣は真ん中からボキリとへし折られ、真っ二つに飛び散る。
ボキリ……バキーン!
「あ、ああぁぁ、俺の銅剣があぁぁぁ……なんでここまでするんだよ。俺が一体何をしたと言うんだ。うわあぁぁぁぁぁーっ!」
地面に転がる、壊れた銅剣を眺めながら、ラエルロットは体を震わせ人にはばかる事無く泣き崩れる。その姿は周りのみんなの同情を誘い、傍にいたオジエルやキイオでさえも非難の目をアカイに向けるほどだ。
「アカイ、お前、何もそこまでやらなくても……」
「そ、そうだぜ、もう俺達の勝ちは決しているのに、ちょっと大人げないぞ!」
「いいんだよ、これで。平民の……最下層の村出身のくせに出来もしない夢なんかを持つからだ!」
足下に倒れているラエルロットにツバを吐きつけたアカイの後ろから、初々しい少女の声が飛ぶ。
『夢を持つことはそんなに悪い事ですか。誰にだって夢に向かって行動し、立ち向かう権利はあるのですよ』
誰だ? そう思いながらアカイが振り向いた瞬間、傍にいたはずのオジエルとキイオが突如口から泡を吐きながら足下から崩れ落ちる。その傍らには黒いローブを纏った一人の少女がそっと立っていた。
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