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正解は君のために  作者: 風太生
53/103

起源 6

「・・・未羅、まだ目瞑ってる?」

 未羅の方を振り返らないまま聞いた。振り返って未羅の顔を見たら覚悟が揺らいでしまいそうだったから。

 すると、

「うん」

とさっきまでと変わらない声の調子で返ってきた。

 どうやら本当にまだ目を瞑っているらしい。

 目の前の光景を見る限り、もはや二人で脱出するのは不可能に思えた。

 地面は既に炎で埋め尽くされているし、天井にも所々火が回り始めていて、崩壊しているところもあった。

 フード販売のカウンターから火が噴出し、バチバチとなっている。

 そうなると、思い浮かぶ方法は一つしかなかった。

 それも一か八かだ。

 最後に深呼吸をして、心の中で別れを告げた。

「未羅・・・ごめん!」

 その瞬間、僕は強引に未羅を抱き上げ、出入り口まで力の限りを尽くし走った。

「ちょっ・・・えっ!?空人君!?

なにしてるのっ!?下ろして!!」

 いきなり抱きかかえられた未羅は動揺して目を開けていた。

 しかし、僕は返事をすることは出来なかった。

 肺はとっくに限界を超え、もはや正常な呼吸は出来なくなっていた。

 痙攣していて息が吸い込めない。

 普通なら意識を失っていただろうが、足を焼かれる激痛で何とか正気を保っていた。

 急がないと。

 頼むから持ちこたえてくれ、僕の体。火の海の真ん中では倒れられない。

 その気持ちだけが原動力になっていた。

 いわゆる火事場の馬鹿力という奴だろう。

 人一人抱えて走るなんて、普段の僕には到底できない。

 あと十メートル。

 五メートル。

 三メートル。

 その時だった。

―――ギィィィィパキッ、ガラガラガラ

 頭上で音がしたので、咄嗟に未羅を前に放り投げ、萎みかけの肺からさらに空気を押し出した。

「助けてくだざいっ!!!!!」

――――――ゴゴゴゴガッシャーーーン

 どうやら、僕は崩れ落ちた天井に挟まれたらしい。

 もはや痛みは感じなかったし、音も聞こえなかった。

 ほぼ暗くなってはいるが唯一まだ機能している視覚を使い未羅の方を見ると、消防士が二人駆け寄ってきていた。

 ・・・よかった。

 これでよかったんだ。

 我ながらよくやった。

 しかし、未羅は連れて行こうとする消防士の手を必死に振りほどき、泣きじゃくりながら僕に何かを叫んでいた。

 隣の消防士も辛そうな表情をしている。

 あぁ・・そんなに叫んだらだめだ。

 肺に煙が入ってしまう。

 ・・・ほら、そんなに咳をして。

 消防士さん、お願いだから早く未羅を連れて逃げてください。

 そう思っていたが、もう口は動かせなかった。

 その後すぐ、僕は眠気に耐え切れなくなり、目を閉じて、そして死んだ。

 僕が初めてあの真っ白な空間に行き、初めてシイナさんと会ったのは、このあとのことだ。

◆◇◆◇

 初めて“そこ”に着いた時も、最初に認識したのは高級そうな靴が地面に弾む音だった。

「あれ?・・なぜあなたが。

・・・初めまして。

私“人類可能性管理局”のシイナと申します。

どうぞ、目を開けてください。」

◆◇◆◇

 気付けば隣に未羅が居た。

「・・・え?ここ何処?私さっきまで担架で運ばれてて・・・」

 不安そうに周囲を確認する過程で、隣にいる僕に気付いたようだった。

「・・空人君?

あれ、でもさっき・・・

え?どういうこと?

ここ何処なの?空人君、この人誰?」

「み、未羅。

一旦落ち着いて。

僕にもわからない」

 僕は、不安が頂点に達してまたパニックを起こしそうになる未羅をなだめた。

「不安ですよね。

でも安心してください。

今からちゃんとご説明いたします。

大丈夫ですか?」

 シイナさんが未羅の方を向いて人を安心させるような声音で言ったのに対して、未羅はとりあえず頷いた。

「よかったです。

では、改めてご挨拶させていただきます。

初めまして。私、人類可能性管理局のシイナと申します」

 人類可能性管理局。

 これらのワードが連なると実に胡散臭い響きがした。

 しかし、名乗られたらまずは名乗り返さなければいけない。

 それが礼儀だ。

「は、葉山です」

 僕がとりあえず挨拶したのに続いて、未羅も震える小さな声で、

「冬野です・・・」と呟いた。

「はい。

存じ上げております。

我々はこの場所にたどり着く方々のことを全て把握させていただいております。

あ、危ない組織とかでは決してないので、そこはご安心ください。

ただ、人知を超えた力が働いている場所であることは事実です。

あなた方のことを知っているのもその力のおかげと言えます。

なので、一つ一つ順を追って説明していこうと思います。

質問はその都度していただいて構いません。よろしいですか?」

 シイナさんは、説明し慣れているかのように流暢に話した。

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