42 巫女様と行こう
朝を迎え、まずは冒険者協会へ向かう。
目的は先日の依頼報酬を貰うことと、セチアの冒険者登録をすることの2つ。
元々、神殿で巫女をしていたセチアにとっては、必要のないものだ。しかし、私に同行するならば持っていてほしい。
……街に入る度にかかる通行料が馬鹿にならない、と言う理由もあったりなかったりする。
「……というわけなんだけど……」
「……わたしが冒険者に……ですか……?のぞみ様がそう言うのであれば……」
そんなわけで私達は冒険者協会にいる。
「ココお嬢様だけでなく、巫女であるセチア様まで仲間に加えるなんて……メイサはどうなってしまうのでしょうか……」
セチアを冒険者登録し、パーティに加える旨を受付嬢に告げたら、街の心配をしていた。
しかし、そこは協会の受付嬢。仕事はしっかりこなす。
「セチア様もこれで冒険者になりました。頑張ってくださいね」
「はい。頑張ります!」
続いて、先日受けた依頼報酬を受け取る。
「……多くない?」
袋にはぎっしりと銀貨がつまっている。
「報酬に加えて、ココお嬢様へリンデルニア家からの支度金も入っています」
「お父様ったら……」
ココの支度金も入っているとなると、受けとるのは躊躇う。
「のぞみさん、受けとりませんの?」
「ココの為のお金でしょ?私たちのお金じゃないし……」
「それでしたら……」
ココが報酬をそのまま受け取り、それをそのまま私に差し出す。
「……どういうこと?」
「私から所属するパーティ『赤青の流れ星』へ寄付ですわ。これなら受け取れますわね?」
そういうことならいいかな。
袋を受け取り、鞄にしまう。
冒険者協会を後にして、セチアの武器を選ぶため武器屋へ行く。
クリスとココとは別行動をとり、足りない物資を調達に行ってもらっている。
主な物資は夜営の道具全般だ。今使用している物は2人から3人向けの物であり、4人で使うとなると少し厳しい。
「セチアは武器持ったことある?」
「ありません。わたしはずっと巫女をしていましたから……魔法でしたら光属性魔法が少しと、回復魔法が使えます。のぞみ様も巫女ですから、同じ後衛ですね」
私が後衛?私には自分と同じくらいの大きさの刀が……あれ?いない?
いつ入れたのか、刀は鞄の中にあった。
取り出すと同時に、念話が飛んできた。
『……ごしゅじんさま……わたしもう、このままかとおもって……』
『ごめんね。ロミちゃん』
あとで慰めてあげないとね。
刀を改めて背中に背負う。
「のぞみ様、それは?」
「私の愛刀で、火属性の精霊刀なの。クリスが杖と道具で、とココは片手剣と盾で戦うのよ」
「……のぞみ様は後衛ではないのですね?」
「そうね……魔法は火属性が使えるけど、前にいる方が多いし」
現状の戦闘スタイルからすると、後衛がクリス1人しかいない。援護が間に合わず、大怪我する可能性もある。私としては、回復魔法を使えるセチアには援護してほしい。
「道具ってどんなのですか?」
道具で戦うって言われてもピンとこないようだ。クリスの戦闘はみないとわからないからね。
「爆弾とか薬かな。他の見たことないし」
そのうち星でも降らすのだろうか。どこかの錬金術師達みたいに……。
今はセチアの武器選びが先だ。
「武器はなにがいい?」
セチアは少し考えて答える。
「そうですね……わたしは杖がいいです」
セチアも杖になるのね。
クリスは杖を持っているけど、あれは杖の形をした棍棒だと思う。近寄ってきた魔物を杖で殴ったり、魔物の股関をフルスイングでホームランしたり……。
「……どうかしましたか?」
「……ごめん、なんでもないからね」
武器屋に着いたので、店内を物色する。
「やっぱり素人じゃ良し悪しはわからないね」
「そうですね……お店の方に相談してみましょう」
店主を呼び、初心者でも使いやすい杖をいくつか持ってきてもらうことにした。
「またせたな。駆け出しにはこいつが丁度いいだろうな」
店主が持ってきてくれた物は、30センチ程の長さがある杖で、装飾は特についていない。
装備すると『魔力が少し上がる』という効果が付与されている。
「手にとってもいい?」
「おう。ほら」
「ありがとうございます」
セチアは店主が見繕ってくれた杖を手に取り、振ったり、回したりして使い心地を確認している。
やがて、セチアは頷いた。
「のぞみ様、これにします!これをください」
店主にお金を渡し、支払いを済ます。
外に出ると、クリスとココが待っていた。
「待たせてごめんね」
「大丈夫ですわ」
「そう?それじゃ、テンガンの砦へ向かおうと思うけれど……ココのお父さんに挨拶はいいの?」
「すでに済ませてありますわ。それと、お父様からのぞみさんに手紙を預かってますわ」
「?」
ココから手紙を受け取る。
手紙は綺麗に包装されており、リンデルニア家の家紋と同じ判が押されていた。
「読んでいい?」
「もちろんですわ」
日陰に移動し、手紙を読む。
そこには『娘をよろしく頼む。なにかあれば我々リンデルニア家が力になろう』と書かれていた。
他にもいろいろ書いてあったけれど、ほとんどがココの事ばかりだった。中には昔の失態とかあって、最後に『ココに見せては駄目』と添えてあった。内容が内容だし……仕方ないよね。
手紙を丁寧に仕舞う。
「それじゃ、出発しよっか」
「そうですわね」
返事をしてくれたのはココだったけど、クリスとセチアも頷いていたので、4人で街の北門を出る。
「セチアは戦うのは初めてだったよね?」
「はい。街から出たことはありませんから」
セチアは巫女としてメイサにいた。巫女としての力は持っているけれど、役目を終えたから私たちについてきている。
ちなみに巫女は処女ではないとならない、というわけではないらしい。極端な話、女性であり、素質があればなれるそうだ。
「ですが、先程言いましたように、初級魔法なら使えます」
「私とココが前衛、クリスとセチアが後衛で何度かやってみようね」
やってみよう、とは言ったけれど、まだ街からそんなに離れていないので、魔物らしい気配はない。
「魔物いませんね……」
「ある程度離れないとだめかな……」
結局、街が見えなくなるまで進んだところでスライムを見つけた。
そのスライムはまだこちらに気づいておらず、ゆっくりずりずりと動いていた。
ちなみに戦うときは、ぴょんぴょん跳ねて移動する。
「あれはセチアが倒してみてね」
「頑張ります」
セチアが前に出て、魔法の詠唱を始めた。
「……光よ、玉となり敵を打て……〈ライトボール〉」
セチアの詠唱に呼応し、魔法が発動する。
光の球体がスライムに向かって飛んでいき、やがて命中した。
スライムはその魔法1発で倒れ、核だけを残して消えた。
「……倒したのですか?」
セチアからしたら、魔法を1回使っただけで倒してしまったから、倒したという実感がないみたい。
「そうよ。スライムには魔法が効くからね」
私はそれを知ったあとで、物理で倒してみたりしていたよね……もうやらないけど。
「魔法が効かない魔物の時はどうしましょう?」
「その時は私かココ、クリスに頼むといいよ」
「わかりました」
杖による近接戦闘はクリスに頼むことにした。
……クリスの教えを受けたセチアがどうなるかなんて、私はまだ知らない。




