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第30回 “移送基地探索”

「おい、何をブツブツ独り言を言ってる。大丈夫か?」

 治郎が弘のところまでやって来て聞いた。

「独り言じゃないよ。今、1号さんと電話で話してたんだ」

「ああ、そういうことか。なんの話だ?」

「テッポウウオ男がいた採石場からレアメタルが採れ、それをニョッカーが手に入れるために、あの採石場の持ち会社を会社ごと乗っ取ったらしい」

「なんと!」

「それで、台湾の亜細亜統合本部ってところへの移送が近々開始されるらしいから、それを阻止してくれってさ」

「なんと!なんと!」

「しかも、俺たちが頑張り過ぎちゃってここら辺での作業が進まないから、なんか幹部ってのがやって来るらしいよ」

「なんと!なんと!なんと!」

「・・・ふざけてるのか?」

「え?なにがだ?」

「まあ、いいや。で、そいつは、改人の改造手術にも関わってるんだけど、すごいどケチだから『貧乏神博士』って呼ばれているらしいよ」

「なんだそれ!怖いのか怖くないのかよくわからんな」

「うーん、でも、今までとは比較にならないぐらい強いと1号さんは言ってたし、全体の攻撃も高度に組織的になるらしいから注意が必要ってことだったよ」

「注意してなんとかなりゃいいけど、お前大丈夫かよ」

「大丈夫かって聞かれたら、最初から全然大丈夫な気はしてなかったから、そういう意味では大して変わらんというか」

「しかし、探すっていったって市内全域なんだろ?範囲が広すぎるよ」

「ホントだよな。しかも、探知装置は俺しか持ってないから俺が一人で探すしかないしな」

「あ、そうか、そうだな。それじゃ、ブリザードに乗って市内を周るとしても何週間もかかりそうだ」

「そうだよなあ。そんな悠長なことでいいのかな?」

「わからんけど、とにかく、港の倉庫街とか、西側の工業地帯とか、デカい建物のある場所を優先的に探すしかなさそうだな」

「そうするか。まいったね」

 弘は、本当に困ったような声で言った。

「じゃあ、今日の練習は2時ぐらいで切り上げて探索にいくしかないな。俺も付き合うよ」

「そうしようか。悪いな」

「今更何を言ってる。一人で練習しててもつまらないし、見るだけでも怪しそうな様子とかがわかるかもしれないだろ」

 治郎は真面目な顔で言った。


 結局その日は、昼飯の弁当を二人で食べてから2時までさらに練習して、移送基地の探索に出発した。

 それでも、3時間ほどは練習できたので、弘はお面スーツの特性を随分つかむことができていた。



 二人はまず、工業港の倉庫街に行ってみた。

 弘が持参していた変身ベルトの手引きを見たら、探知機能は変身していない状態でも動作するということだったので弘は変身を解いていたが、探知音がしたときにすぐ気づけるようにベルトは腰に装着したままにしていた。

 その状態で、二人でゆっくりとマシンを流しながら反応がないか調べたが、30分ほどかけて倉庫街のすべてを周っても何の反応もなかった。

 治郎は、一緒に周りながら目視で怪しい人物や、ニョッカーがいつも使用している黒いランドクルーザーやメガクルーザーがないか探していたが、どこにもそれらしいものは見当たらなかった。


 それから二人は、市街地から西にある工業地帯へ移動して、今度は40分ほどかけて全域を周ったが、やはり何の反応もなく、それらしい痕跡も見つけられなかった。


「うーん、やっぱり簡単には見つからないなあ。港とここが一番臭いと思ったんだけどな」

 弘が残念そうに言った。

「ホントだな。まあ、そんなに簡単に見つかるとは思ってなかったけどな。とりあえず、今日は家に帰って続きは明日にしようか」

「そうだな。他に、どこに大きな建物があるかも調べたいしな」

「ああ、俺も調べるよ。じゃあ、明日は10時にいつものファミレスでいいか?」

「わかった」

 それでその日は解散した。


 次の日、弘がファミレスに着くと、治郎は先に着いていて、いつものように奥のテーブル席に座っていた。

 弘は、治郎が先に着いていたらその席にいるだろうと思っていたので、すぐに見つけてそのテーブルに歩いて行った。

「お待たせ」

 弘は、そう言いながら治郎の向かいに座った。治郎はアイスコーヒーを飲みながら、スマホを見ていた。

「お、来たか。いくつか場所の目星は付けて来たけど、今、地図サイトを見て他にないか探してたところだよ」

 治郎がそう言ったので、弘は、バックパックから液晶タブレットを取り出してテーブルの上に置いた。

「だったら、こっちの方が画面がデカくていいだろう。俺も地図サイトを見ながら、次にどこを調べに行くかお前と決めようと思って持って来たんだよ」

「気が利くな」

 治郎がそう言うと、弘はマップサイトで東洋市の地図を出し拡大した。

 そこで、ウェイトレスが注文を取りに来たので、弘はコーラを注文した。

「俺が思うに、移送手段としては港から船って線が一番高いと思うから、どうせ行くなら、港に近い場所にするのがいいと思うんだけど」

 弘は言って、マップを港一体の位置にスライドさせた。

「お前はそう思ったか。俺は逆に、トラックで一旦関東に運んで、そこから成田空港か羽田空港の貨物便で移送する可能性が時間的に見ても一番高いんじゃないかと思ったよ。だから、高速道路の入り口に近いところなんじゃないかと」

 治郎はそう言って、マップを北陸自動車道の入り口に近いところに移動させた。

「なるほど、その線もあるな。だけど、移送する物が金属で重量があるから、飛行機だと一度に大量に運べないんじゃないか」

「ああ、それは俺も考えたけど、物がレアメタルだろ?それほど大量には採掘できてないって気がして飛行機かなって思ったんだよ」

「ああ、それは言えてるかも」

 弘がそう言った時、二人のテーブルの横を高校生らしい女の子の三人組が通ったが、弘は、そのうちの一人の腰のあたりをしばらく見つめていた。

「お前なに見てるんだよ」

 治郎が、ニヤニヤしながら弘に聞いた。

「バカ、違うよ!今の子が腰に付けてたネズミのマスコット、ここんとこ、市内で外回りしててもバッグや服に付けてる女の子をよく見かけるんで、流行ってるのかなと思って」

「ああ、あれか。確かに俺も見るな。流行りなんだろ。名前は分からないけどな」

「俺も名前は知らない。ゆるキャラとかには興味ないしな。大体、俺はネズミが嫌いだからな。ネズミなんて・・・」

 そこで、弘は言葉を切った。

「どうした?」

 治郎は怪訝そうに聞いた。

「そうか!ネズミ男だ!」

 弘は、やや上を見ながら、右手の人差し指を立てて言った。それから治郎に視線を向けて、

「採石場が点在しているのは市の南東側だけど、ネズミ男は真南に向かってた。追いかけながら、こいつらは何の目的でこっちに向かってるんだろうと思ってたんだけど、きっと、移送基地に向かってたんだよ」

「そうか!確かにそれならあいつらが南に向かってた説明がつくな。よし!行ってみるか!」

 治郎がそう言うと、二人同時に立ち上がって手早くレジで精算を済ませると急いで外に出た。

 そして、同時にマシンを発進させると、火曜日にネズミ男と戦った市の南方に向かったが、市街地に近いところだったせいもあり、治郎もスピードを出せないので、今日は弘はおいて行かれずにすんでいた。


 しばらく走ったところで弘は、

(あ、そういえばコーラ飲んでないのにお金だけ払って来た。もったいないなあ)

 と、思った。


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