45 討伐しよう
~のぞみSide~
戦場の最前線は砦の北門からすぐの場所だった。
敵はすべてゴブリンだ。見えていないだけで、ほかにもいるかもしれないけれど。
ゴブリンは2匹から3匹のグループで1人を襲っている。まるで指揮している存在がいるかのよう。まずはそいつを探し出す。
部隊長と思われる兵士から、「好きに動け」と言われているので、好きに動く。さすがにやられて危険な状態になっている兵士は助けるけれど。
ココと手分けして、指揮官と思われる個体を探しながら、ゴブリンを討伐していた時だった。
ガキン!と私の剣を受け止めた個体がいた。
「うぇ?」
そいつもゴブリンだが色が少し違う。通常のゴブリンを緑色だとすれば、この個体はさらに濃い。言わば深緑という感じ。持っている剣も他のゴブリンとは違い、錆び1つ無い。
その個体と目が合う。
そして、私の見た目から女であるとわかり、下衆な笑みを浮かべ、喋った。
「オマエ、オンナ。ボスニケンジョウ。ボス、ヨロコブ」
「されないわよ!」
……喋った!?このゴブリン喋った!
って、今は驚いている場合じゃない。こいつを倒さないと。
『ロミちゃん、刀身に火を』
指示通りに刀身に火が点き、燃え盛る刃となる。
しばらく私の刀とゴブリンの剣がぶつかり合う音が響くが、致命傷を与えられない。
「のぞみさん、助太刀しますわ!」
乱入してきたココがゴブリンに一太刀浴びせる。
「ココ!?」
「ギャウッ!?」
その一太刀を受けたために、隙ができた。
「のぞみさん、今ですわ!」
「ココ、ありがとう。……たあーっ!」
会心の一刀をゴブリンに叩き込む。
その一太刀は胴体を深く斬り裂き、ゴブリンは地に倒れた。
「……ふう……ココ、ありがとう」
「構いませんわ、この程度。ほら、次が来ますわ!」
このゴブリンについて調べたいけど、私達の方によってくる魔物がいるため、放置する。
この死体を鞄に入れる、と言う方法もあったけれどやめた。
自分の鞄の中に死体が入っているなんて嫌だからね。異空間に収納する技能なら入れちゃうけどね。
調べるのはあとでもできるし、今は殲滅が優先事項だ。
さっきみたいなゴブリンがいても大丈夫なように、ココと一緒に動くようにした。
そのせいなのか、襲ってくるゴブリンが増えた。単純に2匹から3匹のグループが2つ同時に。
「普通のゴブリンなら大丈夫よ」
「……ですわっ!」
ココと連携を取りながら、ゴブリンを斬り伏せていく。
余裕が出てきたので、技能を使い周囲にいる魔物を調べる。
その結果、ゴブリンの中にハイゴブリンが混ざっている事がわかった。まだ見てはいないけれど、ホブゴブリンもそのうち出てくるような気がしている。
ハイゴブリンというのはホブゴブリンと同じく、ゴブリンの上位種となる。
ハイゴブリンの体は、通常のゴブリンとほぼ同じ大きさであるが、色が濃く、通常種に比べると頭が良く、片言ながら言葉を話す。上位種なのでその分強いが、先ほどのように倒せなくはない。
ホブゴブリンは前に戦ったので、詳細は省く。
「ガフッ……」
ココと2人がかりでハイゴブリンを討つ。
「かなり倒してますけれど、指揮官らしい魔物は見当たりませんわね」
「そうね……私達2人だけでこれ以上離れるのは危険だし……」
現在私達が戦っている場所は、砦が見える場所であり、クリスとセチアを欠いた状態でこれ以上離れるのは辛い。
砦の方にいるゴブリンも数を減らしているし、戻っても問題点ないと思った時だった。
4匹のハイゴブリンを伴い、一際豪華な武器を持ったゴブリンが私達の前に姿を見せた。
「ワレノブタイ、ダイダゲキ、ワレ、ユルサナイ」
「なによこい……っ!?」
そのゴブリンは私に向かって、剣を横凪ぎに振るう。私は後ろへ飛び、回避する。しかし、飛んだ先を予想していたのか、ハイゴブリンが剣を振り上げ突っ込んできた。
「やばっ!」
「ギヒッ」
そのまま振り下ろされた剣は私の体を正面から斬り裂く。
体に刃は届かなかったけれど、服を帯もろとも、斬り裂かれてしまった。
斬られた帯を拾うにしても、ゴブリンの剣を避けながらなんて私には難しい。拾うことはできたとしても、結んでいる間に捕まってしまう。ちなみに、この服には自動修復の技能がかかっているが、直ぐには直らない。
痴女、とまではいかなくとも(?)、素肌を晒したままで、気持ち悪い笑みを浮かべたゴブリンとこのまま戦う以外にはない。
このまま戦うのは恥ずかしいけど、捕まって犯されるよりはずっといいと頭を切り替える。
ハイゴブリンが2匹ほど見当たらないが、おそらくはココを襲っているのだろう。
「ワレ、オマエラ、ツカマエル。ケンジョウ」
「捕まらないわよ!?」
とりあえず、このゴブリン共は確実に倒す。さっきから私の体をずっと、舐めまわすように見ていて気持ち悪い。
ちなみにさっきから隙を探しては、斬りつけるを繰り返している。こんな格好にされたせいで、剣より手が伸びてくる事が増えているけれど。
「のぞみさん、すみませ……って、なんて格好しているんですの!?」
「ココ!?」
ハイゴブリンをどうにかしたのか、ココが合流を果たした。
「ゴブリンはどうした、の!」
「動きだけ止めてきましたわ……っと」
「ココ、私が倒れたら運んでくれるよね!?」
「当然ですわっ!」
「わかったわ、一掃するからあとよろしく!」
「わかりま……え?」
ココは私が何をするかわかっていないようだけど、返事をしたので、ロミちゃんに指示を飛ばす。
『ロミちゃん、バーストお願い』
『りょうかいです。プロミネンスバースト』
私のHPを対価に、技能が発動する。
もちろん、発動前に神聖力も付与してある。
刀身に灯る火が金色の輝きを放つ火に変わり、MPが攻撃力に加算される。
「その技能は一体なんですの!?」
「ごめんココ、説明は後」
ハイゴブリンは己に向かって振るわれる火の剣を受け止めようとする。しかし、火の剣はその剣を弾き、そのままハイゴブリンを叩き斬る。
ココが動きを止めておいたと思われるハイゴブリンが、私を止めようと襲ってくるが、返り討ちにする。
現在なぜか技能が使用できなくなっているため、正確な名前がわからないが、指揮官ゴブリンを狙う。
「ブカ、コロシタ。ワレ、カタキウツ」
指揮官は私の刀を受け止めるというより、受け流すといった感じであり、有効打を与えられない。魔法すらも使えなくなっているため、目眩ましもできない。
「のぞみさん!私が隙を作りますわ!」
私がどうやって、と聞くまでもなく、ココが盾を構えて突撃を敢行する。
それに気づいた指揮官は、剣を盾で守られていない場所ーー頭めがけ、突き出す。
ココは致命傷を負うことは避けられたが、その剣は頬を浅く傷つけた。それをものともせず、ココは指揮官の顔面に盾を叩きつける。
叩きつけられた指揮官はそのまま、地面に倒される。
「のぞみさん!」
「ココ、ありがとう!でやぁー!」
私は倒された指揮官の首めがけて刀を振り下ろした。




