34 お嬢様とお友達になろう??
遅くなりました。
ちょっと忙しかったのです。
とても遅いですが、6月6日にプロローグのような話を第一話として、投稿しております。
メイサの街はココの実家である、リンデルニア家が治める街だ。街の南には宝石が採取できる採石場があり、そこで取れる宝石類が主な収入源となっている。
馬車は街の入口となる通用門を通り抜け、中心部にある広場に止まった。
「そこの建物が冒険者協会ですわ。私は一度帰りますが、後程ヴァルターを迎えに行かせますので、皆さんは冒険者協会で待っていてください」
「わかったわ」
馬車を見送り、ヴァルターさんが迎えに来るまで、冒険者協会で待つことにする。
「まさか俺たちがリンデルニア家のお嬢様の護衛をするとは思わなかったな」
「そうよね……のぞみちゃん達は何かと戦っていたの?」
「ウルフの群れよ。全部で9匹のね。ビッグウルフが2匹いたけど、なんとかしたわ」
「……9匹の群れを2人で?」
「ココも戦ってくれたから3人ね」
一拍置いて、エマが口を開く。
「のぞみちゃん、ビッグウルフ2匹いたら逃げるのが普通よ?私達のような低ランク冒険者は」
そうなの?知らなかった。
「だけどさ、ホブゴブリンを単独で倒したのぞみちゃんなら、できそうだね」
「そういえばそうね」
それで納得しないでほしい。ホブゴブリンはあの技がなければ勝てなかった。
ビッグスライムまで倒せたのは、たまたま運がよかっただけ。
「お待たせいたしました。のぞみ様、トーマ様、我が主人ガルディ様とココお嬢様がお待ちでございます。馬車へお乗りください」
ヴァルターさんが私達にそう言った途端、騒がしかった周囲が時間が止まったかのように静かになった。
「え、なんなの?」
「領主が冒険者を呼び出すなんて、滅多にない事だからね?」
日本に例えるなら、県知事に個人が呼び出されたってところかな。滅多にないどころか、あり得ない話よね。
周囲の視線を感じながら、冒険者協会を出る。
「俺、緊張しすぎてどうにかなりそうなんだけど」
「私もよ」
トーマの意見にエマも賛同し、無口なマナも緊張しているようだ。
ヴァルターさんの操る馬車に揺られ、領主邸の門をくぐった。
「お客様方、到着でございます」
ヴァルターさんにお礼を言い、馬車を降りる。
「のぞみ様、我が家へようこそ。こっちでお父様がお待ちですわ」
ココが直々に出迎えてくれた。彼女が身に付けている衣類は、一目見ただけでも良いものだとわかる服を着ていた。ココの先導で領主様であり、ココのお父様でもある、ガルディさんの私室へ向かう。
普通こういった事は、その家に使える使用人がすることであって、ココがやることではないと思う。
そして、ある一室の前で立ち止まり、扉をノックする。
「お父様、ココですわ。のぞみ様方をお連れしましたわ」
中から入室の許可が下り、中へはいる。
中の様子は広めの執務室という感じで、部屋全体が綺麗に片付いていて、清潔感がある。
部屋の奥にある机には、三十代後半くらいの男性が座っていた。
恐らくこの人が領主のガルディさんなのだろう。
ガルディさんが私達の前までやってくる。
「よく来てくれた。まずは礼を言わせてほしい。我が娘、ココを助けてくれてありがとう」
そう言ってガルディさんは頭を下げた。
ガルディさんの横に移動していたココも一緒に頭を下げる。
領主様って凄く偉そうにしてるイメージなんだけど、こんな人もいるのかと感心していた。
私の横ではクリスを筆頭に、あわあわしていた。
私がなにか言わないと頭を上げそうにない。
「いいから頭を上げてください」
それを聞いて2人は頭を上げた。
「俺領主様が頭を下げるところなんて初めて見た」
「大切な我が娘を助けてもらったのだ。領主と言えど、子を持つ親だ。礼を伝えるのは当然だろう」
トーマの漏らした感想に、当然の事だと返すガルディさん。
「のぞみ、と言ったか。いつも通りの口調でよい」
「クリス、貴女もですわ」
「……じゃあ、そうするね」
クリスはいつも丁寧に話すから、口調は変わらないけれど、なんとなく、緊張が取れた気がする。
「お前達は今晩の宿はあるのか?」
「これから探すところよ」
「そうか……ヴァルター!」
ガルディさんはヴァルターさんを呼び、指示を出した。ヴァルターさんが部屋を後にすると、私達に向き直った。
「お前達3人はパーティだったな。お前達の宿はこちらで手配しておく。ココの護衛の報酬金は冒険者協会で受け取ってくれ」
「ありがとうございます、領主様」
エマがお礼を伝えた。
本当はパーティリーダーであるトーマがやるべき事なのだろうけど……。
「のぞみとクリスは……」
「この家に泊まっていってほしいのです。私、お2人に興味がありますの」
「……そういうことだ。どうだ?」
どうだ、と聞かれたら「よろしくお願いします」と答える他ないでしょう?
「皆様、お食事の用意が整いました。食堂へお越しください」
「俺達も?」
「もちろんでございます」
トーマ達の分も用意していたらしく、3人は喜んでいた。
食事を終えるとトーマ達とは別行動となる。彼らは手配してくれた宿へ、私達はガルディさんから話があると言われ、ガルディさんの執務室へ通された。そこにはココの姿もある。
「呼び出してすまない。ココの事なのだが……」
「お父様、私からお話致しますの。のぞみ様とクリス様は旅をしているのですよね?」
「そうだけど……」
「その旅に私もご一緒したいのです」
ご一緒したい。私としては嬉しいのだけれど……。
私が返答に困っていると、ガルディさんが口を出す。
「のぞみ、そしてクリスよ。俺が言うのもおかしいと思うが、ココはある程度戦闘もできる。昔からココは外の世界を見て回りたいとも言っていた。そんな時にお前達に助けられたと聞いた。旅をするなら、のぞみとクリスと行きたい、と言うココ本人の希望もあって、お前達に話をしたわけだが……どうだろうか?」
「……少しだけ時間をちょうだい」
クリスと話をした結果、連れていくことになった。
私達はココという仲間が増えて嬉しいし、ココは旅ができる。
お互いに損することはないだろうしね。
「感謝しますわ、のぞみ様。もう1つお願い事がございますの」
一呼吸置いて、彼女の口から出たのはこの言葉だった。
「私達と模擬戦をしてくださる?」
「…………はい?」
聞き間違いかと思って、ココを見るけれど、もう一度言われてしまった。
ガルディさんに視線を向けると、説明してくれた。
「これは俺からの条件でもある。娘を預ける事になるお前達2人の実力を見ておきたい。のぞみの相手はココが、クリスは家の使用人が相手をする」
「……特に勝つ必要はないでしょ?」
「もちろんだ。ただし、ココには本気でやるように言っておくがな」
私の答えは決まっている
「いいわ、受けてあげる。クリスはどうするの?」
「……受けます。のぞみさんが受けるのならば」
悩みながらも模擬戦を受けてくれた。
「すまない。場所は冒険者協会の訓練場を借りておく。今日は我が家でゆっくり休むと良い」
私達と、ココとリンデルニア家の使用人により模擬戦が決まった。
ルールはまだ聞いていないけれど、どうなるのだろうか。




