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第33回 “捕らえられた二人”

「俺たちをどうするつもりだ!」

 弘は、貧乏神博士に向かって怒鳴った。

「まあまあ、あわてるな。それはこれからゆっくりと体験させてやるから。特に、色々と邪魔をしてくれた44号くんには念入りにね」

 貧乏神博士は、相変わらず薄笑いを浮かべた顔で言った。さらに続けて、

「それよりもキミの相棒だ。キミが寝ている間に身体能力を測定させてもらったが、非常に高い数値を示した。まさに、強化工作員にするのにうってつけの人材だよ。実に素晴らしい」

 貧乏神博士は、治郎の方を見ながら言った。弘が治郎の方を見ると、治郎が貧乏神博士の方を向いてにらんでいたが、口に何かを詰められてしゃべれないようにされているようだった。

「貴様!なんてこと言うんだ!治郎にそんなことはさせないぞ!」

 弘は、そう貧乏神博士に向かって怒鳴ると、体を大きく揺すった。

「いやいや、これから強化工作員になってもらうんだから丁重に扱うとも。しかし、キミにその姿のままのでいられると色々と面倒だな。おい、変身をとけ」

 貧乏神博士は、弘の左上にいる雑兵に向かって言った。

「はっ!しかし、どうやってとくかがわかりません!」

 雑兵は大きな声で答えた。

「なんだと!他に誰か知ってるヤツはいないのか?」

 貧乏神博士はその部屋にいた雑兵全員に視線を送りながら言った。しかし、皆、押し黙って下を向くだけだった。

「すみません!このベルトの機能はお面ライダー組織の最高機密で、情報が漏れないよう厳重に管理されておりますので!」

 先ほどの雑兵が大きな声で答えた。

(コイツ、どやされないように適当に言ってるな。実際は、手引書を普通郵便で送って来るような扱いだぞ)

 それを聞いた弘は思った。

「なんでもいいから、ベルトを調べてそれっぽい仕掛けを探ってみろ!」

「は!」

 そう返事をすると、その雑兵は弘のベルトをいじり始め、まず、ベルトの左側にある小箱を開けた。

「うん?ここにボタンがあるな。これか?」

 そういうと、雑兵はその箱の中にある黄色いボタンを押した。

 弘の目の前のスクリーンに「通話可能」というメッセージが出た。

(これはチャンス!)

「1号」

 と、弘は短く言って、呼出音を確認したところで、

「たちが、すぐにやって来てくるぞ!観念しろ!」

 と、続けて言った。

 1号が電話に出たという表示を確認したので、

「ニョッカーの移送基地のこんな寝台の上に俺たちを縛り付けてどうしようっていうんだ!こんな、大下町1-4-8なんて場所にな!」

 と、大声で叫んだ。

「うるさい!騒ぐな!お前には、このあとにお楽しみが待ってるんだからな。痛くて苦しいお楽しみがな」

 そう言うと貧乏神博士は、ヒヒヒという下卑た笑いを浮かべた。

 その直後、1号が小声で「すぐ行く」と言ってから電話が切れた。

(よし!これでなんとかなりそうだ。でも、1号さんたちが来るにしても、少し時間がかかるだろうから、ちょっとジタバタして時間を稼いでみるか)

「やめてくれー!痛いのは嫌いだー!助けてー!」

 弘は、そう叫びながら拘束されている両手両足に力をこめてバダバタと体全体をゆすった。

「あ、コイツ!おとなしくしろ!」

 貧乏神博士が弘に向かって怒鳴った。弘の体を調べていた雑兵は、弘が暴れ始めたので一瞬たじろいで手を放したが、貧乏神博士の怒鳴り声で我に返って、三人で同時に弘を押さえこもうと、両肩と太もものあたりに取り付いた。

「バキッ!」

 何かが壊れる音がしたと思った途端、弘は、自分の右手が軽くなったのを感じて右手を顔の前に持って来てみた。

 右手を拘束していたバンドが、寝台に結合されていたネジごと外れて、右手首にかろうじてひっかかっている状態になっていた。

「あれ?」

 弘は、一瞬キョトンとして声を上げた。

「あ、コイツ!」

 それを見た弘の右側にいた雑兵が、弘の右腕を押さえ込もうと取り付いてきたので思いっきり右腕を振ったら、ものの見事にその雑兵の右ほほに命中して雑兵はスゴい勢いで後ろに吹っ飛んだ。

 油断していた貧乏神博士は、飛んできた雑兵の体を胸のあたりにまともにくらい、吹っ飛ばされて仰向けに転倒した。

(うおー!お面スーツの力すげー!よし!)

 弘は、左手、左足、右足の順に思いっきり力を込めて拘束バンドを外し、右足で左側から太ももを押さえていた雑兵を蹴ってその後ろの壁まで吹っ飛ばし、左の肩のあたりに立っていた雑兵を右のパンチで殴って、これまた壁まで吹っ飛ばした。

 それから、素早く寝台の左側に飛び降ると、入り口のドアに肩から体当たりをしてこれを破壊した。

 次に、治郎が寝かされている台に行くと、両手両足を拘束しているバンドを引きちぎった。

「行くぞ!」

 弘はそう言ってから破壊した入り口から部屋の外に出た。治郎も口の中の詰め物を投げ捨てるとあとに続いた。

 しかし、部屋の外は左右に長い廊下が続いており、どちら側の廊下も窓には面していなかったため、出口がどっちだか二人にはわからなかった。

「くそ!出口がどっちかわからんが、とりあえず移動しないと貧乏神博士が起き上がって追ってくる!」

 弘は右側に向かって駆け出した。


 すると、前方の角から手に手に伸縮式の警棒のようなものを持った雑兵が3名飛び出してきた。

 弘は、瞬時に高速で移動して、カッコ悪いパンチとイケてない前蹴りで全員倒すと、その3人が出てきた通路を伺ったが、人影は見えなかったので真っすぐさらに進んで行った。すると、さらに前方の通路から雑兵が5名ほど出て来て向かって来た。

 雑兵たちは警棒で殴りかかって来たため、弘は一人ずつ殴ったり蹴ったりして倒していったが、どんどん雑兵が奥から出てくるので完全に混戦になった。

 そうこうしているうちに、先ほど通り過ぎた通路からも雑兵が出てきて、背後から襲われるかたちになったので、それは治郎が相手をすることになった。

 そのまましばらく戦っていたが、徐々に押されてきて二人は背中合わせになった。

「うーん、キリがないし、少しずつ押されてきてる。このままじゃまずいぞ」

 治郎が言った。

「そうだな。出口がどっちだかわからないけど、とりあえず前には進まないと。それにしても、誰も拳銃を持ってないのはなぜだ?」

「たぶん、建物を傷つけたくないか、壁を貫通して部屋の中のものを壊したくないからじゃないかな」

「ああ、そうか。そうかもな」

 そう言いながら、弘は殴りかかって来た雑兵の一人の腕を捕まえると、腰のベルトも掴み高く頭の上に差し上げた。

「これでどうだ!」

 そう言いながら、前方から向かってくる一団に投げつけた。その一団は、まとめて後ろに吹っ飛んだ。

「おし!ちょっと突破口ができた。治郎、行くぞ!」

 弘が、そう言って前にダッシュしようとしたその時、後方のかなり離れたところから、何かを壊すような大きな音が聞こえて来た。

 振り返ると、通路の向こう側の端で雑兵が消火器や椅子のようなものを投げつけられてこちら側にハデに倒されているのが見え、その向こう側にお面ライダーが2名ほど見えた。

「弘、増援だ!何号だかわからないけどお面ライダーだ」

「ああ。1号さんは確か赤かったから、別の誰かだ。じゃあ、出口はあっちってことだな」

 そう言うと弘は、倒れている雑兵の一人を先ほどと同じように高く差し上げた。

「治郎、しゃがめ!」

 弘はそう叫んでから、治郎と戦っていた一団にめがけて投げつけた。

 素早く這いつくばった治郎の上を弘が投げた雑兵がスゴいスピードで通り過ぎ、治郎と戦っていた一団を直撃した。

 その時、弘たちが寝かされていた部屋から貧乏神博士が飛び出して来て、

「くそっ!どっちに行った!」

 と言って、まず左を見て、それから右を見たが、その瞬間に雑兵の一団が吹っ飛んで来て直撃した。

 貧乏神博士は、またしても後方に吹っ飛ばされて激しく転倒した。

 治郎と弘は貧乏神博士には気づかず、その倒れた一団を踏みつけて通り過ぎて行ったが、その時、弘の足が貧乏神博士の顔を思いっきり踏みつけた。

「んぎゃ!」

 貧乏神博士は思わず悲鳴を上げた。

「ん?なんか今ブタの鳴き声がしなかったか?」

 弘はそう言いいながら、一瞬後ろを振り返ったが、

「そうか?」

 と、治郎がそっけない返事をして後ろも振り返らず前に進んで行ったので、すぐに弘も視線を戻して、増援に来たお面ライダーたちの方へと向かって行った。


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