烏合の衆
第十の街らしきものが壊滅して残骸と化している。
まずは状況把握をしないと。
……でも、どうやって街を破壊した? 各街にモンスターは入ってこれない筈だ。設定はどうあれ、システム的なプロテクトがあると思うんだけど、まずそれが間違いの可能性がここにきて出てきた。プロテクトはプロテクトでもシステムによる絶対防御じゃなくて、ゲーム内で条件を満たせば突破できるものだった? それなら納得はいく。だけど、それなら今までの街は何故無事だった? 普通のモンスターでは突破は無理と考えた方がいい。そもそも、守衛の人達を始め戦闘能力のある人は結構な数街にいる筈だ。第十の街ともなれば生半可な戦力じゃあどうにもならない程度には住民たちは強い。だとすると、戦闘能力が高くプロテクトに該当するものを突破できる存在の仕業だと言える。いや、単体よりも集団と考えた方がいいか。隔絶した個よりも数の暴力の方が自然だ。それら要素を全て満たし得るような特殊なモンスターとして思いつくのは――――
「悪魔か」
無意識に近い声。
けれども、それが現状の情報の中では一番仮説として有力。
残骸からは煙すら出ていない。
壊滅してからある程度時間が経っているとみるべきか。
いや、そりゃそうか。第九の街の人が言っていたじゃないか。第十の街との連絡が途絶えて以降に、街の様子を見に行った人がいたと。
『どうするの?』
『瓦礫に見えるけど、行ってみる?』
『あの塔なに?』
さて、どうしようか。
ここで材料らしい材料なしに考えてばかりいるよりは、動こうか。
「――良し、一回街の近くまで行ってみよう」
それで何か情報を得られたら十分。
無理なら周辺で生き残りの人達やプレイヤーの拠点となっている場所を探す。
――あ、その前に『採掘』と『隠蔽』を入れ替えて、と。
「『隠蔽』結構初期から使っているのに、まだ一次スキルのままなんだよね。なんでだろうね?」
今はレベル29。
そろそろだとは思うけど、流石に時間掛かり過ぎかなって。
『スキルを起動してても使う気が無きゃ上がらん』
『武器スキルを持ってても、その武器を使わないと経験値入らないのと一緒』
『隠れる気ないから』
ああ…………そういう。
…………うん、隠密行動を心掛けよう。
特にここは何が起こっているのか不明だからね。
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5分程岩や僅かに生えている低木などに身を隠しつつ、進んでいく。
前方に敵影。
シルエットからゴーレム系のモンスターと推定。
もう少し距離を詰めてから攻撃を――
「――ん?」
推定ゴーレムの更に奥、二つの影が迫りくる。
あれは…………デーモン……?
んー、でもなんか姿違うね。
デーモンフェンサーでもデーモンメイジでもデーモンナックラーでも無さそう。
なんだあいつ。
もう少し近づかないと『識別』の効果範囲に入らないか。じゃあ慎重に……………………と。
『エンハンスデーモン Lv.113
属性:物理・打撃 斬撃 魔法・闇
耐性:物理・打撃 魔法・闇
スキル:『中級悪魔』『闇黒魔法』
『高魔圧縮』『剣爪』 』
もう一体はレベル114。
どちらも相当に強い。
姿自体の変化は少ない。
唯一の変化点は腕が伸びていることとより醜悪な形になっていること。
…………いや、一応爪もちょっと伸びた?
スキルも前まで相手にしていたデーモンよりも上位っぽい『中級悪魔』になっているし、強化するっていう名の通りの正統強化なイメージを受ける。
始まる戦い。
単体のゴーレム相手に暴れる二体のエンハンスデーモン。
蹂躙になるかと思ったけど、そうもいかない。
「思ったよりゴーレムが強い……というよりもデーモン二体が然程強くないね」
『なんか雑?』
『ゴーレム強いな』
接近してきたデーモンを腕のリーチを活かして一方的に殴り飛ばして、遅れて放たれたもう一方からの魔法攻撃を『地魔法』にて弾いて、殴り飛ばした方のデーモンに攻撃を続ける。
「デーモン同士の連携が取れてないからこそ成り立っている戦いだね。さっきの魔法攻撃だって先のデーモンの物理攻撃に畳みかけられるように、前以て準備しておけば隙を埋めるくらい余裕だったのに」
烏合の衆…………にしては数が少ないね。
単純に連携の取れてない二人組。
現状のHPは、ゴーレムが7割、デーモンズが5割と6割。
漁夫の利ってやつを実践しよう。
多分『隠蔽』を使っている状態から不意打ちすればスキルの経験値美味しいだろうし。
お読み頂きありがとうございます。
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