43 親睦を深めよう
遅くなりました。
私たちはテンガンの砦へ続く森の中を進んでいる。
「……ココ……あれどう思う?」
「ないと思いますわ。魔物が可哀想なくらい」
少し離れた場所ではセチアがゴブリンを倒していた。
「クリスさん、こんな感じですか?」
「……やり過ぎな気もしますが、ゴブリンですから大丈夫です」
クリスもかなり引いている。
どんな倒し方をしたかと言うと、まず、ゴブリンの股関に向けて棒をフルスイングします。もう一発打ちます。さらに追い打ちでホームランします。股関を押さえて転がるゴブリンに対し、魔法を撃ち込みます。股関に……。
あとは普通に魔法を撃ち込んで倒します。
「……クリス……セチアになんて言ったの?」
「いえ、普通にゴブリンの生態を教えただけですよ?若い女性を拐っては犯して、増殖すると……」
気持ちはわかるけれど、そこまではしない。
「例としてのぞみさんの名前を出したら、ゴブリンは根絶やしにしますって……」
なぜそこで私の名前を出したの。
セチアとは話し合いが必要かもしれないね。
「のぞみ様、近接戦闘もゴブリン程度なら大丈夫です。万が一逃げられても使い物にはなりません」
使い物にならないってなんの話?
「あー……うん。突撃はしないでね?」
「しませんよ。のぞみ様が捕まらない限りは」
ないとは言い切れないため、苦笑いするしかなかった。
「それに……」
顔を染め、耳元で続きを囁く。
「……わたしをめちゃくちゃにしていいのは……のぞみ様だけですから……」
改めて言うが、そんなことした記憶はない。……確信を持てない事が辛いけれど……。
気を取り直して、森を歩く。
「のぞみ様……なんだか視線を感じます」
セチアから報告を受け、警戒を強化してからすぐ、私たちの右側から3匹のゴブリンが出てきた。
しかし、私たちを確認するなり、かなりの速さで引き返していった。
「……なんだったの?」
「のぞみさん、すぐにこの場を離れましょう。彼らが仲間を連れて戻ってくる前に」
「そうですわね。クリスさんの言う通りですわ」
私は理由もわからず、クリスに引っ張られるようにその場を後にした。
セチアもココに引っ張られているから、よくわかっていない様子だ。
「わかっていないみたいなので、説明しますね」
クリスの説明によれば、さっきのゴブリンはこの森のどこかにある集落の一員だと思われ、私たちの存在を伝えるために引き返していったのだそう。通常であれば、倒してしまうのが最良だけれど、森の中を逃げるゴブリンを倒すのは私たちには難しい。
それなら、できるだけ離れて、私たちの痕跡を目立たなくすればいいというわけ。
ゴブリンを見た場所から歩いて数時間。
森の中に泉を見つけた。
水は底が見えるほど透き通っていて、魚の姿も確認できた。
「……ねぇ、この辺りで夜営しない?空も暗くなってきてるし……」
全員から了承が取れたので、鞄からテントを取りだし組み立てる。
新調したテントは前よりも一回り大きく、4人並んで寝転んでも問題はない。
食事はいつも通りクリスが錬金術で作るから、温かく美味しいものが食べられる。
「はふはふ……冒険者のご飯って、質素だと聞いていたのですが……美味しいのですね」
「クリスさんがいるからですわ、セチア様。私だって驚きましたもの」
本来、冒険者のご飯は街で買い込んだ保存食を食べている事が多く、こういった温かい物を食べている冒険者は少ない。
ちなみに現地調達すれば、温かい食べ物にはありつけるが、食べられる魔物や動物、植物を探さなければならず、その分負担もかかる。
「私、朝になったら水浴びしたいと思うけど……みんなは?」
「わたしもご一緒します!」
セチアはそうすると思った。というか、私が「水浴びしたい」と言ったあたりで、口に出していた。
「それでは私も……」
「皆さんが入るのに私だけなんて嫌ですわ」
ココは入るつもりはなかったみたいだけど……1人だけ仲間はずれは嫌みたい。私も嫌だし。
4人分の寝床を準備し、寝ようとした時、セチアが私に訪ねた。
「あの……のぞみ様?夜の見張りは誰がやるのですか?」
あー……セチアにはまだ言っていなかったっけ。
「それは心配ないよ。夜の見張りは私の契約精霊に頼んであるから」
「精霊様、ですか?」
「たぶん外にいると思うよ」
「ありがとうございます。挨拶だけでもしてきます」
その後すぐにセチアが戻ってきた。
「の、のの、のぞみしゃまっ!せ、せい、精霊様……りゃいや様……ねっ??」
「セチア落ち着いて」
セチアが何を言っているのかわからないので、落ち着かせる。
「は、はい、落ち着きますっ!」
「はい、深呼吸」
私と一緒にすー、はー、と深呼吸を行う。
「……どう?」
「……はい。もう大丈夫です……」
落ち着いたセチアは改めて口を開く。
「まさかライラ様がいらっしゃるとは思いませんでした……しかも夜の見張りをさせるなんて……」
本人(?)が私に従うような発言をしたから、頼んでみた結果がこれなんだよね。
「それからもう一人小さな女の子がいましたが……あの子も精霊様なのですか?」
ロミちゃんの事だよね。ライラとロミちゃんについてセチアに話を聞かせた。
ライラについて話をするのと、同時に旅の目的も伝える。
「……世界樹に『生命の雫』を与える旅ですか……」
「世界六大迷宮を攻略……やはり楽しみですわ」
いつのまにかココも聞いていた。
というか、ココには話さなかった?
「聞きましたわ。何度聞いてもワクワクしますの」
ココはメイサの領主家の娘、と言う肩書きを持っている冒険者だ。その母親もかつては冒険者だったと聞いた。
ちなみに馴れ初めまでは聞いていない……いや、聞けなかった。
私の話が済んだところで就寝となった。
ライラとロミちゃんに念話で「今日からまたよろしくね」と声をかけてから、私は眠りについた。
◆
翌朝。
「じゃあ、先に行ってくるね」
私は朝霧の立ちこめる中、泉で水浴びをする。
さすがに4人一緒というのは危険なので、私とセチア、クリスとココのペアで行くことにした。
服を脱ぎ、近くの木の枝に引っかける。流石にパンツやブラを引っかけるわけにはいかないから、鞄に仕舞う。
ちなみにクリスとココは荷物の番をしてくれている。
「……冷たくて気持ちいい……」
「……はい……」
セチアは私のある一点をずっと見ていた。その視線の先には思えば
……私の胸だった。
「……あまり凝視しないでくれる?」
「……ごめんなさい……小ぶりでいいなって思いまして……」
「……そっか」
思わず顔をそらす。私としてはもう少し欲しいと思うけれど、とある技能の効果で成長しなくなってしまった。
ほかはありがたい効果なんだけどね。
「……のぞみ様、お願いがあります」
「なに?」
セチアは躊躇ったのち、遠慮がちにお願いしてきた。
「のぞみ様、触らせてもらってもいいですか?」
「……いいけど?」
私の返答に表情が明るくなる。
「ありがとうございます。それでは、堪能させていただきます」
「……え?」
ん?堪能?
「堪能ってな……きゃー!」
私がセチアに何をされたかは内緒で。
PV数1万超え、ありがとうございます。




