第34回 “強敵!タコデビル!”
弘は高速で治郎を追い抜き、増援のお面ライダーたちに向き合っているかたちで弘に背を向けている雑兵4人の背後に移動すると、一番右側にいた雑兵の右わき腹に右回し蹴りをお見舞いした。
すると、狙ったわけではなかったが、その雑兵が横になって吹っ飛んだせいで他の3人の雑兵も巻き添えを食って左側の壁に激しくたたきつけられた。
4人の雑兵は、その場にのびて動かなくなった。
「おお!44号、無事か!こっちだ!」
お面ライダーの一人が左手で手招きをした。弘は治郎が気になったので振り返ってみたが、治郎はすぐ後ろまで来ていた。
「わかりました!ありがとうございます!」
弘は、お面ライダーたちの方向へ駆け出し、治郎もあとに続いた。
そのまま10メートルほど走り、突き当りを左に曲がると、もう、目の前が出口だった。
出口のドアは破壊されてこちら側に倒れていたので、4人は、そのドアの上を走って外に出た。
外に出ると右手に守衛が立っていた門が見えたが、その門も破壊されており、そのそばに大型のオートバイが2台停めてあった。
「助けに来てくれてありがとうございます!えーと・・・」
弘は、目の前にいるお面ライダーの一人に礼を言ったが、そのお面ライダーが何号だかわからなかったので言葉に詰まった。
「私は4号でこっちが6号だ」
お面ライダー4号は、それを察して弘に言った。
「あ、すみません。なんせ、会うの2回目なんでよく覚えてなくて」
「構わんよ。見た目はほとんど同じで数も多いしな」
4号は、優しく言った。
「さて、もう少ししたらもっと増援が来るから、それまで、なんとかこの場を持たせないといけない。やれるか?」
6号が聞いてきた。
「あ、はい、特に何もされていないみたいなので大丈夫です」
「わかった。じゃあ、まず、増援が入り易いようにあの門を片付けるか」
6号は守衛のいた門の方を見ながら言った。弘は、その後頭部をじっと眺めていた。
「さて、では・・・」
そう言って6号は振り返ったが、弘がじっと自分の頭を見ていたようなので聞いた。
「ん?私の後頭部がどうかしたかね?」
「あ、ジロジロ見てすみません。やっぱりお二人の後頭部には数字が書いてないなあと思って」
「ん?ああ、キミの後頭部には数字が書いてあるから違いが気になったのかね」
「ええ、少し」
「これにはちゃんと理由があるんだが、今はそんな説明をしている場合じゃない。ここを乗り切ったら教えてやるよ」
6号はそう言ってから、破壊された入り口の門の方に一瞬で移動した。そして、地面に転がっている門を右手でつかむと、一番邪魔にならなそうな弘と治郎が乗り越えて来た金網の方に軽い感じで放り投げた。門は、すごいスピードで飛んで行き、金網の手前5メートルほどのところに落下すると、そのまま滑っていって金網にぶつかって止まった。
そこで、弘たちが出て来た入り口から、雑兵たちがぞろぞろと飛び出してきた。
ほとんどの雑兵は、弘たちが戦っていたときと同じく警棒を持っていたが、中に数人拳銃を構えている者がいた。
その拳銃を持っている雑兵の一人が「止まれ!」と叫んで、4号の足元の地面に1発弾を撃って来た。
「おい!敷地内では拳銃は使うなと言ってあっただろうが!建物や車に当たったらどうするんだ!お前が弁償するのか!」
その直後に雑兵たちの後方から怒鳴り声がしたが、その声は貧乏神博士だった。
「さすが、貧乏神博士だな。この状況で攻撃力より壊れる心配か」
4号がそう言って軽く笑った。
「聞こえたぞ!その名前で呼ぶんじゃない!もう、許せん!覚悟しろ!」
貧乏神博士は、そう叫ぶと雑兵の一団の前に出て来て、先ほど同じポーズでタコデビルに変身した。
「出たなタコデビル!」
6号が叫んだ!
「だから、人に勝手に名前を付けて呼ぶのはやめろと言ってるんだ!」
タコデビルは怒鳴った。
(なんだよ、俺たちが捕まった時の拳銃はハッタリかよ!)
治郎が小声で弘に言った。
(ちぇっ!まんまとハメられたな)
(じゃあ、俺も暴れて大丈夫ってことだな)
(ああ、そうだな。しかし、こっちが助かるなあ。貧乏神博士って名前は伊達じゃないな)
治郎と弘は、そう言って笑った。
「おい!そこ!何が可笑しい!笑っていられるのも今のうちだぞ!」
タコデビルは、かなり怒っていた。
「じゃあ、私がタコデビルを引き付けるから、二人は雑兵を頼む。まず、拳銃を持っているヤツからな」
「わかった。じゃあ、私は左から」
「わかりました。じゃあ、俺は右から行きます。治郎の参加は、拳銃持ってるヤツを片付けてからな」
「わかった」
その直後、4号は瞬時にタコデビルの目の前に移動した。
それが合図のように、6号と弘は、雑兵の一団の左と右に突進して、まず、拳銃を持っている雑兵を順番に殴り倒していった。
治郎はその様子を見ていたが、弘の姿が移動中もかろうじて見えていたのに対し、6号の動きは足を止めて殴っている時以外はほとんど見えなかった。
「すげー!身体能力が高い人がお面スーツ着るとあそこまで速くなるんだー」
治郎は心底感心していた。それから、門の方を振り返って、
「YZF-R1Mとハヤブサかー。さすがに二人ともいいオートバイに乗ってるよなー」
と、4号と6号が乗って来たと思われるオートバイ見ながらしみじみと言った。
「おい、なによそ見してんだよ。危ないぞ」
治郎がその声に振り返ったら、目の前に弘が立っていた。
「うわっ、びっくりした!・・・て、お前こそ、こんなところにいていいのかよ」
「もう終わったよ」
「え?」
治郎が雑兵の一団の方を見ると、30名ほどいた雑兵が全員地面に転がっていた。ほとんどの者は気絶しているようで、かろうじて数人に意識があるようだったが、その数人も転がったまま苦しそうにうめいていた。
「速っ!すげーなー」
「いや、4分の3ぐらいは6号さんが倒しちゃったんだけどね」
「そうか、さすがだな・・・・・危ない!」
治郎がそう叫んでしゃがみながら弘の手を引いたが、少し反応が遅れてしゃがむのが間に合わなかった弘の後頭部に4号がふっ飛んで来てぶつかり、20メートルほど先の地面に落下して転がった。弘も、ぶつかったショックで顔から地面に倒れて5メートルほど滑っていった。
「いてててて」
弘がそう言いながら上半身を起こして振り返ると、タコデビルが転がっている4号の方をにらんで言った。
「一人で向かってくるとは、私も舐められたものだな」
それを見た6号は、自分のベルトの右側に付いている円柱状の物の上部を右手の指で軽くたたいた。
すると、その円柱はビョン!という感じで腰からを外れて飛び上がり、80センチほどの細長い棒になった。
6号は、それの下の端を右手のひらで払うように掴むと、タコデビル目がけて突進した。
「あ、そうか。あれを使えばいいんだ」
そう言って弘も、自分のベルトの円柱状のものを同じように飛び出させて、6号と同じように右手でつかもうとしたが、うまくつかめずに左の方へはたく格好になった。
「あっ!」
と、弘はあわてて左手を伸ばしたが、そこにいた治郎がうまくキャッチした。
「やれやれ。ほらよ」
治郎は、弘にその棒を渡しながら言った。
「悪い」
弘は、そう言って治郎からその棒を受け取ると、タコデビルに向き合ったが、全力で走るとタコデビルとの位置が自分ではまだコントロールできないと判断し、普通に歩いて近寄って行った。
すでに6号はタコデビルに接近して手に持った棒で戦い始めていたが、それを見た治郎は、
(確か、あの棒って「バトル・バトン」って名前だと手引きに書いてあったよな。殴るだけじゃなくて、なんか機能が付いてた気がするんだけど、なんだったっけかな?・・・しかし、「戦う棒」かよ。もっとマシな名前はなかったのかね。語呂も悪いし)
とか、考えて苦笑していた。
その時、治郎の右横を突風が駆け抜けて弘を追い越して行った。その直後に、タコデビルの右前方に4号の姿が現れたので、それが4号が駆け抜けていった際に巻き起こった突風だというのがわかった。
「うーん、4号さんもスゴいねえ。弘と同じスーツを着てるとは思えん」
治郎はそう呟いて、感心したようにうんうんと頷いた。
治郎はやることがなくなったので、しばらくタコデビルと3人が戦う様子を見ていたが、3人でかかっているにも関わらず、タコデビルの方が押しているように見えた。
「やっぱり幹部ってのは強いんだなあ。今までの改人とは段違いだ」
4号、6号、弘とも、バトル・バトンを持って戦っているにも関わらず、タコデビルの6本の触腕の予想できない動きに手こずっており、何度も弾き飛ばされては立ち上がって向かって行くのを繰り返していた。
そこで、治郎は一つの意外な事実に気が付いた。
(あれ?弘のヤツ、戦っている格好が様になっててカッコ悪くないぞ。どうなってる?)
治郎は不思議に思ってしばらく考えていたが、昔のことをひとつ思い出して納得した。
(あー!アイツ、小学校5年生の時に剣道の道場に通ってたな!剣道の試合をテレビで見てカッコ良かったからとか言って。でも確か、下級生を含めてあとから入って来たヤツにどんどん抜かれるので、やっぱり運動は無理だとか言って1年でやめたっけ)
そう考えながら、治郎のことを微笑ましく見守っていたが、どんどん3人の形勢が悪くなっていくので、ハラハラし始めていた。
その時、数台のオートバイや自動車が高速で近づいてくる音が左後方の敷地の外から聞こえて来た。




