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Wisdom Joker Online 〜瑠璃色少女の配信録〜  作者: 月 位相
消失を力に

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纏魔

 ――歩法 嚆矢

 瞬間的に最高速度まで加速する。

『電光石火』も相まってかなりの加速度を誇ってはいるものの、彼はそんなものお構いなしに私をその瞳に捉えている。


 やっぱり感覚の強化はしてるか。モンスター相手だとその有無でかなり変わるはずだ。

 対人の中でさえ感覚が鋭いほうが余程有利なのだから。


「オオッ!!」


 先程のお返しと言った様子の横薙ぎ。

 それも下からすくい上げるような軌道で、防御を許さない。


 迫る大剣を前に私は小さく飛び上がり、大剣を踏みつける。


 ――歩法・撃法混合 風蝕

 ゴガンと大剣が地面に叩きつけられる。


 踏み込んだ位置は彼の真正面。

 これでは刀を振るうスペースが無い。渦潮でも困難。


 なので、殴る。


「ラッ……!」


 ――撃法 東雲

 顎への掌底、それによって相手の意識を刈り取ることを目的とした撃法。


 それを彼は屈んで回避する。


 瞬間、私の視界には逆さになった(・・・・・・)彼の踵が映った。

 おそらくブレイクダンスの同様の動作で足を跳ね上げたのだ。


 でも、それを簡単に貰うわけにはいかない。


「――閃刃!」


 刀を振るったエネルギーを移動に使う。

 辛うじて直撃を避けはしたが、私の胸元を抉るように攻撃を食らってしまう。


 先程の鏡合わせの如くふっ飛ばされた私は着地するやいなや、思い切りバックジャンプで後退する。


「――ハッ、ハァッ…………!」

「やるな、嬢ちゃん。それに殺意が高い剣だ。…………だが、ちと軽いな(・・・)


 軽い?

 一撃一撃の威力は出来うる限り出ているはずだ。エネルギーのロスは削りに削っているのに……。


「……ああ、いや、嬢ちゃんの身体の使い方の話じゃねえよ。お前さんのそれはスキルが無い前提での剣だろう……?」

「…………それが何ですか?」


 なんとなく分かってはいてもあんまり生家の伝統について言われるのは嬉しくない。

 欠点の一つきちんと見ることが出来ずに上達などありえないのに。

 まあ、ゲームの中限定の問題だけど。


「それが悪いとは言ってねえさ。それは自分と同等程度(・・・・・・・)の奴相手ならかなり強く出れる。だがな、モンスター相手に自分と同じぐらいの身体能力なんて、それこそありえん」


 対人剣をVRゲームで使う上での最大の問題点だね。

 対人剣だから勿論相手の身体能力は自身と大きくかけ離れてはいない。

 だから、身体能力ステータスが自身を大きく上回る対象は対処しがたい。


「楽しませてくれた礼だ。見て、盗んでみせろ……!」

「…………ッ!」


 ――斬法 豪雷

 彼の上段に合わせる形で、先に仕掛ける。

 私が持ち得る最強最速の袈裟斬り。


「『練魔纏斬』」


 瞬間、彼の木剣から蒼の炎が僅かに火の粉を漏らし、同色の光が覆う。

 一際強く輝いて、振り下ろす。


「ハアァッッ!!」

「――ッ……!」


 お互いの一撃がぶつかり合う。

 だが、一瞬も保たずに私の剣は跳ね飛ばされて、膨大な剣圧と共に私の首元に大剣が添えられる。


「中々だろ? お前さんに必要なのはこいつ(・・・)じゃねえか?」

「スキルの性能次第ではありますが……」


 身も蓋も無い発言に対して、彼は大剣を下ろしながら、豪快に笑い飛ばした。


「そりゃそうだ。まあ、その前に俺の技がどんなものか分かったか?」


 先程の『練魔纏斬』だったっけ? それがどういうスキルだったか、か。

 恐らく攻撃の威力向上系のスキル。単発発動で、一撃で使い切るタイプかな。

 後は……、一旦視聴者さん達の意見見てみるか。


『色カッケェな』

『なんでこいつ師範とバリバリ打ち合ってんの?』

『↑経験、かな?』

『スキルあったね』

『HP消費を希望』

『削るHPが無いんよ』


 VITとINTの値同じなんですが……。まあ、HP消費の方が助かるんだけど。

 MPをこれ以上の速度で削るようになったら、それこそ回らなくなる。

 一応HPを消費するスキルは幾つか見つかってはいるんだけど、まだまだ少ないからなぁ……。

 兎も角、一応まとめて伝えよう。


「威力を向上させる単発攻撃用のスキルで…………、ここからは私の勘なんですけど――『対魔斬』」


 木剣を拾って、『対魔斬』を使う。

 赤い火を仄かに纏う。


「これと多少の関係があるんじゃないんですか?」

「へぇ……。大当たりだ。そいつと俺が使ったスキルは俺の先々代とその生涯のライバルがそれぞれ生み出したスキルだ。面白えもんだよな、事あるごとに争ってた人間がスキルを創る時に、同じ結論に至るんだから」


 同じ結論ねぇ。

 要は、目的は違えど、仕組み的には同じってことかな?

 だとすると、


「そちらが使ったスキルも、MP消費型のスキルってことですか」

「そういうこった。まあ、俺が使ったんは『纏魔斬』の次だが」


『規定の行動により、スキル『纏魔斬』の取得が可能になりました』


 ――――――

『纏魔斬』種別:アクティブ 消費MP:10

 使用後、一度だけ斬撃武器による攻撃の威力を向上させる。

 威力の上昇幅はスキルレベルに依存する。

 ――――――


「これは……、良いんですか?」


 これ流派の秘伝とかじゃないの?


「たりめえよ。師匠にも遠慮なく広めろって昔っから言われてんだよ」

「でしたら、有り難く使わせて頂きます」


 非常に有り難いからね、実際。


『ファッ?!』

『また発見しましたか、そうですか』

『取得条件はよ』

『師範の人とある程度やり合う、とか?』

『↑無理ゲーでは?』


 条件とかは後で調べよっか。いずれ私嫉妬とかで殺されそう。そうそう殺されないけど。


「今度はガチで(・・・)()るか」

「ええ、その時はぜひ。その時までに精々強くなっておきます」


 そうして偶然ながら私は欲しかったスキルを手に入れたのだった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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