36 領主家からの依頼を受けよう
模擬戦が終わり、控え室に戻った。
「……負けてしまったのは悔しいですけど、課題も見えてきました。接近戦闘にも慣れていきたいです」
クリスには後衛を頼みたいから、あまり前に出てこないでほしいなと思う。でも私が対応できない時もあるから、多少は慣れておいた方がいい。
「それなら今度、私と練習してみる?」
「はい!よろしくお願いします」
クリスが元気に返事を返す。
扉をノックする音が響き、扉を開ける。
「失礼しますわ。」
ココが使用人と共に入ってくる。
その使用人はクリスの相手をしてくれたミトさんだ。
「のぞみさん、模擬戦楽しかったですわ。そっちの貴女もなかなか強くて驚きましたもの。お2人とも私と歩くのに相応しいですわ」
「……ありがとう?でいいのかな」
どう返せばいいのか困る言い方をしないでほしい。負けてしまったのに、絶賛されたクリスも困っている。
「お嬢様、本題を」
「わかっていますわ。まずは我が家へ」
ココとミトさんに連れられ、協会を後にした。
そのまま領主邸へと向かった。
領主邸に着くなり、ガルディさんと話をすることになった。
「まず言わせてくれ。娘と俺の我儘を聞いてくれて感謝する」
「私からもお礼を言わせていただきますわ。ありがとう」
「それが条件みたいなものでしょ?構わないわよ」
「そうだったな」
ガルディさんは姿勢を正し、真面目な声で切り出した。
「この街の南に《宝石の洞穴》と呼ばれる場所があるのは知っているか?」
私は頷く。
「そこにやっかいな魔物が出るようになってな……お前達でその魔物を討伐できないだろうか」
「どんな魔物なの?」
魔物の種類にもよるが、できるなら討伐してあげたい。
《宝石の洞穴》はクリスが行ってみたいと言っていたし……。
「アンデッドって知ってるか?」
ゴーストとかゾンビみたいなものよね、きっと。
「なんとなく」
「そのアンデッドだ。アンデッドの一種にスケルトンという魔物がいる。洞窟に出たのは剣を持ったスケルトンの集団だ。もちろん協会にも依頼票は貼ってあるのだが……受ける冒険者がいなくてな」
スケルトン……本か何かで見た記憶がある。骸骨の戦士のはずだ。
「そういったアンデッド族は、光属性や神聖な力に弱いのだが……そんな力を持っている者はなかなかいなくてな……。この街の巫女様に頼むわけにもいかず困っているのだ」
……この案件、私に出なさいと言っている気がしてならないのだけど……クリスは私なら受けるだろうと思っているみたいだし。
それに巫女は神殿の管轄になるため、頼もうにもとてもお金がかかるらしい。
「のぞみさん、私との模擬戦、光属性魔法使っていらしたわね?」
はい、使っていました。模擬戦では使っていないけど、神聖な力も使えます。両方同時使用もできます。
「それなら是非頼みたいが……どうだろうか」
《宝石の洞穴》にはどっちにしても行くから、受ける事にする。
「わかったわ。無理だったら逃げるからね」
「助かる。それじゃ頼む」
「ココは留守番してる?」
「冗談はおやめになって、私もご一緒しますわ」
その言葉に驚いたのはガルディさんだった。
「待て、ココ。せめてこの仕事だけは休め」
「お断りしますわ。私と(わたくし)はのぞみさん方とご一緒することに決めましたもの」
「それはわかっているが……」
ココの目を見たガルディさんがため息をついて、諦めたように言った。
「……今から出ても着くのは日が沈む頃だ。お前達も昨日に続き、ここに泊まっていくといい」
「……それじゃ、お世話になります」
おずおずと言った感じでクリスがガルディさんに声をかけた。
「すみません、お願いしたいことがありまして……」
クリスのお願い事というのは、錬金術を行える場所を貸してほしいとの事だった。
ガルディさんは錬金術の説明を聞いて、興味を持ったようで「見てみたい」と言い出し、クリスが実演することになった。
失敗したら爆発する可能性もあるため、庭を使う許可を得た。もちろん、実演も庭でだ。
クリスの調合は無事成功し、効果の高い回復薬が出来上がった。その後、ガルディさんとココもやってみたいと言い出した為、体験させてみたものの、結果はやはり爆発だった。
クリスが錬金術で作った道具は以下の通り。新作もあるため、効果も一緒に。
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・回復薬
・魔力回復薬
・水の秘薬
服用するとHPが回復し、一定時間魔法攻撃力が上がる。
・生命の秘薬
のぞみが魔力を込めた水を材料に使ったところ、できてしまった物。
飲むとHPが中回復し、一定時間の自動回復効果が付く。
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回復薬に魔力回復薬、新作の道具が2種類ね。
どちらもHPが回復するのは同じ。水の秘薬は一時的に魔法攻撃力が上がり、生命の秘薬は一時的ながら自動回復効果が付くのね。
……生命の秘薬の説明については何も聞かないで。
庭の片付けをして、今晩泊まる部屋に案内してもらった。昨日泊めてもらった部屋とは違う部屋だ。なお、案内してくれた使用人は「夕食ができましたらお呼びいたします」と言って出ていった。
夕食の席にて、明日の行動が決まった。
朝一で冒険者協会へ行き、ココをパーティに加え、さっきガルディさんが言っていた依頼を受注し、その足で《宝石の洞穴》へと向かう。
なお、パーティリーダーは私が務めることになった。パーティとしての名称も決まり、《赤青の流れ星》となった。
翌朝、ココを連れて冒険者協会へ入る。
昨日の模擬戦が広まっているらしく、私たちは注目の的だった。
「お前とココお嬢様の決闘凄かったな。引き分けるなんてよ!」
「ひゃあっ!!」
いきなり体の大きな男の冒険者に声をかけられ、ビックリしてしまった。
「おう、わりぃ……」
その冒険者は周りの女性冒険者から視線を向けられ小さくなっていた。
「コ、ココも強かったから……」
私は気にしてない、と装いつつも言葉を返すが、きっとバレているよね。
「……ココお嬢様を呼び捨てとは……認められたんだな」
認められた……?
「なに不思議そうな顔してんだよ。認められた、ということはお嬢様とパーティになれるんだぞ!?もっと喜べ!」
「そ、そうよね」
私が男だったら背中をバンバンされていたよね、きっと。
その冒険者は離れていったが、そもそも、この協会にココを呼び捨てできる人っているの?
「のぞみさん、行きませんか?」
「あ、うん」
クリスに引っ張られ、受付へ向かう。
「パーティメンバーに追加と、この依頼の受けたいんだけど……」
「わかりました。追加メンバー様はどちらですか?」
「私ですわ」
ステータスカードを受け取った受付の女性は一瞬驚いた表情を見せた。
「し、失礼しました。少々お待ちを」
パーティ登録と依頼受注処理をしてもらい、私達《赤青の流れ星》は《宝石の洞穴》へと向った。




