天使の墓と白い果実
「僕らの可愛い子羊が、遊びに来てくれたよ!」とミーシャが兄と読んでいた天使が周りの天使達に伝えた。
一瞬で、アルテミスの周りに多くの天使たちが群がってきた。
「うわあ、可愛らしい子」「アーデロイド家の娘さんだって?」「こちらで一緒に遊びましょうよ」
大人気であった。そして、エデンの園を探検することになった。
「アルテミス様、こちらが我らが主食とする真白き林檎でございます。」
と、林檎の実を一つ捥ぐと、ミーシャは美味しそうに頬張った。
「普通の人の子が天使になるにも、条件があるのです。まず、4年間この林檎のみを口にします。すると、体の構造が全て林檎によって入れ替わり、徐々に天使の姿になっていくのです。」
「林檎によって、体が作り変えられる…?」
「はい、そうです。林檎は私たちの唯一の糧であり、命の元であり、天使にとってなくてはならない存在なのです。」
「それだけ、この果実が大切なものということになるんですね?」
「はい、そしてこの果実は、私たちでできています…。」と、ミーシャが囁いた。
アルテ達一行は、山の麓にある洞窟へ入って行った。そこには、何人もの天使が眠っていた。
ジャリッと踏みしめる土が白い。
「ここは、生きるに飽いた天使達が食を絶ち、石化するのを待っているもの達が集う場所です。ここにある白い石たちは、全て元は天使だったのですよ。私たち天使は、天使である限り寿命がありません。エデンの園に流れる水は、全てこの洞窟の地下を通って流れているのですよ。地下を通って流れる水が川になり、天使の命の源となる林檎を育てる…。私たちは、何百年も何千年も、そうして暮らしてきたのですよ。」
眠る天使の中に、半分石化したものがいた。その天使は、嬉しそうに微笑みながら眠っていた。
(じゃあ、あの林檎達は天使でできていると言っても過言ではないのね。究極のオートファジーだわね)とアルテミスは思った。
死に、生まれ、食べられる。天界に住む者たちは、自分たちだけの世界で完結しているのであった。