40 巫女様と会おう
先週は迷宮の執筆に時間を使いすぎました。
「こちらが討伐に対する報酬です。達成報酬は現地の確認が済み次第、お渡しします」
討伐した魔物の確認が済み、魔物の討伐報酬を貰う。
「達成報酬は2日後には貰えるみたいだから、それまではこの街にいようか」
「そうですね」
となれば、宿探しになるね。
今回の宿はクリスの希望により、『ある程度の広さの庭をもつ宿』
となる。
はたしてそんな宿あるのだろうか。
「のぞみさん、宿なんて探さず、私の家に泊まっていくといいですわ」
「……いいの?」
「もちろんですわ。一泊も二泊も変わりませんもの」
今回もココのお宅にお世話になることになった。
食事を頂き、ゆっくりしているところにドアをコンコンと叩く音が響く。
なにかと思いドアを開けると、使用人であるミトさんがいた。
「のぞみ様方にお客様です」
私はココの両親以外に名乗った覚えはないし、お客が来る理由がわからない。
「のぞみさん……何かしました?」
「した記憶はないけど……」
ミトさんに連れられ、その『お客様』に会いにいく。
一緒の部屋にいたクリスも、もちろん一緒だ。
「あなたが『始まりの巫女』様……なのです?」
部屋に入った私を見るなり、こんなことを言い出した。
「……え?」
思わず聞き返してしまった。
旅をしている私の事をどうやって知ったのか、なぜ領主様のお宅に泊まっている事を知ったのか、いろいろ疑問があったけれど、『始まりの巫女』と言う言葉が出た瞬間、全部飛んでいってしまった。
この事実を知っているのは、クリスを除けば、最初の街の冒険者協会にいる、受付のお姉さんだけだ。
その事実を見破った『お客様』は、15歳前後だと思われる、赤と白の衣装ーー動きやすく改造されているが、巫女服に近いものーーに身を包んだ少女だった。
少女は「あっ!」と気づくと、慌てた様子で謝る。
「す、すみませんでした!わたしはメイサの巫女、正式には『生命の巫女』セチアです」
『生命の巫女』について確認しておこう。
『生命の巫女』とは生命樹を維持する少女の事である。『始まりの巫女』との違いは、維持する存在の違いである。
前者は世界に複数存在すると言われている生命樹を維持するため、その数だけいる。
「メイサの巫女様が訪ねてきたって本当ですの!?」
「ひゃあ!?」
ココがバタバタとやって来て声をあげた。
セチアさんがびびってるよ。
「お嬢様、お静かにしてください」
ミトさんにたしなめられ、ココは静かになる。
そして、ミトさんに部屋の外へつれていかれた。
「……で、セチア様はなぜここにいらっしゃったのですか?」
メイサの街の巫女だから、敬語を使ってみる。
「わたしにそんな言葉遣いはいりません。いつもの調子でいいですよ」
「じゃあそうするね」
「はい。わたしが貴女様を訪ねた理由ですが、夢の中で生命樹様からお告げがありました。断片的ではありましたが、始まりの巫女様に『世界樹の羅針盤』を与えなさい、と。それと……わたしと…………てくださいませんか?」
セチアは顔を赤らめ、ボソボソと呟いた。
きっと私に向けて言ったのだろうけれど、大事な部分が聞き取れなかった。
「……え?」
『世界樹の羅針盤』も気になるけれど、こっちの方が気になる。
もう一度聞き返すと、恥ずかしそうにしながらも、私にしか聞こえないように囁いた。
「その……わたしと……とある儀式を行ってくださいませんか?」
「…………え?」
……儀式?私と?
「どんな儀式なの?」
よくわからなかったので、改めて聞くもセチアは顔を染めたまま黙っている。
一緒に来ているクリスを見るも、聞こえていなかったようで、頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「と、とにかく!明日、メイサの神殿でお待ちしています!できれば巫女様1人でお願いします!」
セチアは無理矢理話を切り上げると、そのまま出ていってしまった。
そういえば、私名乗っていないけど……。
翌日。
神殿の場所を聞き、そこへと向かった。
セチアの要求通り、私1人で。ちなみにクリスは錬金術でいろいろ作るらしく、私が保管しておいた素材を全て置いてきている。
ココはクリスの手伝いをすると張り切っていた。
神殿はメイサの住宅街を抜けた先にあり、神殿と言うよりも立派な神社のようだ。
赤色の鳥居をくぐり抜け、手水舎で手を清め、参道を歩く。奥には立派な本殿が見えていて、その手前にある拝殿には鈴とお賽銭箱があり………って、どうみても日本の神社だよね。
まずお賽銭を入れ、二礼二拍手一礼で参拝。
丁度終えたところに、左手にある社務所からセチアがやってきた。
セチアの服装は昨日と変わらず巫女服だ。
「お待ちしておりました、始まりの巫女様」
「始まりの巫女様はやめて。私はのぞみって言うのよ」
「のぞみ様、ですね」
挨拶もそこそこに社務所へ通される。
社務所は住居も兼用されているらしく、綺麗に片付けられているが、生活感が漂う空間だ。
「のぞみ様、参拝ありがとうございました。生命樹様もお喜びになられています」
いつから見ていたのかな。
それはともかく、神社だったら参拝するよね。お邪魔しますって。
「それでは本題に入らせていただきます。まずはこちら、『世界樹の羅針盤』からお渡しいたします」
差し出された『世界樹の羅針盤』を受けとる。
「ありがとね。これの使い方ってわかる?」
「いえ……わたしには……。先代巫女様が仰るには、『始まりの巫女』様ならわかると……」
もしかして、専用道具なのかな。そうだとしたら納得できるのだけど。
羅針盤を観察していたら、淡く光っている箇所があった。そこを指先で触れてみる。その瞬間、頭の中に風景が浮かび上がってきた。
「これは…………丘陵?……風を纏う大きな狼……空飛ぶ蜥蜴……空色の葉を繁らせる大きな木に……牛?」
大きな木はたぶん世界樹だろう。映像からでも他とは明らかに違う雰囲気を感じた。
空に関するものが多いことから、この立派な木は『風の世界樹』とみて間違いはないはず。
それにしても『牛』って……。
「なにか見えましたか?」
「え?あ……うん」
見えた風景を伝えると、セチアには心当たりがあるようだった。
「メイサの北側から出て数日いきますと、テンガンの砦があります。その先はアルデバラン領となっていますが、その領内にあるエルナト大迷宮が風の大迷宮と言われています。もしかたら、風の世界樹はそこにあるかもしれません」
今まで世界樹に関する手がかりすらなかったけれど、『世界樹の羅針盤』が必要になるなら、納得できる。
というか、ライラは持っていなかったのかな。
『申し訳ありません。私は精霊なのでそのような道具を使わずとも世界樹へ行けますので……』
そうだったのね。
ちなみに人間でも霊体であれば、ライラと一緒に行けるらしい。ただし、行けるだけであり、世界樹に『生命の雫』を与えるといった行為はできない。霊体であっても『生命の雫』は出せるが、霊体では効果がなく、効果を与えるには実際に出向く他ない。
セチアから渡された『世界樹の羅針盤』を仕舞う。
最初に「まずは」って、言っていたからほかにもありそう。
セチアを見ると、すー、はー、すー、はー……と深呼吸をし、決意した様子で切り出した。
「のぞみ様、わたしと儀式を行ってもらえませんか?」
「……いいけど……どうやって?」
「……今晩はここに泊まって行ってください。他の方々には既に話を通してあります」
そういうことならば、甘えさせてもらうことにする。
その日の夜……。
「……え……一緒に寝るの?」
「はい。不束者ですが……セチアをよろしくおねがいします」
訳もわからず肯定の返事を返して、私がなにをするのか聞く前に、セチアの口によって口を塞がれていた。
私はそのまま押し倒されて……夜は更けていく。
後にこれが儀式だと知った。




