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2.笑顔の青年

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

              2.笑顔の青年


「おお~君があの、旅をしながら人々の不幸や災いを吸い取り、尚且つ古代の神様の力を持つとされる、黒い神子……通称、黒神子と呼ばれている不老不死の魔女か。すっげーえぇな、俺初めて見たよ!」


その声質からしてまだ若い男の声だ。黒神子はハッとしながらその涙に濡れた顔を上げると声のした方にその顔を向ける。

 そこには万遍の笑顔を浮かべた青年の顔があった。


 元気溢れるその青年は優しい笑みを向けると、戸惑いの顔を向ける黒神子の顔をマジマジと見る。


 黒いローブから覗いた黒神子の素顔は小顔で白く、そしてルビーの用な赤い瞳と美しい黒髪が印象的な少女だ。


 対する青年の方は青黒い髪質に黒い瞳、そして細身だが引き締まった体をしている。どうやら何かしらの技能技術や戦闘訓練を積んでいる者の用だ。


 その好奇心丸出しの優しそうな青年が、人々から忌み嫌われ恐れられている、呪われし存在、黒神子の少女に堂々と話しかける。


「君が噂の黒神子だと言うのなら当然いろんな世界各国の遺跡にも足を踏み入れているのだろ。古代に生きていたと言われているあの地球人と呼ばれし者達が嘗ては生きていた遺跡の中を調べるのもまた黒神子の仕事の一つだという話だからな」


「た、確かにそうですけど……その前に、あなたは私が怖くはないのですか。そんなに近くにいると私から流れる呪いの力が……あなたにも移るかも知れませんよ」


「はははは、俺は大丈夫、大丈夫だよ。そんな迷信信じちゃいないから。そんな事よりも黒神子と呼ばれている者達はいろんな遺跡を巡り、調査し、様々な事を調べているんだろ。当然古代の地球人の人達が残したとされる文明の遺産についても。なら今までに一体どんな発掘品を発見し、そして見て来たのか。その経験して来た事全てを俺に詳しく教えてくれ。頼むよ。黒神子と呼ばれているあんたが持つ不可思議な力の事や(古代の遺物と呼ばれている)かつての地球の人達が残したとされる様々な発掘品の品々に非常に興味があるんだ!」


「どうしてそんなに古代の遺跡や遺物の事が知りたいのですか?」


 可愛らしく頭を傾ける少女にその青年は胸を張りながら堂々と言う。


「実は俺、子供の頃から古代人の残した遺跡やその謎に非常に興味があるんだ。二千年前に突如としてこの地へと現れた地球の人達は一体どこから来て、そしてあれだけの魔道科学文明を持ちながら一夜にしてなに故に滅んだのか……とかね。そう考えると謎は尽きないだろ。だから遺跡について調べているとされる黒神子でもある君に、直にこの話を聞いてみたくて、つい声をかけたんだよ」


「そう……そうですか。あんな危険で呪われた場所に興味を示すだなんて、あなたもどうかしていますね。まさかとは思いますが遺跡調査専門のプロフェッショナルでもある冒険者にでもなるつもりですか。今一攫千金を狙って危険を顧みずにその道を目指す人が多いとも聞きますからね」


 その言葉にその青年はニンマリと笑う。


「ははは、よくわかったな。実は俺、一流の冒険者になる事を目指しているんだ。しかも先月試験を受けてな。なんと今日その試験結果の発表を聞きに行く所なんだ。何せ今年一年、この時の為に必死に勉強をし、技能技術もしっかりと磨いてこの試験に挑んだんだからな。今度こそ必ず受かると確信しているよ!」


「そうですか。受かるといいですね。それで今回で何度目の試験なのですか」


「ん、三回目だが」


「因みになん級の試験を受けているのですか。何せ三回も落ちているのですから冒険者6級か、或いは5級と言った所でしょうか」


「いや……八級だが……なにか」


 その青年の言葉を聞いた黒神子の少女は、申し訳なさそうに顔を硬直させる。


「は、八級ですか……それはなんとも……が、頑張って下さい」


 言葉に詰まった黒神子の少女はつい愛想笑いを浮かべる。そんな少女にその青年は拾い上げた銅貨を渡すと、自信満々に力強く立ち上がる。


「ふふふ、誰でも受かるとされる第八級の試験を三回も落ちている事を言いたいのだろ。確かに今までは何かしらの不備があって『たまたま』運悪く落ちてしまったが、今回は大丈夫だ、自信があるんだ。これから冒険者学校に行って結果を聞いて来るから、帰って来たら、君が今まで見て来たと言う遺跡の話や様々な体験談を聞かせてくれよな」


 半ば一方的に黒神子の少女とまた会う約束をすると青年は人々が行き交う活気のある広場の方へと走り出すが直ぐに振り返る。


「そう言えばまだ名前を名乗ってはいなかったな。俺の名は『ラエルロット』行く行くはプロの遺跡専門の冒険者になる男だ。そして夢は、正義を志す者なら一度は誰もが憧れる、あの勇者職になる事だ!」


「私は……遥か闇なる世界の黒神子……名は『レスフィナ』と言います」


 ラエルロットの明るくそして情熱的な勢いに押されたレスフィナは、困り顔をしながらも優しく微笑んでみせる。


 まるで彼女には無い何かをこの青年に求めるかのように。

https://37636.mitemin.net/i890883/

挿絵(By みてみん)

本編の主人公、ラエルロットです。

 ご愛読ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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 この小説は毎日夜の19時に公開します。ストックの続く限り公開しますので、お見逃しなく。

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