46 治療しよう
~クリスSide~
のぞみさんの指示に従い、私とセチアさんは兵士さんの支援に入ります。
支援といっても、戦闘ではあまり役にたてそうもないので、傷ついた兵士さんの治療のお手伝いをしています。
「あんたの回復薬は効くな……これでまた戦場へ行けるぜ」
「あまり無茶はしないでくださいね」
「おうよ」
その兵士さんは再び戦場へと戻っていきました。
どうやって治療しているのか、というと、私は錬金術で作った薬で、セチアさんは治癒魔法で傷ついた兵士さん達を癒していきます。
もちろん、勝手にやっているわけではなく、衛生兵の指揮官様に話を通してあります。最初にお手伝いを申し出た時には、「本当にできるのか」と怪しまれましたが、セチアさんが「わたし達は巫女なので大丈夫です」の一言で、疑いは晴れたようです。
……私は巫女ではありませんが、いいのでしょうか。
ゴブリンに深手を負わされた兵士さんでも、私の薬とセチアさんの治癒魔法を組み合わせることで、治療ができます。その場合は通常の回復薬ではなく、錬金術で調合した物を使います。すでに何名かに治療を施してしますけれど、薬の効果で「体が軽くなった」と言っています。
私とセチアさんがお手伝いに入った時、怪我をした兵士さんが多くいましたが、彼らの処置を終えた今では、時々担ぎ込まれてくる程度です。
兵士さんに話を聞くと、赤色のドレスのようにも見える、変わった服を着た冒険者の少女と、帽子をかぶった貴族と思われる少女が、ゴブリンを蹴散らしているという話を聞きました。
この話から推察するに、のぞみさんとココさんで間違いないでしょう。
「のぞみさんもココさんも頑張っているみたいですね」
「わたしの愛するのぞみ様は、ゴブリンなんかには負けません!」
前半部分は置いておくとして、セチアさんに同意です。のぞみさんが通常のゴブリンを相手に、苦戦するとは思いません。上位種であれば話は別ですけれど。
その話を聞いてからは、怪我をして撤退してくる兵士が減っていきました。
彼女たちのおかげでゴブリンが減り、砦の防衛が多少楽になったようです。
負傷者の治療が済んで、待機しているところに、新たな負傷者が運び込まれてきました。
「はぁ……はぁ……やっと着きましたの……あとはお願いします、わ……」
背中に気絶しているのぞみさんを背負って、この場所まで来たのはココさんでした。
そのココさんも体力の限界を超えたのか、着くなり倒れてしまいました。
自分達のリーダーでもある、のぞみさんが運び込まれて「まさか!?」と思いましたが、のぞみさんは技能を使用した可能性が高いです。
ココさんは頬に傷があります。のぞみさんは服を斬られていますが、目立った傷はないように見えます。
魔道具を借りて容態を確認してみますと、のぞみさんのHPは約3割、MPに至ってはほぼ0であり、ココさんのHPは5割、MPは8割ですが、のぞみさんを背負ってきた疲労で倒れたようです。
のぞみさんの状態は技能を使った代償と見て間違いないでしょう。
「セチアさんはHPの回復をお願いします。回復薬を飲ませることはできませんから……」
「そうですね。わかりました」
お師匠樣から、気絶している者へ回復薬を使うには「下から注入すればいい」と聞きましたが……それをのぞみさんに行うことはできません。というか、したくないです。
それにMPでしたら、時間が経てば回復しますからね。
「のぞみ樣とココ樣の回復終わりました。お2人とも疲労がありますので、目を覚ますのは少しかかりそうです」
「ありがとうございます、セチアさん」
2人のHPも安全圏まで戻りましたし、目を覚ますことを待ちましょう。
その日の夜遅く、オーク討伐依頼に出ていた冒険者パーティが帰ってきました。
オークの討伐は成功し、翌朝から通行のランク制限が「パーティメンバーの半数がDランク以上」に下げられるそうです。
これにより、私たちでも通行することが可能となります。
と、言いましても、私たちのリーダーでもある、のぞみさんがまだ目を覚まさないので、出発はしばらく無理そうです。
◆
~のぞみSide~
私が目を覚ましたのは、ゴブリンの襲撃から一夜明けた日中だった。
「…………?」
「のぞみさん?気がつきましたのね」
知らない天井が広がり、傍らにはココがいる。
「……ココ?ここはどこなの?」
「ここは砦の医務室ですわ。クリスさんとセチア様が癒してくださいましたの」
自分の状況を確認してみると、技能の影響で減ったHP、MPはほとんど全回復していた。
「……クリスとセチアは?」
「お2人なら、治療した方々の様子を見て回っていますわ。しばらくしたら戻ってくるはずですわ」
「そっか。2人にはお礼を言わないとね。それからココにも」
技能を使った反動で倒れた私を、砦まで運んでくれたのはココ以外にいないと思う。
「お礼なんていりませんわ。のぞみさんの技能で強敵はほぼ全滅でしたもの。残ったゴブリンの中にハイゴブリンが1匹いたと聞きましたが、討伐したらしいですわ」
「そうなの……でも言わせて。ココ、ありがとう」
……あれ?私を運んできたのはココだとしても、私がいた場所は最前線。同じ最前線で戦っていたココも襲われたはずじゃ?
あの状況じゃ全部倒すのは無理だったし。
「私を運んでいる最中に襲われなかった?」
「襲われましたわ」
やっぱり襲われたのね。
どうやって対処したのだろうか。
「だけど問題ありませんわ。ロミさんが手伝ってくださいましたの」
お礼を言う相手が増えた。
『わたしはごしゅじんさまのけんであり、たてでもあるのですから。それにライラさまがでていきそうだったので、わたしがでました』
ライラが出てくるよりはいいかな。ライラの事だから、ずっと見ていたのだろうけど。
『はい、見ていました。のぞみ様、かっこよかったですよ。もちろん今も見ています』
念話が来るのが早い。
それはともかく、ロミちゃんとライラにお礼を伝えた。
「そういえば私の服と鞄はどこに?」
「それでしたら、そこにありますわ」
ココが指差す方向を見ると机があり、その上に鞄と折りたたまれた赤色の衣類があった。
「それにしてもあの服は不思議ですわね。ゴブリンの返り血や傷があったのに、全て消えてなくなってますもの。高価な物であれば、そういった技能がついていたりしますわ。のぞみさんの物は、手触り肌触りともに素晴らしいものですので、ついていそうですわね」
「そうかもしれないね」
実際にはついています。神様から貰ったものだし。
ココとの話がひと段落したところで、コンコンとノックが響いた。
ココがドアを開けると、クリスとセチアが顔を出した。そして、ココに言われて、私が目を覚ました事に気がつくなり、セチアが飛び込んできた。
「のぞみさまぁぁぁ!」
「ふぎゅっ!?」
そのままセチアによって、ベッドに押し倒されてしまった。
「のぞみ様の肌に傷なんて残しておけませんので、念のため確認します!」
「え?ちょっ!?」
私の着ている貫頭衣を胸元まで捲り上げ、直接手で触って確認する。
胸元から下へ、お腹を通り、さらに下へ……って、それ以上はだめだって!
「いだっ!」
思わず手が出てしまった。
心配してくれるのは嬉しいけど、そこに傷はないからね!?




