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終末の帝国  作者: 風林
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帝国の滅亡

「総帥殿、我々はどうするべきだろうか。他の部隊とは連絡がつかず、おそらく全滅したと思われる。残る部隊は我々だけだろう」

 帝国最強クラスの弓兵部隊を率いて無数の敵を葬ってきた戦友が訪ねてくる。ああ、これまで数多の帝国の困難を乗り越えてきたが、今回ばかりはもうこれ以上手の打ちようがないだろう。帝都はとうに陥落して、それ以外の主要な都市もすべて陥落している。これまで、内戦や、強力な外敵の手によって帝都が落ちたことは何回かあるが、そのたびに取り返してきた。しかし今回はもうだめだ。何回も覚悟はしていたが、帝国は数日中には終わるだろう。あとは帝国の最後をどう飾るかというだけである。


「ラインリッヒ、残っている全兵士に通達してくれ。これから一緒にヴァルハラへ行きたい奴だけついてこさせろ。有終の美だ。旅立つことを恐れる奴は入れるな」

 帝国の最後は敵に畏怖を植え付けなければいけない。百年後・千年後にも語り継がれるように。



 指示を出してから一度天幕に戻り、戦闘態勢を整えて外に出ると、ここまで残っている主要な将校がすべてそろっている。

 筆頭歩兵将軍にして、これまで数百年にわたって一緒に戦ってきたラインリッヒが進み出てくる。

「総帥殿、全軍の出撃準備が整ったぞ。ヴァルハラを厭う者は我が軍には一人もいなかった」


 ラインリッヒの言葉に周りの将校たちがうなずく。

「ここまでついてきた者たちは既に覚悟を決めております。私どもも、すでに兵士との別れを済ませております。あとは総帥様の指令一つで全軍動くことが可能です」


将軍職の一人が話す。なるほど、伊達に言っているわけではないのは、その全身から伝わる気迫でわかる。

「皆の者、最後までついてきてくれてありがたく思う。最後に全兵士への訓示を話してから、最後の戦いへと赴こうか。拡声魔法を準備して、全兵士に一時傾注させよ」


 私の指示に従って、各将校たちが、副官を使いに出す。


 しばらくしてから、全兵士の意識がこちらに向いているのがわかる。それをまずは感じてから、ゆっくりと最後の言葉を話していく。敵軍はもうすでにこちらに向かっているとのこと。ゆっくりしてばかりはいられない。ただそれでもゆっくりと話していく。


「ライヒの勇敢な戦士たちよ、ここまで勇敢に戦ってきてくれたこと、うれしく思う。いまだに我々帝国の柱がいるのは諸君のおかげであることは疑いの余地がない。感謝する」


それからこれまでの帝国の生い立ちを語っていく。私も別に最初からいるわけではないが、それでも帝国の柱として、数百年間帝国のために尽くしてきた。その間で何度も困難に直面してきたが、それぞれの時代の戦士たちは後世のためにと喜んで命を散らしていき、私は貴き犠牲を無駄にしないと誓ってきた。それももう、守れなくなってしまうが、代わりに千年以降も残る伝説をここに残そう。


 ライヒにとって脅威だった各国からの侵略を退け、異界からの侵略者も押し返し、神にも逆らった我らにはもう恐れるものはない。三千世界に我らの驍勇に示そう。これ以上話しても、特に意味もない。最後にヴァルハラへの祈りを捧げたら、共に逝こう。


 その翌日、帝国は滅び、2日後に人類は滅亡した。


――千年後――

人型をしながらも人ならざる者たちは古くからの言い伝えがある。

 曰く、徹底した統率を誇る、『尋常ならざるライヒ』と呼ばれた種族がいて、最高神の率いる軍勢に壊滅的な損害を与えて、ただ一人として降参することなく、同族のほとんどが殺されてしまったと。


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