下手したらジェットエンジンよりも煩い
季節感どこ行った?
第四の街南側エリア、イノシシの生息地であるそこに私達は普段とは全く異なる理由で集まっていた。
面子は私、サニー、アンバー、ハ―フェン君、委員長の5人。
ハ―フェン君とウカさん気まずそう。
誘った約二名が悪いから追及はそっちに行ってもらうとして、だ。
この中で一番レベルが低いのはウカさん(始めた時期の問題)なのだが、彼女が第四の街に到達したことと現状のWJOだと第四の街周辺はプレイヤーが少ないようなので、ここに決まった。
そう、今日は花火を見るためだけに集まっていた。
11月の上旬も終わりそうなのに。
季節感どうなっているんだろうね、本当に。
ちなみにウカさんとついでに稲羽さんのレベルは共に42。
便利な事に戦闘で手に入る経験値ってプレイヤーとテイムモンスターとで0.75倍ずつ貰えるらしく、二対一が基本なので苦戦もあんまりしないとか。
結構WJOを満喫してて面白かった。
「――さぁて、こんぐらい離れりゃ良いかね?」
「ボスエリアから街までの一直線の道から150mは離れているんだし、大丈夫だと思うよ?」
花火って500m以上離れても普通に100dB超えてたりするから迷惑ではあるかもだけど。
ちなみに100dBってのは、ガード下で電車が通り抜けるのを聴いた音と同等の煩さくらいらしい。
微妙にわかりにくい。
40が草原。
60が日常会話とかだっけな?
一応10dBごとに音が二倍になったって感じるらしい。
まあ、うん。めっちゃうるさいってことだね。
多分件の道から聞いてもジェットエンジンクラスの音はするという。
兎も角、だ。
サニー主催のこと11月の花火鑑賞会だが、街中ではできなかったために良い感じに過疎気味でウカさんが行ける範囲のフィールドである第四の街南側エリアでの開催となった。
ちなみにハ―フェン君は元々呼ぶ気であったそうだが、サニーが口にする前に家の妹が呼んでいいか聞いたらしい。
仲良くしてて良き哉良き哉。
というわけで、
「まずは一発」
――ドォン…………!
最初の花火は赤ベースの円形。
オーソドックスだけど、だからこその良さがある。
……それにしても、音が現実のそれよりも小さく設定されてて良かった。
まぁ、規模も小さいからその影響かもだけど。
次は、黄色をメインに据えた複層で色が出るタイプ。
打ち上げ係のサニーのことは詳しく見えないけど、他三人は見入っているね。
割とすぐに打ち上がるし、規模の問題で炸裂までの時間も短いから用意する人は真下からしか見られないので、サニーと交代。
私が作ってもらった数は5つだから、必然的にサニーに負担が偏るんだよね。
なんか20個用意したとか言ってたし。
私が最初に打ち上げたのは青系で白い尾を引く色が変わるやつ。
…………うん、真下からでも良いものだね。
もう一個くらい上げるか。
そしたら交代して、次に私が動くタイミングも考えて……………………
「ん?」
モンスターがみんながいる方とは逆からとはいえ近づいてくる。
音に引き付けられた? 普通逃げそうなものだけど。
まぁいいや。取り敢えず打ち上げる。
「――シッ」
――歩法 嚆矢
花火が打ち上げられる前に瞬間的に加速して、モンスターとの距離を詰める。
「『練魔纏斬』」
豪と猛る炎を纏わせて、こちらと同様に突っ込んでくるイノシシの首に、ゆるりと刃を通す。
私の現状のレベルは97。
スキルも順当に育ったのに今更この辺のモンスターを殺せない訳がない。
ドンと花火が響く。
やっぱりちょっと離れたところから見る方がいいな。
近づいてくるモンスター狩りながら見るか。
そんなこんなで花火見ながらイノシシ狩りしてたら、花より団子と言われた。
解せぬ。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
花火直近1mだと170dB近いらしい。
鼓膜の耐久限界は150dB程。
離れているから分からないだけで8割音響兵器ですね。




