このボタンは、押すだけで世界を破滅させることのできるというボタンです。ぜーったいに、ぜーったいに世界が魔王支配されるような非常事態以外で、ぜーったいにこのボタンを押さないでくださいね???
「このボタンは、押すだけで世界を破滅させることのできるボタンです。ぜーったいに、ぜーったいに押さないでくださいね???」
その国の女王はそう言い3人の勇者の一人である俺に1つのボタンを渡した。それは金属の立方体に赤いボタンがついたシンプルなものだ。それを受け取った一人が頭をさげて礼を述べる。
俺たち3人の勇者は今から魔王を討伐しに行く。それにあたってもし、万が一失敗しこの世界を魔王に支配された場合、このボタンを押す散弾になっている。先ほどの嬢王の言葉が本当なら、ボタンを押すことで世界は滅ぶらしい。
俺はボタンを見ながら、俺は「絶対誰か押すだろうな...」と考えていた。
人は基本、「やるな」と言われると無性にそれをやりたくなる生物だ。そのやりたくなるのを「カリギュラ効果」と言うのだがそこはまあいい。かの有名な「押すなよ?絶対に押すなよ?」みたいなものでそれは押せと言う合図なのだ。
「押したい...だが押してはいけない!」
かくいう俺も、押したいと思っている中の一人だった。俺だって一人の人間なのだ。押すなと言われたら押したくなる。だれだってそうだろう??もしかしたら、これを言いながら魔王を説得させるするためだけの嘘なのかもそれない。そう思うと気になって気になってしまう。ああ、押したい。きっとこの2人も同じことを思っているだろう。押したくて仕方ないと。本心を引き出してやるのだ。
「どうした?そんな思いつめた顔になって」
「ああ、いや、本当に破滅するのかなーと思ってさこのボタン」
「さあ?」
「押すなよ?」
「押さねえよ。お前らこそな」
「大丈夫だ。押す気はない」
押すなと根の押された。まあ押したい気持ちはとても強いが、何とかしてこいつらに押させたいという気持ちもある。それにしても、やけに冷静だな。本当に押す気はないのか...いや絶対そんなことないはずだ!!きっと何処かで押すに決まってる!!そう考えながらじっとそいつの顔を見る。そいつは「なんだ?」とつぶやきながらこっちを見てくるが、少しして視線を別のところに戻した。
「さて、まずは祈りの洞窟に行くか」
祈りの洞窟にはどうやら魔を滅ぼす剣があるらしい。まずはそこでその剣とやらを手に入れるのだ。祈りの洞窟に向けて出発をした。途中、さまざまなスライムなどの魔物が合わられるだろう。薬草や毒消し草、県や武器などの装備は準備万端だ。そしてこの例のスイッチも。スイッチは厳重に透明な箱で誤って押されないようにほどこされていてバッグの中に入っている。
「敵だ!!」
森に入ると、さっそくスライムがウジャウジャとこちらに向かってくるどこにでもいそうなプヨプヨとした青いボディでこちらに体当たりを仕掛けてくる。だが所詮はスライム、あっさり簡単に倒せてしまった。
簡単に倒せるといってもその数は何十体もいて一匹倒すだけならまだしも、こんなにたくさんもいると倒すのにも一苦労だ。
ふーっと額に手を当ててスライムがいなくなったことを確認して安堵する。剣をしまい近くにあった
「休憩しよう。あの数は疲れる」
「ああ」
その言葉で俺も近くにあった石に座り込む。頭の中はボタンのことでいっぱいだった。本当に破滅するのか...押してみればわかる。
だが破滅したらどうしよう...ドッキリだったら良いが本当に破滅してしまっては元も子もない。ああ、気になる...葛藤をしながら俺はリズムを取るようにトントンと足で地面を叩く。仮に破滅してしまったら俺のせいにはならないではないか。もう俺のせいとか以前にみんな死ぬのだから。
「あーダメダメ!!」
パチンと両手でほおを叩く。そんなことを考えているようでは俺もまだまだだ。休憩も終わり3人は歩き出した。
一行は近くの洞窟に到着するとランプに火をつけた。中はランプで照らさないと見えないほどに暗い。まずはランプを入り口に向け、トラップがないことを確認する。ないことがわかると俺たちに来いという合図をしてランプを持った勇者が先導する。
中はモンスターはいるものの、トラップのようなものはなくそのモンスター自体もそこまでの強さでもないためスルスルと進むことができた。
「ん?なんかあかるいところにでたな」
広いところに出ると。そこは青い光で明るい場所だった。青い光は石が放っているのか。真ん中は水が円形に貼ってあり、その先には剣が突き刺さっているか青い柄ついた剣は岩に刺さっていていかにも伝説の剣という感じを醸し出している。
「あれだ!魔を滅ぼす剣!」
魔王を倒すにはこれを手に入れるしかないんだとか正直こんなものなくてもスイッチ1つで魔王を道連れにできるのだからいらないとは思うがそれはおそらく言わない方が良いであろう。
「くははははは!!きたな勇者ども!」
剣の元に行こうとすると悪魔のような奴が現れた。そいつは左右にゆらゆらと揺れながらこちらを3つの目で見ている。
ヤギのようなツノが生えていていかにの悪魔です!というような風貌だ。
「我は魔王様の忠実なる幹部!!!貴様らにこれは渡さん!」
「だがあいつはあの剣にさわれない。こいつからはこちらを倒さない限り何もでいないはずだ!倒すぞ!」
「おお!!」
戦闘になった...のだが全く身に力が入らなかった。もう俺の頭はスイッチのことでいっぱいだ。あのスイッチを押したらどうなるのか..それでもう頭がいっぱいだった。
ドン!という大きな音が突然きこる。上を見ると大きな穴が空いていて、誰かがいる。
「ははは!暇だから来てやったぞ!!」
魔王だった。まさか暇だとかいう理由で来るとは思わなかった。最悪の状況だ。だがもう最悪というよりスイッチを押すことしか俺の頭はなかった。もう勝てなそうだしスイッチ押してやろうかな...。
「どうした!」と不真面目な俺に一人が一喝する。こいつ女たらしだしいちいちうるさいから正直嫌いだ。滅ぼしてやろうかな...。
「何ぼーっとしてる!!」
悪魔の爪で俺は転ぶ。カバンからはコロコロとあのスイッチが顔を見せる。これは都合がいい。何かの間違いだと言って押してしまおう。何も起きなかったとしても「転んだ弾みで」とかごかませばいいのだ。
「強い...もう世界は終わりなのか?」
その時だった。俺の剣が突然光り出す。すると刺さっていた魔を滅ぼす絵剣もそれに共鳴するように光り出す。
「まさか!!これが魔の剣の共鳴!!」
「そんなまさか!!」
本当に突然何を言い出したんだこの人たちは。剣を抜くとすごい力が溢れてくるような気がする。なんだか力が湧いてきて邪念が消えるようだった。
「魔を滅ぼす剣と対になる武器!!この剣と一緒にすると共鳴し邪念や全てのものは消え最強になると聞いたことある!!」
刺さっていた魔を滅ぼす剣も石から抜けこちらに飛んでくる。2つ揃うとさらに力がみなぎってくる。
魔王と悪魔は攻撃を仕掛けるも全くこうげきをうけていない逆に俺の剣は魔王達に大きなダメージを与える。グオオオオオオという悲鳴をあげて魔王はその場に倒れこむ。
「おのれ!勇者風情がああああ!」
そう言い残すと魔王は消えていった。なんだかあっさりしたが、魔王を倒したのだ。俺はいつもの俺に戻っていた。いつものなんお変哲も無い俺だ。戦っていた時の記憶はちゃんとあるが。まさかこんな無茶苦茶な展開で魔王を倒せてしまうとは思わなかった。
「終わったんだな」
「これで...!世界が平和に!!!」
ポチっという音に平和を喜んだ勇者は真顔でこちらを見る。それもそのはずだ。俺がスイッチを押した音が聞こえたのだから。
「おい....なんで世界平和になったのに押したんだ?」
「だって、押すなって言われたら押せってことでしょ」
その日、魔王のいなくなった平和な世界にもかかわらず、その世界は終わりを迎えた。