44 テンガンの砦へ行こう
水浴びを済ませ、荷物番をしてくれている2人のもとへ戻る。
「遅くなってごめんね」
「構いませんわ。次は私とクリスさんですわね。クリスさん、行きますわよ」
2人も私達と同じように、服を枝に引っ掛け、泉へと向かった。
今度は私達2人が荷物番となる。
魔物の襲撃もなく、時間が過ぎていった。
やがて、水浴びをしていた2人が戻ってきた。その腕には泉で泳いでいたと思われる魚が抱えられていた。
「おかえり。で、その魚は?」
「焼いて食べようと思って捕まえてきました。のぞみさん、お願いできますか?」
錬金術で焼き魚は……できないか。火を起こすのは私の仕事だし。
というわけで、今回の朝食のメニューは焼き魚とパンとなった。私としてはご飯が欲しい。
そもそもこの世界にお米ってあるのかな?
考えていたら食べたくなってきた。
「……お米ってどこかで買えないかな……」
「お米ならありますわよ?」
「えっ?」
思わずココを見る。
「お米はアルデバランへ行く途中にある村で栽培してますの。この国唯一の生産地ですわ」
「そこへ行けば買えるかな」
「少々高いですが、買えないことはありませんわ」
お米が買えるなら買うよ?値段次第だけど。
食事を終え、泉を後にする。
まず向かうは『テンガンの砦』だ。
2日後、ようやく『テンガンの砦』が見えてきた。
『テンガンの砦』はテンガン山と言う山の麓にあり、その役割は山に潜む魔物の監視はもちろん、旅人や冒険者達の保護、休憩所にもなっている砦だ。
「テンガンの砦ってあれ?」
「そうですわ。テンガン山の魔物を討伐するための拠点だけでなく、一休みするための設備もありますわ」
砦の入口まで行くと、門番の兵士に呼び止められた。
「君たちは冒険者か?」
「そうだけど……なにかあったの?」
話を聞くと、本来麓にはいないはずの魔物ーーオークの集落が確認されたため、立ち入りを制限しているということだった。
ちなみにオークの強さは個体により差があるものの、弱い個体でもホブゴブリンと同等だという。
砦を通過するためには『単独ならばCランク以上、パーティであれば、メンバー全員がDランク以上であること』、または、『Cランク以上の冒険者の護衛をつけること』の条件をクリアしなくてはならない。
冒険者である私達が、同じ冒険者に護衛を頼む、というわけにもいかない上、セチアがEランクのため、メンバー全員Dランク以上という制限にも引っ掛かる。
つまり、先へ進めない。
「……メイサを早々に出発したのが裏目に出てしまいましたね」
「そうね……」
どうしようか考えていると、門番の方から助け船を出してくれた。
「君たちはメイサから来たんだよな?」
「そうだけど?」
「メイサの冒険者協会にオーク討伐依頼が出されていたのは知ってるか?」
「知らないわ」
朝一番で協会に行って、そのまま出発したようなものだからね。そもそも、私達がメイサにいたのは3日前の話だし、その時は依頼がまだ出ていなかったと思う。
その事を伝えたら納得してくれた。
「そうだったのか……。ならば安全が確保されるまで、砦で休むといい。おい、案内してくるから少し変われ」
兵士は部屋の前まで案内すると、私に鍵を渡し、持ち場へ戻っていった。
部屋は4人部屋と説明されたが、大きめのベッドが2つと、他は机と椅子があるだけだった。
「ひとつ言いたいんだけど……何でこの部屋に案内したのかな」
「わたしたちがそういう関係に見えたのですよ、きっと」
セチア、それはないと思うの。
「たまたま空いていなかっただけなのかも知れませんわ」
ココの意見に賛同する。
でもベッドは2つしかないことには変わりない。簡単なくじ引きでペアを作った結果、私とクリス、ココとセチアのペアで使うことになった。
セチアは私と一緒がよかったみたいだけど、一緒になるとなにされるかわからないから、私としては安心して休める。
そのまま2日が過ぎた。
先に言っておくけれど、2日も何もしなかったわけではないよ。
私は砦にある修練場を借りて、ココを相手に模擬戦を繰り返していた。それを見た砦の兵士たちと、打ち合いをすることになってしまったのは仕方のないことよね。
おかげでいい訓練にもなったし。
クリスは錬金術で道具作りを、セチアは魔法を魔術兵から教わっていた。
そして今日、メイサからの討伐隊が到着する予定だと兵士の男から聞いた。
そして到着したのが彼ら。
「もしかして……のぞみちゃん、よね?」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれ、声がした方向を見ると、見覚えのある女の人がいた。
「……エマ?」
「やっぱりのぞみちゃんね!久しぶり!どうしてこんなところに?」
エマがいると言うことは、トーマ達が依頼を受けた冒険者なのよね。討伐隊って聞いているから、ほかにも依頼を受けた冒険者も来ているはずよね。
その事は置いておいて、彼女に経緯を話す。
「……それはまあ……タイミングが悪かった、というか……。私たちが頑張るから、のぞみちゃん達はゆっくりしててね」
「エマー、いくぞー?」
「のぞみちゃん、それじゃまたね」
彼女は手を振って仲間の元へ去っていった。
私は部屋へ戻り、エマと会ったことをみんなに伝えた。
「エマさんがいると言うことは、トーマさん達とも会う可能性がありますね」
「私トーマって苦手なのよね……」
そんな私の愚痴に対して、クリスは苦笑いで返した。
セチアは誰のことかわかっていないようで、セチアから質問が飛んできた。
「あの……エマ様とトーマ様ってどちら様ですか?」
ココは「聞き覚えがありますわね……」と言っていたが、クリスの一言によって思い出したようで、「私の護衛をしてくださった方々ですわね」と納得していた。
セチアには言葉を選んで説明したのにも関わらず、説明後の第一声が「わたしの敵ですね」だった。
討伐隊の出発を見送ってしばらくしたら、砦の中が騒がしくなってきた。
その後すぐ、一人の兵士が私達の部屋のドアを叩いた。
私がドアを開けると、切羽詰った様子で叫んだ。
「君達、すまないが手を貸してくれ!緊急事態なんだ!」
「わ、わかったわ!」
なんだかわからないけれど、すぐに出られるように準備をしておいてよかった。
「準備ができたら、すぐに山側の門へ行ってくれ!」
山側の門へ行くと、門は開け放たれており、その先で兵士達がゴブリン達と戦闘を繰り広げていた。
「……なんなのよ……これ」
なぜこうなったのかわからないが、状況的にこちら側が押されているようだった。
「休憩部屋にいた冒険者達だな!?報酬はこの程度しか出せないが頼む!手を貸してくれ!」
たまたま持っていたと思われる、銅貨や銀貨の入った袋を投げ渡される。
それを受け取り、念のため持ってきた鞄に放り込む。
「クリスとセチアは兵士さん達を!ココ、ロミちゃん!いくよー!」
「わかりました!」
「わかりましたわ!」
『はい!ごしゅじんさま!』




