41 行き先を決めよう
セチア視点
わたしはメイサの街で巫女をしている、セチアです。
生命樹様からのお告げで「交わりなさい」とありましたが、方法を間違ってしまったのか、わたしの大切なモノまで根こそぎ取られてしまいました。
交わった相手は女性なのですが、その方は『始まりの巫女』と言う肩書きを持っています。
『生命の巫女』と言う巫女がいる事は知られていますが、『始まりの巫女』のと言う存在は伝承の中でしか聞いていません。
先ほど夢の中で、最後のお告げがありました。
最後と言うのは、わたしでが巫女でなくなり、新たな『生命の巫女』が任命されるからです。ただし、巫女として得た力はそのまま使用可能なようです。
お告げの内容は「始まりの巫女様に一生を捧げよ」と言うものでした。
一生を捧げよ、と言われましても……。昨夜の事を考えたら「お嫁さんになる」のが一番ですね。
同姓婚はこの国では認められていませんが、他の国では可能という話を聞いたことがあります。
わたしの大切なモノを盗った責任、のぞみ様に取ってもらいますからね。
◆
翌日……目を覚ますと既に明るかった。
隣にはセチアがすやすやと眠っている。私もセチアも全裸であり、2人の服や下着は布団の端にあった。
とりあえずそれらを回収し、昨日なにがあったか思い出してみる。
まず、寝ようとしたらセチアが寝床に入り込んできて……キスされて……それから……。その後は覚えていないけど、状況的には確実にアウト。
……いや、女性同士だしこれは数えなくていいのかな。
1人で悶々としていたら、セチアが目を覚ましもそもそと体を起こす。
体を起こしたため、セチアの裸体が目にはいる。
「……おはようございます……のぞみ様……」
「……うん……おはよう……」
起き上がり、いつもの着物ドレスへ着替える。セチアは巫女服を身に纏う。
セチアが用意してくれた朝食を食べ、神殿と言う名の神社を出る。
私の一歩後ろにはセチアもついてきている。
「……なんでセチアもついて来るの?」
立ち止まり、後ろを歩いてくるセチアに問いかける。
「……わたしから誘ったとは言え、のぞみ様はわたしの『初』を全部持っていったのですよ?このまま、どこまでもご一緒させていただきます」
……本当に何したの?私。
セチアがついてくるとなれば、この街から『生命の巫女』がいなくなるけど……それは大丈夫なのかな。
『のぞみ様、ご心配なさらず。数日以内に新たな巫女か選ばれるはずです。現巫女であるセチアがしっかり管理してくださったので、よほどの事がない限りは大丈夫でございます』
ライラからの念話により、大丈夫だと知った。
心配はしてたけど、なんでわかったの?……もしかして精霊ってエスパーなの?ライラだけ?
『強い精霊であれば、契約者が考えている事はわかります。常に見ているわけではありませんが……』
頭の中を常に見られていては、たまったものじゃない。
最初から知っていたら契約なんてしないし。
クリスを迎えにココのお宅へ向かう。
ココに加えて、セチアも旅に同行することになったなんて言ったらどうなるのかな。
ココのお宅に向かう途中、巫女であるセチアが一緒にいるため、ちょっとした騒ぎになった以外は、無事着いた。
もちろん、お邪魔する時も聞かれたけれど、ココへのお客様と言うことにしてもらった。
本当の事なんて言えないからね。
使用人に連れられ、クリスがいる部屋の近くまで行く。
「この先にクリス様とココお嬢様がいらっしゃいます。ココお嬢様の指示により、私はここまでとなります」
ココの指示と言っていたけど、原因はクリスの錬金術だと思う。
時々爆発してるの見るし……。
案内してくれた使用人にお礼を行って、その部屋に向かう。
「……セチア……大丈夫だと思うけど、なにを見てもいいように心の準備だけはしておいてね」
部屋の前まで来たので、セチアにそう伝え、ドアを開く。
「…………」
ドア開けて目に入った光景は、一心不乱に何かをゴリゴリと擦り潰しているココと、大きな釜をかき混ぜているクリスの姿だった。
「……のぞみ様?彼女たちはいったい何を……?」
「クリスは錬金術が使えるのよ。何を作っているのはわからないけど……」
クリスはわかるけど、ココは手伝い?
しばらく黙って見ていたら、ようやく私達に気がついた。
「あっ……のぞみさん、お帰りなさい。そちらは……巫女様ですわね。……って、巫女様!?」
勢いよく立ち上がったため、その拍子に椅子がガタン!と音を立てて倒れた。
その音に反応して、クリスは手を止めることなく、振り返る。
「戻ってきていたのですね。もうすぐ終わりますので……待っていてくださいね。ココさんはそれを終わらせてください」
「う……まだやるんですの?」
なに?クリスはココに手伝わせてるの?
「それで終わりですから。よろしくお願いしますね」
「むう……わかりましたわ」
倒した椅子を直し、しぶしぶ作業を再開するココ。
ココはリンデルニア家のお嬢様なんだけど……もしかして手伝うとか言ったのかな。
その後作業が終了したのは、日が傾き始めた頃だった。
今日のうちに冒険者協会に行きたかったけれど、諦めよう。
セチアの事も話さないとならないし。
その日の夜。
「次の目的地についてだけど、北にあるテンガンの砦を通って、防衛都市アルデバランに行く事にしたの」
「テンガンの砦に、防衛都市アルデバランですか……」
「テンガンの砦はともかく、防衛都市はかなり遠いですわよ?それに魔物が潜む山を越える必要がありますわ」
え?そんなに遠いの?
「砦までは2日、砦から防衛都市までは7日ってところですわ。私達3人では……」
ここでセチアが話に入ってくる。
「……4人ですよ。皆さん」
「4人ですか?」
「4人ですの?」
クリスとココの声が語尾を除いて重なる。
この場にいるのはセチア含めて4人。
つまり、その言葉が何を示すのか。2人はすぐに気づいた。
「巫女様も同行なんですの!?」
「はい。生命の巫女、セチアでございます。のぞみ様の従者になります」
「!?」
2人とも驚き、私を見る。
私は2人から目を逸らす。
「セチアさん……でしたよね?後でお話をしましょう。のぞみさんについて……」
クリスの雰囲気はいつも通りだけど、目は笑っていないし、背後にはなんだか黒いモノが見えるのは気のせい……だよね。
ココは何か察したのか、哀れみを込めて私を見ていた。
きっと私がいない間になにかあったのだろう。
クリスとセチアが部屋から出ていき、ココと二人きりになった。
そこでココが口を開いた。
「のぞみさん……クリスさんを敵にまわしてはいけませんわ……」
それはなんとなく思う。大人しい人ほど怖いって聞くし。
今は魔法で倒しているゴブリンだけど、最初は杖で殴り殺していたっけ……ゴブリンの股間を思いきり殴ってから……。
しばらくしてから、クリスとセチアが戻ってきた。
2人の顔色は対照的で、クリスは楽しみができたかのように無邪気な顔で、セチアは恥ずかしい事でもあったのか、頬を染めていた。
何を話したのかは、聞いてはいけない気がした。




