28 ベラト迷宮を突破しよう(その1)
翌朝、ベラト北門。
「クリス……遅くまで錬金術使ってたけど……大丈夫?」
クリスは笑って「大丈夫です」と言うけれど、なんだか心配になる。
私とクリスはトーマ達のパーティ『風の悪戯』に入った。彼らと共にベラト迷宮を攻略するのが目的となる。攻略後、私達は彼らと別れ、クリスと二人で王都ベテルを目指す。
この話は彼らにしてあり、承諾も貰ってある。
「ごめん!遅れた」
最初に走ってやって来たのはトーマだ。『風の悪戯』のリーダーである剣士。装備は剣と丸い形の盾を持っている。
「は、走らなくても……まだ間に合うって、言ったのに……」
残りの二人――エマとマナも息を切らせやってきた。
エマは魔術師であり、片手で持てる小さな杖を持ち、マントを羽織っている。
マナは背丈と同じくらいの弓を持っている。防具は胸当てくらいしかない。
「可愛い二人を待たせるわけにはいかないだろうが」
「トーマはそれを誰にでも言っているでしょ!昨日も私に向かって言っていたじゃない……ベッドの上で……」
最後の方は小さくて聞き取れなかったけど、なんとなく三人の関係がわかった気がする。エマは顔がほんのり紅色だし、マナはなんだかショックを受けてるように見えるし……。
私とクリスはその場から少し離れることにした。
しばらくして戻ると、トーマの顔には綺麗な手形が付いていた。
「変な所見せちゃったね。それじゃ、迷宮へ行こうか」
トーマをリーダーとし、隊列を組んで進む。途中の分かれ道を右へ曲がり、しばらく進むと迷宮の入り口らしき洞窟が見えてきた。
洞窟の回りは柵がしてあり、出入り口には協会の腕章を付けた兵士が二人立っている。そのすぐそばには兵士達の詰所があり、いつ迷宮に異変が起きてもいいように備えてあった。
見張りの兵士にステータスカードを掲示し、私達は迷宮内へと入る。
「……ここって洞窟……なのよね?」
「そのはず……ですよ?」
洞窟に入ってすぐ、階段を降りただけなのに、私達は草原に立っていた。
私もクリスも状況が理解できていない。空は青く、白い雲が風に流され、お日様が輝いている。
改めて伝えるが、洞窟にある階段を降りていたのにも関わらず、私達は草原に立っていた。
「これがダンジョン!洞窟の中のはずなのに、もはや外と同じ環境!いざ、攻略開始っ!」
「トーマ!そんな大声あげたら魔物が……」
マナが矢を構え、静かに放つ。
「魔物、来た」
「マナありがとう!のぞみちゃん、いくよっ!ほかの皆は援護で!」
いきなりちゃん付けしないでほしい。寒気がする。
文句言いたいけど、まずは魔物をなんとかしなくては。トーマが魔物へ突撃していったのを追いかけ、私も参戦する。
「スライムね……せいっ!」
相棒で斬りかかる……が、スライムは自身の形を変え、私の攻撃から核を守る。
「嘘でしょ……」
『ご主人様、ひをふよします!』
ロミちゃんそんなことできたっけ?そんなことを思いながらも、『お願い』と伝える。
火属性が付与されたらしく、刀身が熱を帯び始め、やがて火の粉が舞う。そのことを確認し、もう一度スライムを斬る。
今回も核を捕らえられなかったが、さっきとは違いスライムは火に包まれ絶命し、核だけが残った。
スライムは八匹ほどいたが、援護のお陰で全て討伐した。
「……のぞみちゃん、その武器って《魔剣》?」
「……え~と……」
返答に困っていると、クリスと《風の悪戯》のメンバーがこちらへやってきた。
「トーマ?どうしたの?」
「のぞみちゃんの武器が気になってね……」
トーマが私の武器に視線を向けたまま、エマに伝えた。
「冒険者の秘密だそうよ。触るのも駄目だって」
「そうなのか……」
そこへクリスが近づいてきて、私だけに聞こえる声で尋ねてきた。
「のぞみさんのレベルが上がった為に、ロミちゃんに出来ることが増えたのではないですか?」
「……そうかも……あとで確認してみる」
思い当たるとしたらレベルアップによる、技能の追加以外にはない。
とにかく、私の武器の事は置いておいて、このまま進むことを提案してみる。
「そうだね……このまま進もうか」
「それから、これをあなたに渡しておくわ。迷宮羅針盤よ。私達は既に持っているからね」
迷宮羅針盤を受け取った。
迷宮羅針盤の見た目は、方位磁石とほとんど変わらないが、赤色、青色、黄色と三色の針がある。迷宮羅針盤の見方は、赤色の針が階層主の居場所を、青色の針が下り階段を、黄色の針が非常階段――第一層へ向かう階段を指している。現在の羅針盤は赤色と黄色の針が静止状態にあり、青色の針は回り続けている。赤色の針が静止している、つまり、階層主が存在している限り、青色の針は止まらない。逆に青色の針が静止していれば、赤色の針は回り続ける事になる。
ちなみに階層主は倒されると二十四時間後に復活するらしい。
迷宮羅針盤を頼りに進み、やがて第一層の階層主を見つけた。大きな水色の物体――おそらくはスライム。
「あれが第一層階層主だ。さぁ皆、武器を取って!討伐するよ!」
「先制……いきます……!」
こちらに気づいていないビッグスライムに対し、マナが矢による先制攻撃を仕掛ける。その矢はビッグスライムに当たるが、体に弾力がありすぎるのか、矢が跳ね返ってしまいダメージになっていない。
「むう……」
「次は私よ!風よ、切り裂け!ウィンドカッター!」
次は風の刃がビッグスライムを襲う。
「ぷにっ!?」
さすがに魔法は効いたらしく、私達を敵と定め、ビッグスライムが襲ってきた。
「試作品ですが、使いますっ!」
「えっ!?なにそれ!」
クリスがトゲだらけの球体をビッグスライムに投げつける。その球体は重さがあるのか、跳ね返らず突き刺さり、ビッグスライムの体内へ沈んでいく。そして内部で爆発。
流石にそれを脅威と感じたのか、内部に残ったものを体を震わせ排出。クリスに向かって体当たりをしようと跳び跳ねているが、巨体のため動きが遅い。
「のぞみちゃん、スライムは火に弱いからさっきのをよろしく!エマはのぞみちゃんの手助けを!」
「「わかったわ!」」
エマの風魔法でビッグスライムの体を削りとる。
『ロミちゃん、さっきのよろしく!』
『わかりました!ご主人様!』
私は火魔法をジャンプのアシストに使って飛び上がり、ビッグスライムの上を取る。そして、そのまま火属性を付与した刀を叩きつけた。
その結果、ビッグスライムは倒され、残ったのはスライムの破片だけとなった。
「……ふぅ」
「のぞみちゃん、お疲れ。いいもの見せてもらったよ」
「???」
何のことかわからない私は首を傾げる。
「赤いスカートの奥に見える、綺麗な足と白い……ふべらっ!!」
「忘れろぉーーー!!」
思わず私は平手打ちをしていた。バチーンとそれはそれはいい音が響いた。
そんなトーマに対して、エマ達は呆れている様子だった。
その後、私達は第二層を突破し、第三層へ足を踏み入れた。第二層の階層主は第一層と同じく、ビックスライムだった。
のぞみ「スカートの下に何か欲しいな……」




