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第39回 “ラビアンローズ”

「我こそは、薔薇の化身ラビアンローズ!」

 変身したユリアが言った。

「え?変身したら名前変わるの?タコデビル・・・天木英雄は、名前は変身しても一つしかないって言ってたけど」

「アイツと私を一緒にするでない!私はアイツより高度な存在なのだ!」

「・・・なるほど、要するに取り決めとか特にないユルユルな組織ってことね」

「ふざけるな!わが組織は、厳密な規律によって末端まで統制された素晴らしい組織だ!」

「ああ、そう思い込んでるのね。まあ、どこの組織でも上に行くほど末端のことは理解してないからしょうがないか。しかし、悪の組織なのに『バラ色の人生』って名前はどうよ?」

「我々のことをどこまでバカにするか!それならこちらにも考えがあるぞ!」

 ラビアンローズがそう言った途端、ラビアンローズの後ろの玄関から遠足の一行が現れたが、先頭にいた30歳ぐらいの女性は、雑兵の一人に後ろ手に締め上げられ、首筋にアーミーナイフを突きつけられていた。

「あ、お前ら!なんて卑怯な!」

「卑怯?ああ、なんて素晴らしい誉め言葉かしら」

 ラビアンローズが愉快そうに言った。

 アーミーナイフを突きつけられた女性は、ラビアンローズの姿を見ると驚き、青ざめて震えていた。

「やめて!やめて!先生を離してあげて!」

 その時、一団の中からクミが出て来て、女性を締め上げている雑兵のズボンを引っ張りながら言った。

「あ、クミちゃん!出てきちゃダメだ!」

「うるさい!」

 弘が叫ぶのとほぼ同時にラビアンローズがそう怒鳴って、鞭のような右手でクミを殴り、玄関と反対側に吹っ飛ばした。

 弘は、頭で考えるより早く体が反応し、全速力でクミの方に走って追いつくとクミの向こう側に体を入れて受け止めた。

 クミは、鼻から血を流して気を失っていた。

 それを見た瞬間、弘の体の中から、自分の人生で今まで感じたことのないほどの強烈な怒りがこみ上げて来た。

「きさまー!こんな小さい子に手を上げるなんて!許せん!」

 そう言うと、クミをそっと地面におろしてから、全速力で先生を締め上げている雑兵の目の前に移動し、左手で胸ぐらをつかんで顔面を思いっきり殴り飛ばした。

「ボキッ!」という大きな音がして、その雑兵は膝を折って地面に崩れ落ちた。

 弘は、そのままその一団の周りにいた雑兵を次々と同じように殴り飛ばしていった。殴られたものは皆、首の骨が折れる音がして地面に崩れ落ちた。

「きさま!」

 4人目を倒した直後、ラビアンローズがそう言って右手を弘に向かって伸ばして左腕に巻き付け、自分の方に引っ張り込んでから高く上に持ち上げ、仰向けに地面に叩き付けた。

「ぐあっ!」

 弘は、そう声を上げるとそのまま地面に転がったが、体を小学校の一行に向けると、

「早く逃げて!」

 と、叫んだ。

 その声を聞いて、一行は乗って来たバスの方に向かって駆け出した。しかし、その行く手に雑兵3人とマサヒコが立ちふさがった。

 一行が、恐怖した顔で立ち止まった瞬間、甲高いエンジン音が聞こえて来たかと思うと、大型の黒いオートバイが敷地に飛び込んで来るや、ジャンプして前輪を上げた姿勢でその雑兵3人とマサヒコに突っ込み全員を弾き飛ばした。

「さあ、今のうちにバスへ!」

 着地して止まったオートバイの上からそう叫んだのは治郎だった。

 一団は、われ先にとバスに向かって走り出した。


「治郎!ナイスタイミングだ!助かった!」

 弘は、素早く起き上がると、左腕に巻き付いているラビアンローズの鞭のような腕を右手で掴み、引っ張って右方向に投げ飛ばした。

 しかし、ラビアンローズは、素早く腕をほどくと空中で側方に1回転して何事もないように着地した。

「ほう、例の相棒か。話は聞いている。そこそこやるようだな」

 ラビアンローズは治郎に向かって言った。

 治郎は、オートバイから素早く飛び降りると、ヘルメットを被ったまま、自分が倒した4人のうち、一番自分に近い位置に倒れている雑兵に向かって行った。

「ばかめ!」

 起き上がって来たマサヒコは、そう叫ぶと、治郎に向かって火炎放射器のように口から炎を噴いた。

 治郎は全身を炎に包まれた。

「ああ!治郎!」

「ふん、ただの人間ふぜいが調子に乗りおって」

 マサヒコはそう言ったが、治郎は炎に包まれたまま雑兵に突進して一人を倒すと、マサヒコから離れるように地面に転がって火を消した。

「さすがF1用レーシングスーツだ。なんともないぞ!・・・ちょっと熱かったけどな」

 治郎は立ち上がるとマサヒコの方を向いてそう言った。

「なにっ!くそっ!もう一回だ!」

 マサヒコは、そう言って再び治郎に向かって炎を噴く体制を取ったが、弘が瞬時にマサヒコの横に移動して、腹の辺りに横蹴りを放った。

「2度もやらせるかよ」

 弘はそう言ったが、マサヒコはさすがの幹部で、横倒しにはなったものの3メートルほど滑っただけで止まった。


「クミー!」

 その時、ナオミがそう叫んで、一団の中から地面に寝ているクミの方に向けて手を伸ばした。しかし、パニックになってバスに急ぐ一団に飲み込まれて、本人の意思とは別に、そのままバスの方に移動されられていた。

「ナオミさん!クミちゃんは俺が必ず助けますから早く逃げて!」

 弘は、ナオミに向かって叫んだ。

「その声は・・・弘くん?」

「はい!俺に任せて!」

「でも」

「大丈夫ですから、まずはみんなと避難してください!」

「お願い!絶対にお願いよ!」

 ナオミは悲鳴に近い叫び声で言った。

「はい!」

 弘がそう言ったところで、マサヒコが起き上がって来たため身構えたが、次の瞬間、再びオートバイに乗った治郎が突撃してきてマサヒコを転倒させた。

 それを見た弘は、建物のわきに置いてあった電動カートのところに素早く移動し、それを持ち上げるとラビアンローズ目がけて投げつけ、その行方も見ずにマサヒコに向かって飛び上がった。

 マサヒコは、再び立ち上がってきたが、治郎は、弘が飛び上がったのを視線の端でとらえると、

「へへーん!そんななまっちょろい火炎放射なんか効かないぞー!お前、頭悪いだろ」

 と、マサヒコに向かって大声で叫んだ。

「きさまー!2度もバイクをぶつけおって!もう、容赦はしないぞ!」

 マサヒコは、治郎の方を向いて怒鳴った。

 次の瞬間、無言で放った弘のフライング・キックがマサヒコの右首筋に炸裂してマサヒコを地面に叩き付けた。

 しかし、マサヒコはまだ息があるようで、うつぶせになって「ぐうう」と唸っていたので、弘はマサヒコに馬乗りになり、頭を掴むと思いっきり左にひねった。マサヒコの首からは「ボキッ!」という骨が折れる音がした。

 弘が飛びのくと、マサヒコは、しばらく痙攣したのち爆散した。


 ラビアンローズは、弘が投げたカートを弾き飛ばしていたため対応が一瞬遅れて、マサヒコがやられるのを黙って見ているはめになった。

「きさま!またしてもうちの強化戦闘員を!もう我慢ならない!今からお前に地獄を見せてやる!」

 ラビアンローズは、弘に向かってそう叫んだが、弘は、ラビアンローズが行動を起こすよりも早くラビアンローズに向かって突進した。

 次の瞬間、ラビアンローズの鞭のような腕が弘に向かって飛んできたが、弘は上にジャンプしてそれをかわすと、建物の屋上に飛びあがった。

「きさま!逃げるか!」

 ラビアンローズは、そう叫び、建物の3階の窓に腕をからませて、体を引っ張り上げるように屋上へと飛び上がったが、屋上に着地した瞬間、弘のキックが飛んできてラビアンローズの腹を直撃した。

 ラビアンローズは、そのまま3メートルほど足を付けたまま後ろに滑るように下がった。

「ふん、生っちょろい蹴りだな。お前の力はその程度か」

「ばあか、お年寄りだから加減してやってるんだろうが」

「きさまー!減らず口ばかり叩きおって!もう勘弁ならん!」

 そう言うと、ラビアンローズは左右の腕を矢継ぎ早に弘めがけて飛ばしてきた。

 弘は、ジャンプしたり寝転がったりして、攻撃をせずにしばらくそれを避けようとしていたが、弘を上回るスピードがあったため、何度か直撃をくらった。それでも、周りにある貯水槽や屋上の構造物などをつかんで屋上からは落ちないように踏ん張っていた。

 そして、2台のバスが砕石場から出ていくのを確認すると貯水槽を引きちぎり、自分が見えなくなるような角度でラビアンローズに投げつけると、素早く屋上から飛び降りた。

 それから、クミが寝ているところに移動し、クミを抱えあげるとわざと見える程度のスピードで建物の前を採石場の入り口方向に移動して治郎と戦っている雑兵の目をそっちに引き付けてから建物の裏に回り、建物を陰にして高速で従業員用の駐車場へと移動した。

 駐車場に着くと、停めてあった黒いランドクルーザーの後部ドアを開け、後席にクミを寝かせた。


「くそっ!どこへ行った!」

 投げつけられた貯水槽を弾き飛ばしたら、弘が視界から消えていたため、ラビアンローズはしばらく構造物の陰などに弘が隠れていないか警戒しつつゆっくりと屋上の上を移動していった。


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