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衛の過去

 ――吃音省。

 言葉をスムーズに発することが出来ない発達障害で、俺の場合は程度が重くて言葉を発する際に十秒近いタイムラグを必要とする。

 はっきり言って人間としてポンコツもいいところだ。

 学校は生活は地獄だった。

 まともに話せない人間が、まともに集団生活を送れるはずがない。

 あとはお決まりのコース。

 俺は目の前にいる同じ中学の不良グループから虐めのターゲットにされ、すぐに不登校になった。

「なにキモい格好してるんだ? 連れの女、JCだろロリコンかよお前」

「……あ、あの……その……」

 胃が急に痛くなる。

 殴られるのは嫌だ。

 俺は手を掲げて顔面を守る。

 俺の身長が百六十三cmに対して、相手の身長は百七十cm以上。上から降ってくるパンチはガードの上からでも、とても痛い。

「あの、私達、貴方達に何か迷惑を掛けましたか?」

「こいつの話し方、キモいんだよ。何言われても、よくわからないことモゴモゴ言ってるだけだし」

「JC連れてデートとか、ロリコン有罪だろ」

「キモい奴の女は、やっぱりキモいんだな」

 やめろ、俺はともかく未来の悪口は言うな。

「仕方ないです……あたし、貴方達のこと嫌いみたいです」

 未来は小さく嘆息すると、左目を覆う眼帯をずらし赤く輝く義眼を人目に触れさせる。

 ヤバいッ! ヤバいッ! ヤバいッ! ヤバいッ! ヤバいッ! ヤバいッ!?

 未来は三人とも殺す気だ。

「……だ、ダメ」

「燃えろ」

 未来にこの世界で人殺しをさせるわけにはいかないッ!

 俺は、槍の石突きで正面に立っていた少年のコメカミをフルスイングで殴りつけ、 コメカミを強かに打たれた少年は、まるで糸の切れた凧のように真横に吹き飛んだ。

 間髪入れずに、右側に立つ少年の鳩尾と額に突きを見舞う。

 敵が倒れるのを確認する間もなく、槍を地面に突き立てて身体を支えながら、最後に残った一人の金的に蹴りを一発。金的蹴り食らって反射的に頭が下がったので、槍を振り下ろして後頭部に石突を叩き込む。

「はあ、はあ、はあ……あれ?」

 気が付くと俺の恐怖の象徴だった不良三人は、目の前で血の泡を吹いて昏倒していた。

「……こっ、こんな簡単なのか」

 異世界で血反吐を吐きながら槍術を覚えた。

 命がけの戦いを何度も潜り抜けた。

 その経験に比べてたこんな不良の存在はカスみたいなもの……よく考えなくても当たり前の話だ。

「……俺が相手で幸運だったな」

 見たところ三人とも死んではいないようだ、後遺症が残るかもしれないが、生きたまま焼かれるよりはよっぽどマシだろう。

 三人は想像もつかないだろうが、未来は実は凄腕の陰陽師なのだ。

 ゲーム的にいうと魔法使いに当たる能力の持ち主で、三人を黒焦げにするのは朝飯前の話。

 異世界基準ならあんなクズ、殺して灰を畑に巻くところだが現代の日本でそんなことさせる訳にはいかない。

「……悪い心配……なッ!? 未来ヤメロッ!殺すのはダメだ」

 振り返ると、未来は風呂敷包みの中から格子模様の書かれたお札を取り出すのが見えた。

 あれは陰陽師が使う専用の呪符だ。

 未来は対象を目で見て言葉を発するだけで術を使えるが、呪符を使うことでより大きな術を使うことが出来る。

「水刃招来――救急如律令ッ!」

 未来が使用した術は、高圧の水流で人や物を切断する水刃。

 少年達が切り刻まれる光景が目に浮かぶが、俺に出来るのは術に巻き込まれるのを避けるためにこの場を飛退くことだけだ。

「……って」

「やっぱりダメか――」

 予想に反して水の刃が少年達を切り裂くことはなかった。

 水の刃は顕現せず、未来の持った呪符からカサカサと乾いた音が聞こえてくる。

「……ど、どうしたんだ? らしくないぞ」

 不良少年相手に呪符を使うなんて、象がムキになってアリを踏みつけにいってるようなものだ。

 普段の彼女はそんな非効率な真似は絶対にしない。

「衛……どうしよう? この世界では私達術が使えなくなってるみたい」


吃音省の描写はもっと研究の余地があるかなあ。

どんな喋り方か気になる方は映画の「英国王のスピーチ」を見てください。

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