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魔法の贈り物と兄の誕生日

 本日5月3日は、レオナルドの16歳の誕生日である。聖ファルキア王国では、成人年齢は16歳である。成人した彼は、4か月後の9月1日に寄宿学校へ通うことになっていた。


「お兄さま、お誕生日、おめでとうございます!」とアルテミスは兄にお祝の言葉を伝えた。

「ありがとう、アルテ。」と兄は少し恥ずかしそうに微笑み、右手で自分の髪をさらりとなでた。絹糸のような金髪がさらさらと零れ落ちる。

「お兄さま、これ、私からのプレゼントです!」と妹は兄に小さな箱を渡した。手作り感満載の可愛らしい箱であった。

「気に入っていただけるといいんですが。」

「ありがとう。」と兄がいそいそと開けてみると、中身は六角形に形作られた赤い宝石の埋め込まれている、小さな銀色のロケットであった。ロケットの中を開いてみると、兄と妹の小さな肖像画が描かれている。


「実は、そのロケットに使われている石は、私とルビーで魔石と魔法陣を使って合成した物なの。これで、お兄さまはたき火で火を熾すことができるわ!」

(夜な夜なお兄さまの持っている魔法の本を読んで、魔法陣と魔石と魔力を合成する方法を覚えて正解だったわ。ルビーにも、手伝ってもらったし。)

 ちなみに材料は、アルテミスの頭髪30グラム・高純度の魔石・契約精霊の生き血ティースプーン1杯である。


「へえ、こんなに器用に媒介具を作れるなんて、アルテミスは賢い子だね!こんなに賢い妹を持て、僕は自慢できるよ。」

(あの難易度の高い魔石の合成ができるなんて。僕はアルテミスに負けないような兄にならないと。)

 若干、兄は焦っていた。無理もない。魔石を用いた間接的な操作が行える魔宝石を作るには、何種類かの魔法陣の収得が必要になる。魔石と魔法陣の扱いにある程度慣れていなければできない代物なのだ。おまけに、制作には魔法使いの体の一部が必要となる。髪や爪などだ。レオナルドはアルテのふわふわの髪が好きだった。その髪がばっさり切られていることに兄はショックを受けていた。


「お兄さまは、今年から寄宿学校に通われるんですもの。寂しい時に、これを見て、私を思い出してくださいな。」

(9月から、いなくなってしまうのね。寂しいわ。)


「お兄さま、私、お兄さまのことを大切に思っていますの。お兄様がお困りの時や苦しい時に、一緒に寄り添える存在になりたいですわ。」


 兄の目が、はっとした。そして、美少年の極上の笑みがこぼれた。

「ありがとう、アルテ。僕も、アルテの傍で常に支えられるような、そんな存在になれたらと思っているよ。」

 レオナルドが、妹の頭を優しくなで、そしてぎゅっと抱きしめた。

(アルテを守れる存在に、なれたら良いのに。)


 アルテミスが18歳になるまで、あと10年。無事に、アルテミスは生き残ることができるのか。

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