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正解は君のために  作者: 風太生
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幸か不幸のターニングポイント 3

 そして日が暮れた頃、再び校門をくぐり教室へ向かった。

 教室は窓が開いていて、カーテンがはためいていた。

 空人君の机は月明かりに照らされていて、教室全体をレンズに収めると、その場所はまるでスポットライトが当てられているように見える。

 私が来るのを待っているかのようだった。

 息をのみ、ゆっくりと近づく。

 そして指先でゆっくりと机上をなでると、奥底から温かいものが込み上げてきて、幸福感に包まれた。

 表面には落書きや汚れ一つなく、中に何かが詰まっている感じもない。

 机の脚に若干ガタつきがあるせいで少し傾くと、コンッと軽やかな音を立てた。

 生活感を感じさせないその机から、確かに私は彼を感じた。

 そして恐る恐る机の中に手を伸ばすと、予想通りに“それ”はあった。

 嬉しい気持ちと罪悪感の狭間で、取り出そうとする手が一瞬止まる。

 しかし、既に手中にある誘惑に勝てるはずがない。

 取り出して久しぶりにその表紙を見ると、表現のしようがない感情が込み上げてきて、視界が滲んだ。

 私の中で、空人君と言えばこの小説だった。

 初めて空人君が貸してくれた本であると同時に、初めて空人君が自分から行動を起こしてくれた“きっかけ”でもある。

 そしてこの小説を読んだとき、私は初めて空人君のことを知れた気がした。

 ほんの少しだけど、確実に。

 きっとこの人は“正解”を探してるんだ。

 他人が介在する余地なんて無いほど正しいと信じられる、自分だけの正解を。

 クールな見た目だけど内には秘めた理想があるんだな、と感じたことは今でも忘れない。

 そして同時に魅力的だとも思った。

 そう感じた時に、私は自分の恋心を確信したんだ。

 月明かりに照らされる中、そんなことを思い出した私はパラパラとページをめくりながら、決心をした。

 最後のページをめくり終わったら、今ここで彼に別れを告げよう。

 始まりの物語の終幕と共に、この気持ちも思い出も全て、本の中に閉じ込めてしまおう。

「・・・さようなら。空人君」

 落ちる前に滲んだ視界を拭き、ページをめくる速度をはやくする。

 風が若干前髪を揺らした。

 そして最後のページに差し掛かった時、誰かの“運命”が教室のドアを開ける音と共に、私の決意を否定した。

 ギリギリで止まった指を固定したままドアの方を振り向くと、私は自分の目を疑った。

 「これは末期症状に違いない。

ついに幻覚が見えるようになるとは」って思いたい。

 本当は分かってる。

 幻覚じゃないことくらい。

 でも、幻覚の方がまだマシだよ。

 そこに居たのは紛れもなく空人君本人で、私の決意を否定したのは他の誰のでもない、彼の運命だった。

 最初は心臓が止まりかけるくらい驚いた。

 こんな時間に、しかも他に誰もいない時に出くわしてしまったら、無かったことになんてできない。

 実際に目が合ったままの時間が五秒間は続いていた。

 後になって考えても、この再会が私にとって良いものだったかどうかは分からない。

 でも、二周目の人生のターニングポイントは間違いなくこの瞬間だと思う。

 だって、どんなに接触してはいけない理由があったとしても、そう感じてしまうことが罪になってしまうとしても、私はこの時“嬉しい”と感じてしまったから。

 一周目で死んで以来、私の中で止まった時は、この“目が合った五秒間”で確かに動き始めた。

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