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正解は君のために  作者: 風太生
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チェックだらけの答案に 2

 改札を一度出て、すぐ横の自動ドアに入るとそこは駅ナカということを感じさせないような作りになっており、もはやちょっとしたショッピングモールのようだった。

 アパレルなどの様々な店が入っていて、その全てが赤や緑のモールや小さなツリー、そしてオーナメントなどでクリスマスの華やかさを全面的に押し出していた。

 一方、室内放送では控えめなクリスマスソングが流れていて、その早すぎず遅すぎない絶妙なテンポが見た目の華やかさを煩くさせないための役割を上手く果たしていた。

 そんな空間を歩きながら他のカップルとすれ違い、未羅と出会う前までの僕ならこんな場所と縁なんてなかっただろうな、としみじみ考える。

 そういえば去年も一応クリスマスデートに行ったが、付き合い始めてまだ日も浅かった僕らは、ベタな映画デートを選択した。

 もちろんとても楽しかったが、クリスマスデートという感じではなかったな。

 つまり、ちゃんとしたクリスマスデートは初というわけだ。

 十五分ほど探検した後、特に欲しいものがあるわけではなかった僕は、同じく駅ナカにあるカフェに吸い込まれていった。

 ホットコーヒーを注文し、駅前広場が見渡せる窓際の席に腰を下ろし一息ついた。

 外の寒そうな景色を温かい空間からゆっくり眺めると心が和む。

 ここではジャズ系の洋楽が控えめな音量でひっそりと流れていた。

 その選曲に笑みをこぼし、コーヒーを一口すする。

ここまで僕が洋楽を認知できるようになったのも未羅の影響だった。

 学校の帰り道にイヤホンを片方ずつシェアしながらよく帰った。

 僕の聴く曲はセンスがないという理由で、いつも選曲は“未羅’s プレイリスト”からだった。

 そして気が付くと僕の携帯には未羅が勝手に入れた彼女のお気に入り曲が溜まっていて、いつの間にかそれは僕のお気に入りに変わり、それらは新しく“空人’s プレイリスト”になっていった。

 そのようなことを考えて、携帯の“空人’s プレイリスト”を開くと、急に今まで感じたことのない温かな感覚に包まれた。

 ああ、そうか。

 未羅のことが好きで好きでたまらない、という気持ちは普段から自覚しているが、僕の生活に未羅の習慣が当たり前のように紛れ込んでいるという事実について自覚する機会はなかった。

 というか、その機会を得られなかった。

 これについてはただ好きという気持ちだけでは説明がつかない。

 同じ時と場所で同じことを沢山経験してきた二人がある程度の月日を経ることによって、初めてそれを実感できる権利を得られる。

それに今気付いたということ、つまり、現段階で未羅はいつの間にか僕の“当たり前”になっていたのだ。

 そんなことをやっと自覚した瞬間、すぐにでも会いたくなった。

 そして幸運なことに今日はもう数十分後に会える。

 デートの直前にそんな重要な事を自覚できるなんて、やっぱり今日の僕はついている。

 メッセージの画面を開き、

『もう着いたからカフェにいるね。

そっちは、電車大丈夫?』

と送った。

 そして温かいコーヒーを体の芯に巡らせながら、今日はなんて良い一日なんだろうと改めて思った。

 後になって思えば、そのようなごく稀にしか訪れない幸せをこの日に限って感じてしまうとは皮肉な話だ。

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