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第32回 “懐かしの御三家”

「なんだそのふざけた名前は!勝手にそんな名前で呼ぶな!」

「いや、俺たちが名付けたわけじゃなくて、お面ライダー組織のコードネームなんだけど」

「なんだと!そんな、ふざけたコードネームをつけるとはけしからん!お前らはもう、ギタギタに切り刻んでやる!」

「ということは、改人にもちゃんと名前があったのかな。俺たちは適当にカブトムシ男とか呼んでたけどね」

「誰だカブトムシ男って?」

「誰って、ほら、うちの庭に侵入してきて俺が最初にやっつけたヤツ」

「ああ?何のことだ。そんな報告は受けてないぞ」

「え?・・・ああ、そういえば誰も見てなかったし、本人は爆発しちゃったから報告できないか」

「なに!?1体、所在のわからなくなっている強化工作員がいると思ったら、お前にやられたのか?」

「・・・さっき、そう言ったよね。ふうん、強化工作員っていうんだ。そう、体がカブトムシみたいで手が鎌みたいなってるやつ。あいつの名前、ホントはなんていうの」

「貴様ー!よくもヒデキを!許せん!」

「えー!あのカブトムシ男、ヒデキって名前なのー?うっわー、なんか違和感ー・・・もしかして、本名?」

「違うに決まってるだろ!記憶が戻ったりしたらやっかいだから本名など名乗らせるか!」

「じゃあ、採石場跡地で倒したシロサイ男は?」

「あれは、ゴローだ!」

「あ、それはなんとなくイメージ合ってるかな。じゃあじゃあ、あんたらがレアメタルを採掘してた採石場にいた、なんでも溶かす液体を口から出すテッポウウオ男は?」

「あれは、ヒロミだ!」

「えー!?その三人の名前って・・・・・ちょっと古くない?」

「何が古い!何を言ってるのかわからん!」

「あー、あんた40代みたいだからピンとこないか。俺は若いけど、古い歌謡曲にいい曲多くてよく聴くから昔の芸能人とか結構知ってるんだよね~。ところで、誰が名前決めたの?」

「もちろん、日本支部長だ!65歳だが絶世の美女だ!そこらの若い女は誰も太刀打ちできないほどのな!」

「あー、そうなんだー。世代的にはハマッてるね。納得、納得。しかし、65歳の絶世の美女ってどんなんだろ?ちょっと見たいかも」

 弘は、勝手に妄想して一人でニヤニヤしていた。

「じゃあ、スケベなネズミ男は?」

 しかし、名前の興味の方が上回ったため、すぐに続けて聞いた。

「うちの強化工作員を変態などこかの妖怪みたいに呼ぶな!アイツはトシヒコだ!」

「あ、少し若くなったねえ・・・って言っても、もうすぐ還暦を迎えるオジサンだけど。じゃあきっと、マサヒコとヨシオってのもいるんだよね?」

「なっ!・・・貴様、なぜ支部長付幹部の名前を知っている!?」

「いやいやいやいや、思いっきりわかりやすいから知らなくても予想できるでしょ。まあ、テルヒコ、ユキオ、カズオじゃなくて良かったかな」

「なにー!なぜ、その名前も知っている!亜細亜本部付の近衛兵団御三家と呼ばれる最強の切り札で、まだ、対外戦闘には出たことのないメンバーだというのに!お面ライダーの情報網、あなどれん!」

「ええええーーーー!いるのーーー!?しかも、まんま『御三家』って称号なんだー。こっちがビックリだわ・・・名前つけたの誰?」

「本部付の近衛兵団なんだから、亜細亜統合本部長に決まってるだろうが!」

「いや、ニョッカーの組織構成とか知らないんだけど・・・おいくつ?」

「76歳だ!76歳だが、この方は、日本支部長をも上回る超絶美女だ!」

「あー、年代的にはどストライクな感じだなあ。・・・しかし、76歳の超絶美女ねえ。日本支部長より見たいかも」


「えーい、くだらないことをゴチャゴチャと!もう、話は終わりだ。おとなしく降参しろ!」

 貧乏神博士は、そう言うと両手を左右に広げてからゆっくりと上げ、頭の上で輪っかを作った。その途端、頭が膨らんでいき、体の線もグニャグニャと変形を始め、10秒ほどでタコに似た改人に姿が変わった。

 頭部は上に大きく膨らみ、目は少し飛び出し、鼻が前にせり出して筒状になった。

 両腕は、まさにタコの触腕といった感じで先細りの軟体動物的なうにゃうにゃして片側に吸盤が並んでいるものになった。そして、それがわき腹の辺りからも一対、背中の肩甲骨あたりと思われる場所からも一対、合計、6本の腕となった。

 下半身だけは人間の足の形をしていたが、黒いズボンに黒い普通の革靴を履いていたものが、エンジ色に茶色のブーツを履いたような形に変わっていた。

「出たな、タコデビル!」

 弘が叫んだ。

「なんだタコデビルとは!誰のことを言っている!」

「え?タコデビルもお面ライダー組織で勝手につけた名前なのー?なんだろなあ」

 弘は、残念そうに言い、続けて聞いた。

「じゃあ、ホントの名前はなんていうの?」

「さっき名乗っただろうが!天木英雄だ!」

「いや、変身前の名前じゃなくて変身したあとの名前」

「なんで変身したら名前が変わらなきゃいけないんだ!」

「あらー、意外とつまんない設定だねえ」

「何を言ってる!もういいから、観念してこっちに来い。お前たちには最高のおもてなしを用意してやるからな」

 そう言うと、タコデビルは意味深な微笑をその顔に浮かべた。

「ああ、もう絶対いいおもてなしじゃないね」

「俺もそう思う」

 治郎も同意した。


 大声でタコデビルと会話しながらも、弘は、どうやったらここから脱出できるかを考えていた。

(治郎、俺にもっと近づけ)

 弘は、お面ライダーのマスクをかぶっているので視線を敵に気付かれることはないと思い、顔は前に向けたまま治郎の方を横目で見て小声で言った。治郎は、無言で弘の左後ろの密着する位置に移動した。それから、弘は門の方に視線を送り、

(これだけ拳銃で狙いを付けられていては治郎の身が危ない。治郎を抱えて、高速でジグザグに走りながら逃げるか)

 そう考えながら前方に視線を戻したら、目の前にタコデビルが立っていた。

「えっ?」

 次の瞬間、タコデビルの触腕が弘の頭に飛んできた。

 弘は、それをまともに食らってトレーラーの荷台の角まで吹っ飛ばされ、頭部を激しくトレーラーの硬い支柱に打ち付けた。

(あ、まずい・・・)

 弘は、そう思いながら意識を失った。

「あ、弘!」

 治郎が叫んだ。

「この状況で油断しすぎだよ、お二人とも」

 タコデビルは冷ややかに言い、それから、治郎に向かって聞いてきた。

「さて、キミはどうするかね?」

「あ、降参、降参します」

 治郎は、この状況ではさすがにどうしようもないと判断し、そう言いながら両手を上げて降参のポーズをとった。

「連れていけ!」

 タコデビルがそう言うと、雑兵の中からとりわけ体格の良い二人が歩み出て来て、治郎の両側からそれぞれの腕を抱え込むようにガッチリと押さえた。

「さあ、歩け!」

 治郎の右腕を押さえた雑兵がそう言い、三人は他の雑兵に囲まれて大きなドアから建物内に入って行った。

(ああ、やっぱりこいつらかなり強化されてるな。とんでもない力だ)

 押さえられた腕はびくともしなかったので、治郎は、そう考えながら従うしかなかった。

 意識を失ってトレーラーの横の地面に倒れていた弘は、4人の雑兵に抱えあげられて同じ入り口から建物内に運び込まれた。


 弘が目を覚ますと、結構な広さの手術室のような場所に寝かされていた。

 起き上がろうとしたが、首がバンドで拘束されているようで、頭を持ち上げることもできなかった。

 少し体を動かしてみたが、両手、両足も拘束されているようで、ほとんど動かすことができなかった。

 そのままの姿勢で頭だけ右に向けてみると、ベッドから3メートルほど離れたところに人間の姿に戻った貧乏神博士がいて、雑兵二人と何やら話をしていた。

 左側を向くと、4メートルほど先に別の寝台があり、そこに治郎が寝かされていた。首、手首、足首を頑丈そうなベルトで拘束されていたので、自分もあんな感じなんだと想像がついた。


「お面ライダーが目を覚ましました」

 頭の左上から声がしたのでそちらを見ると、雑兵が一人立っていた。視線を巡らせてみると、左足の先に一人、頭の右上に一人、さらに黒ずくめの雑兵がいるのがわかった。

 そこで、貧乏神博士がこちらを向いて声をかけて来た。

「お目覚めかね。大事にならなくてなによりだ」

 そう言いながら、貧乏神博士は薄笑いを浮かべた。


◆注釈

※1 ヒデキ、ゴロー、ヒロミは、もちろん「新御三家」と呼ばれた、西城秀樹、野口五郎、郷ひろみのことである。ちなみに、団次郎演じる「帰ってきたウルトラマン」の主人公は、「郷秀樹」という名前だった。

※2 トシヒコ、マサヒコ、ヨシオは、もちろん「たのきんトリオ」と呼ばれた、田原俊彦、近藤真彦、野村義男のことである。実年齢は、田原俊彦だけちょっといってて、2021年に還暦を迎える。

※3 テルヒコ、ユキオ、カズオは、もちろん「御三家」と呼ばれた、西郷輝彦、橋幸夫、舟木一夫のことである・・・・・が、若い人はきっと誰も知らない。


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