もう一度君に
聞き覚えのある声が聞こえた気がした
まだ月が街を薄暗く照らしている頃
眠っていた僕のすぐ側で
聞こえるはずなんてないのに
君の声なんて
明るくて誰からも好かれる君
料理は苦手で全部僕に任せる君
いつだって僕を引っ張っていった君
君は僕のせいで居なくなってしまったのに
きっと都合のいい幻聴だ
そうに違いない
でも
その、懐かしい声の響きに溢れる涙が止まらなかった
僕にとってなによりも大切だった
相棒
ライバル
親友
君にとってはそんなところだったろう
でも、僕は…
君とは違った感情を抱いていた
それなのに自分の身勝手で君を傷つけて
勝手に君から離れて
君はきっと僕のために行ったんだろう
そして…
ごめんなさい
僕のせいだ
ごめんなさい
君を好きになんてなって
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
『俺も、同じだった』
明るいあの声が聞こえた
さっきよりもずっとはっきりと
大好きな君の声
また目頭が熱くなった
都合のいい幻聴かもしれない
それでも
窓の外の空はもう白み始めていた
朝食にとトーストを焼いた
まるで君が作ったみたいに真っ黒だった
一口かじると、また涙が落ちた
焦げたトーストは、苦いのにやたらと美味しかった