27 パーティに入れてもらおう
遅くなりました。
ミンタカの街を出て四日後の朝、私達はベラトの街についた。
スムーズに行けば二日で行けるはずの道のりを、四日もかかったのには理由がある。
今はもう痛みもないが、私の怪我の治療の為に一日、ベラトの街の近くで錬金術の素材採取に熱中してしまい、気がついた時には門が閉じられてしまっていた。
その為、街の近くの森の中で野営を行い、翌朝まで待ってから街へ入った。
「やっと街に入れた……」
「ごめんなさい……私が熱中してしまったばかりに……」
「いいものがたくさんあったんでしょ?」
「はい」
最初は申し訳なさそうな表情をしていたが、今はとてもいい顔をしている。
野営中はクリスに助けられているので、このくらいはどうってことない。
「まずは冒険者協会へ行きましょ」
「そうですね」
「……場所知ってる?」
「いえ……ごめんなさい」
街の名前は知っていても、来たことないなら知らないよね。
街往く人に冒険者協会の場所を聞いて、協会へとやってきた。
中に入ると視線がこちらに向く。中にはちらっと私を見て、もう一度見る者もいた。
「のぞみさん……見られてますよ?」
「わかってる。この服装のせいよね」
私の服装はこの世界にはどう考えてもなさそうな物だから、視線が集まって当然と言えば当然ね。
中の様子はミンタカにある協会と違い、食事処も併設されていて、とても賑わっている。
迷宮が近くにあるためか、武器を装備した冒険者の数が多く、今は朝だというのに、ビールのようなお酒を飲んでいる冒険者もいる。
視線が突き刺さる中、受付まで行く。
「いらっしゃい。要件は?」
受付はお姉さんではなく、どちらかというとおばさんだった。
ミンタカの受付嬢とだいぶ違う対応だけど、ここは異世界だから、場所によって教育が違うと考えたほうがよさそう。
それは置いておいて、要件を伝える。
「私達はミンタカから来たのだけど、途中で倒した魔物の素材や魔石を売りたいの」
「それなら、向こうのカウンターだよ」
受付が指す方向にはカウンターがあり、そこで品物の売買をしているのが見えた。
「もうひとついい?」
「なんだい?」
「迷宮に入りたいのだけど、制限とかってあるの?」
ランク制限があったら、私達は迷宮に入ることができない。
「ないよ。冒険者登録をしてあれば、ステータスカードの掲示だけで入れるからね」
「わかったわ、ありがとう」
「あんたたちは二人パーティかい?もしそうなら、あんたたちで人数増やすか、パーティメンバー募集している冒険者に入れてもらうかした方がいいよ。二人で行くのは厳しいからね」
忠告をもらったのでお礼を言って、売買カウンターへ向かう。
受付のおばさんが伝えておいてくれたのか、買取はスムーズに進んでいった。
最後にお金を受け取り、無事に終わった。
となると次は、仲間をどうするか、という問題になる。
戦闘中の基本的な役割として、私が前に出て攻撃、クリスが魔法で援護となるが、現状ではクリスも前に出てきて戦っている。
後ろにライラを呼んでおいて、必要になったら援護を頼む形となっている。
刀であるロミちゃんは私が手に持っているため、人数には入れない方がいいかもしれない。
ライラは伝説上の存在になってしまっているから、クリス以外にはあまり知られたくない。ライラの事を知っているのは、ミンタカの受付嬢であるリノさんだけとなる。
ステータスカードは名前やランク等を除き全て非表示にしてある。
「クリス、仲間についてだけど……募集しているパーティを探してみない?」
「そうですね……そうしましょうか」
依頼板とは別に、仲間募集用の掲示板があった。これはミンタカの協会にはなかった設備だ。
その掲示板に貼られた求人の中で、よさそうな求人をみつけた。
募集は二名で、前衛と後衛が一名ずつ。私は剣も魔法もできるので、私が前衛、クリスが後衛で応募してみることにした。
◆
求人に書いてあった場所に行くと、私と同じくらいの年齢だと思われる少年一人と、少女二人がいた。
「すみません、パーティ募集の貼り紙を見て来たのですが……」
「おぉ……女の子が二人も。俺のお嫁さんになっふげっ!」
「違うでしょ!」
少年は少女にスパーンと頭を叩かれ、崩れ落ちる。
「トーマが失礼しました。私はエマ、こっちがマナ。三人パーティを組んでいます」
自己紹介を済ませ、簡単な面接を行う。
結論から言ってしまうと、私達は彼らのパーティでお世話になることになった。エマに叩かれたトーマがリーダーで剣士、エマが魔法、マナが弓を使う。
「のぞみさんだったわね。武器は背中に背負っている、その大きな剣であってる?」
エマさんが剣(刀)を指して聞いた。
「魔法も使えるけど、メインはこっちです」
「そうなの?その剣、見せてもらってもいい?」
私はいいけれど、これはロミちゃんに聞いてみよう。刀はロミちゃんそのものだから。
『ロミちゃん、どう?』
『いやです!……ですがご主人様がどうしても、というのでしたら……』
即答だった。だけど、私次第なのね。
どうしようかと迷っていたら、エマさんが口を開いた。
「見せられないならいいのよ?冒険者の武器は生命線なんだから」
「エマさん、ありがとう」
「エマでいいわよ。それからいつも通りの口調でいいわ。なんだか堅苦しいもの」
「そう?じゃあ、そうさせてもらうね」
私の次はクリスとなる。
「あなたがクリスさんね。武器は持っていないように見えるけど……」
「杖を持っていますよ。今はしまってありますが……」
「それから食事の準備は任せてって、言っていたけど……」
「私の趣味なんですよ」
私も食事の準備はクリスに全て任せてしまっている。私がしている事は食材調達と、食器の準備くらい。
調理中の不思議な光景は……もう見慣れたから驚かない。
話し合いの結果、戦いの陣営も決まった。私とトーマが前衛、クリス、エマ、マナが後衛となり、前衛の援護をする形になった。
迷宮へ出撃するのは、明日の朝からということになり、今日はその準備をすることになった。
迷宮についての基本情報はエマから教えてもらった。
迷宮入り口の階段を降りた先が第一層となり、階段を降りるごとに第二層、第三層と数字が増えていく。
階段は常に出現しているわけではなく、どこかにいる階層主を倒せば出現する仕組みであり、出現する場所も何箇所かある中から、ランダムで出現する。
階層主と階段を探す為の道具は、迷宮羅針盤と言い、迷宮内で簡単に手に入れることができる。
この道具は、世界中にあるどの迷宮でも共通して使えるが、外では使用不能になる。それでも冒険者であれば、多くの人が持っている物だそうだ。
迷宮内から地上へ戻る方法は三つあり、一つは五層ごとにある安全地帯と呼ばれる場所にある、転移魔法陣に乗る事。二つ目は迷宮羅針盤を使い、上りの階段を探す事。三つ目は迷宮羅針盤を破壊する事だ。一つ目の方法に限り、第五層の転移魔法陣から再スタートを切ることができるが、二つ目と三つ目は実質最初からやり直しとなる。
迷宮羅針盤は迷宮内で見つかるから除外するとして、薬と食料だ。薬はクリスが錬金術で作ってくれているから問題無い。一番の問題は食料だ。
私の鞄の中には鶏や狼の肉がかなり入っているが、傷んでいるのでそろそろ捨てようかと思っている。
食料をどうしようかと考えていたら、薬を作りながらも説明してくれた。
「のぞみさん、鞄の中に鶏や狼が入っていましたよね?言い方は良くないかもしれませんが、多少食材が傷んでいても、魔力を使っている錬金術なら問題ありません。新鮮なものよりも味が落ちてしまいますが、そのあたりは私の魔力で何とかなりますので」
「……本当に大丈夫なの?それ……」
ものすごく不安なんだけど……。
「大丈夫です。私を信じてください」
さんざん錬金術で作られたご飯を食べてきたんだから、今更信じるも何もないよね。
食べ物は傷む前に食べましょう。
のぞみ「……ごめんなさい」




