獣人族と光の精霊王
「ベル、出てきなさい。」とアルテが囁いた。
次の瞬間、ためらいがちに黒い子犬がアルテミスの影から出てきた。そして、アルテの傍で怯えながら伏せの恰好をした。
傍にいたミーシャは、ヒッ!と叫んだ。
「アルテミス様、これは一体どういうことですの!?」
「理由は分かりませんが、この子は私に懐いてくれ、私の影を出入りできるようになったんです。隠していてすみませんでした。悪気はなかったんです。」
「悪気が無いでは済まされません事よ!?この神聖なる場所に忌まわしい闇の恩寵を受けるモノを入れるなんて、前代未聞ですわ!アルテミス様、すぐに駆除なさいませ。」
「いいえ、この子は、何も悪さしないよう、私がしっかりと管理しています。どうか、お許しください。」
アルテミスは精霊王の前に跪いた。精霊王は、にこやかな笑みと共に言った。
「許しましょう。元々は、光と闇は対なるものでした。昔、一部の闇属性の生き物を嫌う使徒によって、獣人の方を大勢滅ぼしてしまいました。その獣人の子はアルテミスさんによく懐き、命に従っている様子。私は、いずれ、闇の精霊王と和解することを念願としていました。もしかしたら、これをきっかけに話ができるかもしれません。アルテミスさん、その子を連れてきてくれて、ありがとう。」