初配信 Ⅰ
サクッとお昼ごはんを用意して、琥珀とお母さんと一緒に食べる。
「琥珀、宿題はどう? 終わりそう?」
ちょっと気になってたので聞いてみると、妹は得意げな顔をした。
「今日中には終わるっ! だから、明日とか一緒にやろ!」
「OK、……というか、琥珀もするんだねあのゲーム」
「そりゃあ、あのゲームのクオリティ凄いし」
なんとも嬉しそうにしている。その熱量を普段から持ってくれるとお姉ちゃんは安心なんだけどね。
取り敢えず早く今日の方の準備をしちゃわないとね。
「瑠璃、流石に片付けはお母さんがするから、頑張りなさいよ。門下生皆と見るんだから」
お母さんが爆弾を投下した。それは聞きたくなかった。途端にやりづらくなった。
まあ、いいか。
私は早々に自室に引っ込み、準備を進めていく。
そして、サービス開始まで後五分となったところで、私は最終確認をしていた。
取り敢えず、設定は問題なし。水分補給もしたし、トイレにも行った。
これで、準備は完了。
時間は思いの外早く進み、
「『Wisdom Joker Online』起動」
始まった。私の新しい世界での冒険が。
_______________
「はーい、『Wisdom Joker Online』、適当に略してウィジョの配信じゃーい」
なんとも微妙なテンションで始まった配信。アバターの周りに数機の配信用の球体が浮いている。
加世 日向のチャンネル『サニーチャンネル』の風物詩とも言える、ゲームサービス開始直後からの配信開始に既に1万人を超える数の視聴者は大盛りあがりだ。
画面の先の映像には、初期装備に身を包み、1m程の杖を持った金髪紅眼、髪には赤のグラデーションが入った少女が映っていることだろう。
『やって参りました』
『相変わらずサービス開始5分以内の配信開始……病気だ!』
日向改プレイヤーネーム、サニーの視界にはコメントが流れている。
病気言った奴は後でBANしてやろうとあくどい笑みを浮かべて、すぐに反転。
「今日は私のリアフレとのコラボになるよー。おい、誰だ。友達居たの?とかコメントした奴」
映ったコメントへの即時対応。そのときの声音が本気すぎて、更にヒートアップするコメント。
「で、その友達も一応配信者になる。……今日から」
『今日?!』
『初日からのコラボ』
『広告塔かよ……』
当然初配信の人間が人気配信者に取り入ったのでは、といったコメントが散見された。
けれど、予想が出来ていたサニーは説明を追加する。
「いや、広告塔とかそんなんじゃないさ。私がやりたいから、半ば強引にゲーム始めさせたようなもんだしね。……てか、戦闘系のゲームは私より強いし」
戦闘系ゲームの腕はサニー以上。その発言にコメント欄は懐疑的だ。
サニーは以前格ゲーで負けるまで休み無しで続ける配信をした際に、7時間の連続配信をしたりと、そのゲームの腕は視聴者全員が分かっている。
そして、その彼女を超えるとは、最早なんなのか。
「取り敢えず今日はその友達と一緒にゲームを始めるときの恒例行事をやっていくつもりね。まずは合流……あ、いた」
話しながら数秒歩き、すぐにその姿を見つけた。
「ラピス! 早かったねえ」
「サニーは普段よりゆっくりだったね。ああ、配信する時人が多いとやりにくいから離れてた?」
理解が早い。ゲーム世界でも相変わらずの幼馴染の様子に呆れれば良いのかなんなのか。
「はい、まあこの子がラピス。私の幼馴染兼今日のコラボ相手ね」
「はじめまして、ラピスです。いつもサニーがお世話になっております」
『保護者かよ』
『お母さん味が滲み出ている?! これは普段からやってるな』
ドサクサに紛れて、とんでもないことをしやがる。
これは、お仕置きが必要だ。サニーの顔が邪悪にゆがむ。
「これでも、中学の頃の初恋でなんとも初な相談を持ちかけてくるような子なのよ?」
「――んんっ!? ちょ、サニー、何をっ」
「気になる人が出来たんだけど、どうしたら良いと思う? って顔真っ赤にして……」
「止めてえ、お願いだからっ、私が悪かったからあ」
今現在、当時と同じくらい顔が赤くなっている。即落ちニコマという奴だ。
可愛いなあと思わずサニーがほっこりしていると、サニーの口を塞ごうとして躱されまくっていたラピスは一瞬の内で腰の刀を抜刀。武力行使に出た。
「もう喋るなあっ」
羞恥に悶ながらの抜刀は、ブランクもあってかなんとも遅い。当然のごとくサニーは避けて、ラピスを宥めにかかった。
因みに、
「もう御飯作ってあげない!」
と言われて、膝を折ったことで、一人が羞恥に悶ながら怒り、もう一人が涙目で平謝りするという中々にカオスなことになったのは言うまでもない。
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