第11回 “ニョッカー現る”
3台の車は入ってくると右を向いて止まった。
「なんだ?」
「なんだろう?・・・あ!もしかしたらこの場所を所有している会社の人かもしんない!見つかると面倒なことになりそうだから隠れた方がいいな」
そう言うと、治郎は立ち上がった。
弘も立ち上がろうとしたが、つった足がまだ痛くて力が入らず、転びそうになった。
それを治郎が咄嗟に支えて肩を貸し、大きな砂利山の陰の、その一団から見えない位置に移動した。
音をたてないように移動しながらから二人して車の方をうかがっていると、まず、2台のランドクルーザから合計8人の人間が降りて来た
弘が驚いたのは、その8人が、先日、弘が公園で見た一団と同じように、黒ずくめの衣装に真っ黒のプロレスラーの覆面のようなものを被っていたことだった。
「あれは・・・ニョッカーだ。ニョッカーの、1号さんが言うところの『雑兵』だ」
弘はその一団を見つめながら言った。
「なに!?」
治郎は驚いて、一旦弘の方を向いてからその一団に視線を戻した。
それから治郎は、弘を砂利山の陰に座らせると、再び弘の右足のつま先を押しながら、
「あいつらがニョッカーなら、何かの目的でここに来たってことだな。ちょっと様子を見よう」
「ああ、そうだな」
二人が、砂利山の陰からこっそりとその一団の様子を見ていると、メガクルーザーの運転席からもう一人の雑兵が降りてきて右側後部のドアを開けた。
すると、そこから巨体の何かが降りて来た。
その何かは、薄いグレーの硬そうな皮膚に覆われ、長い顔の鼻の部分から太くて先の尖った長めの角が、眉間からは、やはり先の尖った短めの角が生えた見た目で、車から降りて二本の足で立つとあたりをキョロキョロと見回した。
頭全体も薄いグレーの硬そうな皮膚に覆われていて、耳は頭部上部の左右から生えていたが、なぜか顔だけはかなり赤みがかった色をしていた。
その何かは、5、6歩、そびえ立つ崖の方に歩いて行ったが、振り返ると、先に車から降りていた黒ずくめの一団に向かって怒鳴った。
「おい!本当にここで合ってるのか!」
その言葉に反応するかのように、8人の黒ずくめの一団から一人歩み出て来た。
「は!確かにここと聞きました!・・・しかし、稼働状態にあるようには見えませんので、もう一度調べます」
そう言うと、ランドクルーザーの1台の後部トランクのハッチを上げ、その中に上半身を突っ込んだ。
弘と治郎の位置からは、車がほぼ真横を向いていたためトランクルームの中は見えなかったが、体の動きから何か機械を操作しているようだった。
そのまましばらく操作を続けてから再び顔を出し、角の生えた巨体に向かって、
「申し訳ございません!カーナビに入力した住所が誤っていたらしく、少し南側にずれた場所に来てしまったようです!ここは、今は使われていない採石場のようです!」
と、と大きな声で言った。
角の生えた巨体は、
「ばか者!なにをやっとるんだ!」
と、その男に向かって怒鳴ったが、再び崖の方に向き直ると、
「しかし、使われていない場所というのは好都合だな。市街地から結構離れているし、採掘用の横穴があるから、その中を少し整備して拠点にするのは悪くないかもしれん」
と、言った。
それから、その横穴を調べるためか、そちらの方に向かって歩き出した。
9名の雑兵たちもそれに従って歩き始めた。
その様子を無言で見つめていた二人だったが、全員が歩き始めたとこで弘が口を開いた。
「あれは・・・改人だ」
「あれがそうか!確かに、動物と人間が掛け合わされたような感じだな」
それからしばく改人の姿をまじまじと見ていた弘は、改人を見つめたまま言った。
「あれは・・・・・サイだよな?」
「シロサイだな」
「シロサイだ」
「絶滅危惧種なのになんてことだ」
「そうだな。許せないな」
「ところで、なんで顔だけ赤いんだ?」
「わからん。俺が見たのはこれで3体目だが、みんな顔が赤かった」
「なぜかな」
「なぜかな」
「今度1号さんに聞いてみたらどうだ?」
「そうだな」
治郎は、一団を見つめたまま、相変わらず弘の右足のつま先を押していた。
そこで弘は気を引き締めたような声になって言った
「そんなこと言ってる場合じゃない!とにかく、あいつらをやっつけるぞ!もう、足も大丈夫だ」
「え!?いくのか?」
治郎は、弘の右足から手を放し、驚いた顔で言った。
「ああ。他に人もいないから好都合だ。奴らが何を計画しているかわからんが、ここを拠点にされたら俺たちの練習場がなくなるだろ?どっちみち、いつかは戦わなくちゃいけないんだし」
「・・・その通りだな。わかった」
と、治郎は納得したような顔で言ってから、
「よし、じゃあ俺が奴らの注意を引き付けるから、お前は、この砂利山を越えてカッコよく登場してくれ!最初が肝心だからな!」
「わかったけど、お前大丈夫か?」
「大丈夫なようにお前が戦ってくれればいいんだよ」
「ああ、そうか、そうだな。よし!」
「まだうまく戦えないかもしれないが、大きな石も木っ端微塵にするそのスーツの力だ。すでに1体やっつけてるんだし、とにかく、蹴ったり殴ったりすればなんとかなるはずだ」
治郎は真面目な顔で言った。
「う・・・、まあ、やってみる」
少し不安になりながらも、そう言ってから弘は起き上がり、ジャンプするために腰を落として身構えた。
「飛び上がるときに『とうっ!』って言うのと、着地した時の決めポーズを忘れるなよ!」
「わかってるって!」
それから治郎は、砂利山の陰から左に飛び出し、ニョッカーの一団に向かって叫んだ。
「待て、ニョッカー!お前らの思い通りにはさせないぞ!」




