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和ロリな少女は異世界を旅する  作者: ほずみ
本編
28/48

30 ベラト迷宮を突破しよう(その3)

戦闘が難しいのです。

 ~クリス視点~


 のぞみさんがホブゴブリンに潰されそうになっていますが、私の方もそれどころではありません。

 ビッグスライムの体当たりはトーマさんが受け止めてくれていますが、時おり近寄ってくるスライムやゴブリンは私が止めています。

 スライムは物理攻撃が効きにくく、水属性以外の魔法、特に火属性魔法で攻めるのが良いとされています。

 水属性魔法は通常のスライムでしたら効かないことはありませんが、上位種には水属性魔法を吸収してしまう種類もいます。今回のビッグスライムは迷宮ダンジョンで発生したためか、水属性魔法が通じません。

 私が使える魔法が水属性のみなので、ビッグスライムに対してはなにもできません。できるとしたら、クラフトを投げつけることですが……持っている数が少ないです。

 のぞみさんはビッグスライムを叩き斬って倒していましたが、あれはおそらく、火属性を纏っていたからでしょう。

 火属性はスライムの弱点ですからね。


「のぞみちゃん、どのくらい耐えられる!?」

「長くは無理っ!」


 のぞみさんはホブゴブリンの振り下ろされる棍棒に刀をぶつけ、軌道を逸らす事で避けていますが、長くは持たなそうです。


「くそっ……のぞみちゃんがいれば……」


 トーマさんがそんな言葉を漏らしていますが、のぞみさんはホブゴブリンを抑えているため、手を貸すことができません。

 スライムの弱点である火属性の力を使えるのは、のぞみさんだけなのです。


「ウィンドカッター!」


 エマさんの風属性魔法がビッグスライムの体を削っていきます。


「クリスちゃんだったよね!?あのトゲトゲボールまだある!?」


 クラフトの事ですね……四つあります。


「それを合図したら投げて!場所はマナの矢と同じ!」

「わかりました」


 エマさんの風属性魔法と、マナさんの矢が近い場所に当たり、少しずつビッグスライムの体を削っていきます。


「クリスちゃん!今!」

「はい!……えいっ!」


 私が投げた二つのうち一つは、放物線を描き二人が削ってできた場所に吸い込まれるように入ります。もう一つはその近くに沈んでいきます。


「ぷぎっ!!」


 そして、二つが爆発し核にダメージを与えます。

 これでもまだビッグスライムは倒れません。

 スライムに目があるのかすらわかりませんが、私を睨み付けているような感じがします。


「まだ倒れないなんて……もう一度やるわよ。クリスちゃん、まだある?」

「あと二つあります!」


 私の返答にエマさんが頷き、さっきと同じ要領でと言って、風魔法を発動させる準備に入ります。


 刀身に輝く金色の火を灯し、金色の火の粉を散らす刀を持ったのぞみさんが現れたのは。


 ◆ 


 さっきは根性で受け止めて弾き飛ばしたけど、これは不味い状況だ。

 体が痛い上に、二発目の棍棒が降ってきたのを受け止めたところだ。

 上から物凄い力がかかっていて、弾き飛ばすなんて無理。体が痛いのは、魔力を多く使って無理矢理弾き飛ばした影響だろう。

 同じことをあと一回か二回はできそうだけど、やったらきっと動けなくなる。

 どうすればいい?

 ライラに頼る?それはまだ早い。生命樹の精霊の名前は誰でも知っている。そして同じ名前を持つ精霊はいないと言う。ロミちゃんは私が名付けたからわからないけど……。

 ライラは最終手段だ。

 今できることをしよう。そうしないと潰される。


『ロミちゃん、体は大丈夫?』

『わたしはだいじょうぶです。ご主人様のほうがしんぱいです』

『大丈夫よ……なんとかするから……』


 両手で握っていた刀から右手を開き、火属性魔法の《ファイアーボール》をホブゴブリンの顔めがけて放つ。


「ギャ!?」


 怯んで棍棒が浮いた隙に抜け出し、そのまま一太刀いれる。

 体が大きい分防御が固く、たいしたダメージにはならなかったようだ。


「グギギ……」


 一太刀いれたことで怒らせてしまったらしく、その怒りに任せて棍棒を私に叩きつけようと振り下す。

 受け止めてしまえばまた私が不利になってしまうので、今度は避ける。

 振り下ろされた巨大な棍棒はそのまま地面にドゴン!と音を立ててぶつかり、その周囲の石が大きく跳ねた。

 あれを受けたあとの事は考えないようにしよう。


『ご主人様!!あぶないっ!』


 え?と思ったときには既に遅かった。


「っ!!」


 横から巨大な棍棒がすぐ迫っている。その棍棒は吸い込まれるように私の脇腹へ当たり、そのまま吹っ飛ばされた。


「ぐぅ……あ……」

「ご主人様!だいじょうぶですか!?」


 ロミちゃんが心配して出てきていた。……実体化して。

 とても大丈夫じゃない。意識はあるけど、痛くて声が出せない。むしろ動けない。

どこかの骨が折られたのだろう。


「ロミ、ちゃん……」

「ご主人様っ!ご主人様っ!」


 大粒の涙を流すロミちゃんにごめんなさいと、心の中で謝り、意識を手放そうとしたときだった。


「リザレクション」


 優しい金色の光に包まれ、痛みが引いていく。

 何が起きているのか、目を開くと金色の髪の毛が見えた。


「のぞみ様、周りの事などお気になさらず、私をお呼びください。私はのぞみ様の……貴女の契約精霊なのですから」


 いつの間にかライラが来ていた。

 ライラは私の横、直接地べたに腰を下ろしていた。


「ライラ……ありがとう……」

「ご主人様!」


 ロミちゃんが泣きながら、私に抱きついてくる。


「……ご主人、様が……もう、もどって……えぐっ、こないかと……うわーん!」


 その小さな体を抱きしめる。

 ライラもその光景を微笑ましくみている。


「ロミちゃん、泣くのはあとにしよ?」

「あぅ……」


 そう、ライラの後ろにはホブゴブリンがいるのだ。

 ホブゴブリンは私が生きている事を感じていたのか、私に止めを刺そうと追いかけてきたようだ。

 だが、ライラが張ったであろうドーム状の防御魔法はびくともせず、それに巨大な棍棒をガンガン殴りつけているだけとなっている。


「……さっきからうるさいあれ……ライラは倒せる?」

「はい。お任せ下さい、と言いたいのですが……のぞみ様、神聖力と《プロミネンスバースト》という技能スキルを併用してみてください。そうすれば倒せます」


 なんだかわからないけど、ライラがそう言うのならやってみよう。

 私はそう決めて、武器であるロミちゃんに伝える。


「……ぶきであるわたしのひっさつスキルです。ご主人様のさいだいHPの50%と、いまある魔力(MP)すべてをだいしょうにはつどうする技能スキルです。魔力(MP)をつかいきるため、つかったあとはきをうしないますが……」

「……その影響で減ったHPって、回復薬ポーションとかで回復できるよね?」

「もちろんです」


 できなかったら使いたくない。それに代償が馬鹿にできない。使ったら気絶するとか。一人じゃ使えない技能スキルだ。

 だけど、今はライラもいてくれる。

 ホブゴブリンと決着をつけるため、その技能スキルを使用することを決めた。

 戦いが始まったら、実体化を解くようにロミちゃんに伝えたけど、「さっきみたいなことがあったらいやです!」と、嫌がられてしまったが、刀も使えるから問題はない。

 まずは神聖力を刀に纏わせ、続いて技能スキル《プロミネンスバースト》を発動。

 刀身全体に金色に輝く火が灯され、金色の火の粉が舞う。

 

 それを確認したライラが防御魔法を解除し、私はホブゴブリンに突撃する。


『HPはさいしょにけずられますが、技能スキルは魔力(MP)が0になるまで、つねにはつどうしています。魔力(MP)が0になったしゅんかん、だいしょうがおそいますのできをつけてください』


 ロミちゃんの念話に返事はしなかったが、わかったとばかり頷く。

 ホブゴブリンの懐へ潜り込み、刀で斬り裂く。

 代償が大きい分威力も高く、ホブゴブリンに大きなダメージを与えた。流石に一発じゃ倒れず、二度三度と何度も斬った。


「これで……終われ―っ!!」


 渾身の力を込めて振るった一撃は、急所を斬り裂き、ホブゴブリンの活動を止めるに至った。

 魔力(MP)はもうすぐ0となるが、まだ猶予がある。

 急いでクリス達の元へ戻ると、ビッグスライムはまだ健在だった。

 申し訳ないと思いながら、私は刀を左側に構え、最前で戦っているトーマに向かって叫ぶ。


「トーマ!どいて!」


 私の声が聞こえたのか、トーマが後ろへ下がってできたスペースに飛び込み、刀でビッグスライムの核ごと斬り裂いた。

 その直後に魔力(MP)が0になり、そのまま意識が遠退いていった。 

 薄れゆく意識の中、私を呼ぶクリスの声だけが聞こえていた。

のぞみ(気絶中)

クリス?「……のぞみさんいい匂いです」

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