26 隣街へ行こう(二日目)
食後のんびりしているときに、クリスに呼ばれる。
「のぞみさん、怪我の具合はどうですか?」
「痛みは消えたから大丈夫よ」
痛みは消えたけど、傷自体はまだ消えていない。
「そうですか?患部の様子を見たいのですが……いいですか?念のため、他の場所も……」
他の場所に傷がないか、確認したいのかな。と思い許可を出した。
「それでは失礼します」
ぺたぺたと私の腰回りを触っていたが、やがてクリスの手が止まる。そして、困った顔で私を見上げる。
「……これって、どうすれば?」
「あ……」
私が着ている服は、ワンピースがベースになっていて、胴回りは飾り帯で締められている。
治療してもらった時は、自動修復が働く前だったから、切られた隙間から患部が見えていた。しかし、今は自動修復が働き、綺麗な状態となっていて隙間など無い。
テントに入る前に呼んでおいたライラに「見張りをよろしく」と伝え、帯を外す。
帯を外したところで、クリスに声をかけようと見たら、彼女は私を凝視していた。
「クリス?」
一回呼んでも返事がない。
「……クリスちゃん?」
今度はちゃん付けで呼んでみる。返事がないので、頬を突っついてみる。
「……のぞみさん?」
「クリス、大丈夫?」
「あ、はい」
服を捲り上げて、患部を見てもらう。
ワンピースなので、下半身は丸見えになるけど、クリスなら構わない。既にいろいろ見てるし、見られてる。
「どう?」
「……治るのやたら早くないですか?」
「クリスの回復薬が効いたからじゃないかな」
不思議そうな顔をしているけど、私は特になにもしていない。
私は服を直し、外した帯を締め直す。帯を締めるって、一人じゃできなそうだけど、なぜかできてしまった。できてしまった、と言うより、自動的に締まった、が正しい。
話題を変えるべく、私は新たな話を切り出す。
「今日の事でわかったけど、二体以上相手するのはまだ無理よね」
「私が前に出れば多少はできそうですが……私に出来るのは杖で殴る程度です。剣もありませんし、それに、私が援護できなくなりますので、そちらはライラ様に頼むことになりますけど……」
「そっか……じゃあ、ライラに聞いてみるね」
外で見張りをしてもらっているライラに、念話を飛ばし、今の話を伝えた。
『言ってくだされば、その通りに行動いたします。私の主人はのぞみ様なのですよ?』
これは「私に従う」と言っているようなものよね……きっと。
ライラの返答を伝え、明日からの「魔物と遭遇した時の対応」について話をした。
魔物と遭遇したら、私とクリスの二人でその魔物を倒す。私かクリスのどちらかがダメージをうけて、明らかに不利になった時は、ライラに倒してもらう。
そして、数が多いときは逃げる。もし、逃げられなかったらライラに頼む。
……見事なまでにライラ任せになっちゃったわね。
打ち合わせも終わり、そろそろ寝ようと思う。
テントの中で毛布を被り、横になる。なったのだけど、クリスがやたら近い。
「……クリス……近くない?」
「……だめですか?」
ダメじゃないけど……寝顔を見られるのは恥ずかしい。
狭いテントの中だから仕方ないのかな。
「……ううん。おやすみ、クリス」
「はい。おやすみなさい、のぞみさん」
見張りをかって出てくれた、ロミちゃんとライラに念話で『朝までお願いします』と伝え、私は目を閉じた。
◆
翌朝目が覚めると、クリスの顔が目の前にあった。
びっくりしたけどクリスはまだ眠っているので、大きな声は出せない。起こすのも悪いし。
私は起こさないように、起き上がろうとしたけど、それができなかった。なぜかと思えば、クリスが私に抱きついていた。
私を抱き枕かなにかと勘違いしているのかな。
それにしても……なんて幸せそうな寝顔なのか。
ライラとロミちゃんが見張りをしてくれているものの、いつ魔物に襲われても不思議じゃないのに……。
見張りをしてくれている二人に念話を飛ばす。
『二人ともおはよう。なんともなかった?』
『のぞみ様、おはようございます』
『ご主人様、おはようございます。なにもありませんでした』
『』
二人からの報告を聞いていたら、クリスが起きたようだ。
「のぞみさん……おはようございま……す!?」
私の顔が目の前にあって驚いているね。私も驚いたから。
「クリスおはよう。それとごちそうさま」
「……ごち?」
なんの事か理解していないので、わかりやすく教えてあげた。可愛らしい寝顔をありがとうって。
そう伝えたら、顔を真っ赤にしてポカポカ叩かれた。
クリスを宥め、顔を洗う。そのあと朝食を食べ、私達の寝床となっているテントを片付ける。
「それじゃ、出発しよっか」
「はい」
この頃にはクリスの機嫌も直っていた。
森を抜けるのに約一日かかると言うが、私達はまだ森にすら入っていない。このペースだと森の中でもう一泊することになりそうだ。
魔物に襲われた場合は、昨日話をしたようにする。
途中、草原でスライムに襲われたけれど、私とクリスで撃破。
スライムは物理攻撃も効くには効くが、火属性魔法の方が素早く倒せた。なお、物理で倒したのはクリスだ。
ひたすら殴り続けて、倒した頃には相当疲れていた。
「スライムは……のぞみさん……お願い、します」
疲れた様子で言った。
見ていられなかったので、回復魔法をかけてあげた。
◆
やがて私たちは森に入った。
「森と言うより、樹海ね……」
「この森はベラト大森林と呼ばれています。この道から外れると非常に迷いやすく危険です。その分錬金術の素材は豊富にありますが……」
「クリス……よく知ってるね」
「錬金術師にとっては宝の山ですから」
クリスは錬金術師だった。
最近錬金術を使っているところを見ていないから忘れてた。
突如、クリスが叫ぶ。
「のぞみさん、ゴブリンです!」
私達の前に出てきたゴブリンは既に戦闘体制だった。
棍棒を振り上げ、襲ってくる!
「ウォーターボール!」
クリスは水魔法をゴブリンの顔に向けて放ち、その陰に隠れるようにして走り出す。
魔法がゴブリンに命中して、一瞬怯んだところに杖の一撃を入れた。
「のぞみさん、お願いします!」
「わかったわ!ていやぁっ!」
刀を横薙ぎに振り、ゴブリンを真っ二つに斬る。
その時に断面が見えてしまい、気分が悪くなったが、今は我慢しなきゃ。
この後、クリスが魔石を取り出す方法を見せてもらった――もとい、やらされて吐いたのだけど。
ふつう、十七歳の女の子があんなのやらさられたら吐くでしょ?
……え?吐かない?それはその子がおかしいのよ!
二日目は森という場所柄、ゴブリンとの戦闘が多く大変だったけれど、無事に野営地を見つけることができた。
ちなみに魔石の回収はクリスがやってくれた。
私はもう二度とやらないからねっ!
のぞみ「クリス、魔石の確保よろしくね?」
クリス「のぞみさん、教えますのでやってみましょう?ね?」
の「…………え?(ナイフを持たせれる)」
終了後……
のぞみ「……ごめん、無理……うぷっ」




