リベンジ Ⅰ
連投じゃぁい。
「――やっと、来たね…………」
ズシン、と地が揺れる。
音自体がそれの力を示すかのように、段々と近づいてくる。
視界に大きく、スローターボス――テリトリアル・ブラウンボア・ボス――の姿が映る。
焦げ茶色の体毛は、所々が赤黒く見える。
「――――――」
大きく息を吸い込む。
一拍止める。
――しゃん。
鯉口を鳴らす。
これからする事に対した意味は無く、寧ろあるのはデメリットに等しい。
一応、許可は取ってある。
ならば、後はそれを押し通す覚悟だけだ。
「太刀上流 ラピス。……推して参る」
これはただのこだわりだ。
現実での姿がバレるかもしれない。
何か面倒事に巻き込まれるかもしれない。
けれど、今日一日は、この戦いは、私――太刀上 瑠璃――のこれまでとこれからの全てだ。
――歩法 嚆矢
イノシシの突進に合わせて、一歩を踏み出す。
真っ直ぐにこちらに突き進んでくる巨体、それは私にとって恐怖の象徴だ。
今でも見ただけで、全身は竦み上がり、言うことを聞かなくなる。
けれど、それがどうした。
恐怖を前に踏み出さずして、何が剣士だ。
恐怖を振り切れ。
竦む身体を押していけ。
一歩地を踏みしめて、全霊を込めろ。
恐怖が何だ。
そんなもの――
「前に進まない理由には、ならない!」
肥大化した牙を相手に向ける形で突っ込んでくる。
その下のスペースに人一人が通るような隙間は勿論無い。
だから、そこを通る。
――歩法 迅雷
全身を限界まで倒して、身を捩じ込む。
「『纏魔斬』!」
構えは八相。
走る時の揺れを極限まで抑えて、突き進む。
イノシシの腹に一本の赤い線を描いて、速攻でイノシシの腹を通り抜ける。
すぐ前には、一本の大木。これなら、足りるね。
――歩法 碧空
木を90度角で駆け上る。
――歩法・撃法混合 風蝕
限界まで駆け上って、一撃思い切り蹴り抜く。
私の下には、痛みに動きが止まった状態のイノシシが身を震わせている。
隙だらけだ。
「……ふっ…………!」
――斬法 村雨
上空からの振り下ろし。
思い切り首元を斬り裂く。
体毛や脂肪が厚くて、それだけでは致命傷にはならない。
振るわれる首。
たったそれだけで、大抵の人には大ダメージになりそうな攻撃。
でも、それを食らう程、馬鹿ではない。
――斬法 伐刀
一歩イノシシの体の中心側に踏み込みつつの、一撃。
けれど、それは大したダメージになり得ない。
「ふうっ…………」
イノシシのHPはまだ9割以上残っている。
もっと加速していかないと。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




