天使の翼と精霊王
「山の頂上には、光の精霊王様がいらっしゃるわ。彼の方は神に最も等しい存在。生まれ変わる間へお導き下さる光の案内役。我らは、生きている子羊たちがより良く生まれ変わることができるよう助け導くのみ。」
ミーシャがアルテミスと共に山の頂上付近にある神殿まで連れていってくれる間、天使の役割について説明してくれた。
曰く、「神と精霊王は異なる存在であること・天使たちは、翼を持たぬ愛しい子羊達のために遣わされる使徒であるということ・天使の無垢なる体を子羊達に捧げることこそ、最上の務めであるということ」
「ここエデンの園は、全てが真白き無垢なるモノにて構成されています。だからこそ、アルテミス様を始めとするお怪我や病気をなさった方々の色に体の一部が染まることで、治癒することができるのですよ。」
空から、光が降りてきた。光の精霊王が、神殿深くにある御坐まで降りてきたのである。精霊王は、男性とも女性ともつかない容貌をしていた。白い衣を身にまとい、両翼からは純白の羽が厳かに折りたたまれる。
「初めまして。火の精霊に愛された御子よ。私が、光の精霊王です。ミーシャ、ここまでの道案内、ご苦労様でした。」
女性とも男性ともつかぬ柔らかな声が神殿中に響き、ふわりと反響させた。
「ここまで来る子羊は余りいないわ。あなた、ミーシャとカインに気に入られたのね。ここエデンの園は、あなたたち子羊のためにあるようなもの。可愛らしい火の力を持つお嬢さん、あなたがより良い人生を迎えることができるよう、私たち光の使徒はあなたを祝福いたしますことよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「ところで…。あなたの影に何かが潜んでいる気がするのですが、これは私の気のせいですか?」
はっとした、アルテミスの影が揺らめいた。アルテミスの影は、光の精霊王から放たれる光により、アルテミス自身の体と、もう一つ、小さな犬の形を映していた。