殺戮のサウィン Ⅶ
遅れました。
申し訳ない。
「『想起』」
『フレイムブレイズ』の九重展開で、広域のモンスターを消し飛ばす。
そのキルスコアに反して、サニーの表情は険しい。
「全っ然、減らねぇ……。――――。『多重魔法』『ファイアアロー』。ラピス、ハーフェン状況報告ヨロ」
MPポーションを思い切り呷って一拍、火矢をばら撒いて、現状の確認に移る。
『デカ物と戦闘中。――!! カタコンベの内部調査は『宵闇の月』の面々がやってるけど、膠着気味みたいっ』
『前線での戦闘中ですが、モンスターが減っている印象を受けません。高所から確認できる人とかいませんか?』
「心当たり無しだわ」
『右に同じく』
『同じくぅ』
駄目だこりゃ。
サニーの純情たる本音であった。
ゲームの負けイベ宜しく現状勝ち目がない。
だが、まだ完全にそうと決まった訳では無い。
「ラピス、今どん位?」
『『散魔対斬』ッ。――今ので、残り4割。なる早でなるけど、期待しないで。結局はリリートゥさんたち次第だから』
「オケ。救援は無理だから、まぁガンバ」
『言われなくとも――、ね……!』
会話を一度切り上げて、彼女は大きく溜息を吐いた。
現状モンスターを倒しても特に状況は良くならない。だが、倒さないと悪くはなる。
非常に面倒だ。
正直もっと近距離で魔法ぶっ放して無双ゲー気分を味わう方が好きだ。
でも、仕方がない。
「やるか。――『想起』」
今度は、『ファイアブラスト』の八重展開。
プレイヤーが入り込めておらず、サニーが確認できる限界の後方地点を灼熱が埋め尽くした。
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――斬法 豪雷
右膝裏から『散魔対斬』でMPの収束点をぶったぎる。
左足の修復は満足に出来ておらず、残りのHPは4割。
さぁ、ここからどうなる?
取り敢えず斬るか。
――歩法 嚆矢
瞬間的加速。視界内からでも認識を振り切って、あっという間に間合いの内に。
「ラァッ!!」
――撃法 繚乱
連続五連、骨盤から肋骨までを軋ませる。
次の攻撃を――と構えた瞬間振るわれる左腕。
さくっと避けて反撃を――
「――ん?」
先程左肩を破壊したから、左腕は満足に動かせないはず。
じゃあ、今のは。
…………え、なんで生えたの?
なんか両腕3対、6本になってるんだけど。
まぁ、良いや。
斬る。
殆ど離れていなかった距離を更に詰めて、碌に腕を振るえないように。
それでいて、私は十分に殺せる距離に。
「『散魔対斬』、フゥッ……!」
――斬法 豪雷・昇竜
上中下で言うところの下の左腕、そこは一際MPの収束点の濃度が濃い。
最初に潰すべきはここだ!
だが、そんな目論見は簡単に打ち破られた。
豪雷・昇竜でも破り切れぬ強固なMP。
乱す程度に留まった。
でも、収穫はあった。
斬りつけた腕は変に揺らめいて、実体があるのかないのか分からない感じで僅かに向こうが透けて見える。
新たに生えた腕はMP製だ。
なら、やりようはある。
まぁ、でも取り敢えず、だ。
「砕氷ッ!!」
――撃法 砕氷
背骨を砕き、動きを阻害する。
MPの収束点以外のところにもMPは流れていて、MP的物理的両方で完全に絶たないと完全な破壊にはならない。
でも、大きく弱体化はする。
『HP自動回復』でいつかは治るけど、まだ私が与えた通算ダメージが全然癒えていない。
今イカれた背骨の修復は大分後だ。
速攻で決めよう。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




