半ダンジョン生活三日目 Ⅱ
遠距離持ちを優先的に攻撃して、近接持ちは一旦雑に無視する。
先んじて魔法で牽制しながら、接近してぶった斬る。
――歩法 隘路
群がって来るモンスター達の隙間に身体をねじ込みながら、刃を滑らせる。
――斬法 花影
首筋や手首を率先して狙い、行動を制限しながら、私の道を切り開いていく。
ちらりとターゲットが視界に映る。
それは弓使いではなく、魔法系のモンスターだね。
実は1:1なんだよね、この室内の弓と魔法の存在割合。
向こうも私のことを知覚したのか、魔法が放たれる。
――歩法 迅雷
身体を倒して、前に突き進む。
放たれた魔法が頭上を通り過ぎていくのが分かる。そして、それが私の背後にいるモンスターに直撃するだろうことも。
『対魔斬』を使うという案もあるにはあるけど、今は『纏魔斬』に多くMPを回したい。
というよりも、『纏魔斬』だけでも全然足りない。
常にMPポーションが欲しい。
飲んでる暇は無いし、握り割るのは回復量が少なすぎる。
「……ふぅ…………!!」
――斬法 伐刀
首に刃を叩き込んで、無力化。
後方から矢が飛来する。
――あ、丁度いいか。
切りつけたモンスターを盾にして、矢を防御。なお、盾は粗大ゴミである。
――撃法 徹震
肩から衝撃を徹して、過密地に放り込む。
本当にこれしかしていない。
さて、次の敵は――
「うおっ…………」
頭上から、何か粘着質なものが降ってくる。気配分かりずれぇ……。頼むから人型になってから来てくれ。
……ああ、スライムか。色的に火系の奴かな。まあ、火耐性なら関係ないけど。
「どっか行ってて、ね――!」
サッカーボールと同様の蹴り方で取り敢えずシュートしておく。
蹴り方はインステップキック――足の甲を使った威力重視の蹴り方ね。
…………一学期の体育の授業のサッカーでサニーがボールに巻き込まれて、見事にすっ転んでたな、そう言えば。
豪。
火槍が眼前に迫っていた。
「『対魔斬』ッ――――!!」
ギッリギリで魔法を斬り飛ばす。後0.1秒遅れてたら待っているのはDIEのみだった。
『対魔斬』の隙きに接近してきたゴブリンが棍棒を振るう。
一歩身体を前に押し込んで、ゴブリンの懐の深くに捩じ込む。
――斬法 渦潮
身体の捻りだけでゴブリンの首を斬り捨てる。ゴブリンの身長が低いからこそ、一気に首やれるんだけど。
「ふう……………………」
態と息を吐いて、一回集中し直す。
このままでは本当に死ぬ。全能力を自己の生存に注ぎ込め。
ここからは、不意打ちさえさせない。
_______________
「――――やっっっっっと、終わった……………………」
約30分後、総数40近くのモンスターをなんとか蹴散らして、その部屋に出現した魔法陣から元のダンジョンに戻ってきた。場所はトラップがあった場所だね。
なんか宝箱的なの見えるけど、まずは休みたい。
『乙』
『ダンジョン内で大の字に寝るな』
『結局一撃も貰わなかったな』
『↑貰ったら終わりなんよ』
『これモンスター数的に捌き切れたら美味しいやつ?』
『なんで誰も箱触れないの?』
今回のモンスターハウスだっけ?
トラップで得られた『迷宮片鉄』は1000を超える。まあ、普通にダンジョン回ってボス戦しまくる方が時間的にも私の疲労的にも効率がいい。
まあ、宝箱次第かな?
……ああ、動くの面倒。
もう転がっていくか。
「……宝箱っぽいの開けようぜ」
寝転がったまま、蓋に手を添える。
『それで良いのか』
『転がっていくJK』
『いつか立ち上がるのも面倒くさがりそう』
『転がっていくJKとか言う字面よ』
『中身次第では地獄のモンハウ耐久が見られるかも?』
絶対に嫌だ。報酬次第で多少やるかも。
「はぁい開けて…………」
なんか直径30cm位の金属塊と球体の水晶らしきものが入っている。
「いや、『迷宮片鉄』なら納得できるけどいきなり金属塊はビビるよ」
取り敢えずアイテムとして格納する。
その後システムウインドウの所持品からアイテムの確認をする。
――――――
《種別:素材》迷宮鉄塊 レア度:レア
迷宮で取れる特殊な鉄鉱石の塊。一つで『迷宮片鉄』3000個分に相当する。
塊で産出する事自体が稀であり、単体での価値は『迷宮片鉄』4000個分に近い。
――――――
――あ、分解できるみたい。要は『迷宮片鉄』が3000個ね。
そう言えば、よくよく考えたら『迷宮片鉄』って私のアイテム容量圧迫しないんだよね、便利。
普通に考えたら、ステータス毎にイベントアイテム持ちにくくならないようにだろうけど。
「イベ交換用アイテム3000個分だった。時間的にはありだね。じゃあ、次の水晶行こう」
『いやいや、さらっと流すな』
『めっちゃ高効率で草』
『意外性は無かったけどな』
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




