14 魔法を知ろう(その1)
私が『不老』の効果に落ち込んでいたら、クリスに慰められた。
「のぞみさん、『不老』というものは、全女性の憧れの1つなんですよ?」
それは言われなくてもわかる。
私も嬉しいけれど……欲を言えば、もう少し欲しい。
……なにがって?胸のことよ!
……おきてしまった事はどうにもならないから、もういいか。
「……のぞみ様、お話よろしいですか?」
「ごめん、大丈夫」
「それではお話させていただきます。私達精霊と契約したことにより、『始まりの祝福』と呼ばれる加護が与えられ、『念話』という技能が使えるようになりました。『不老』という技能もその一部です」
新しく使えるようになった『念話』という技能について。
これがどのような技能なのか、すぐにわかった。
突如、頭の中にライラの声が響いたからだ。
《のぞみ様、聞こえますか?ライラです》
「ライラ?」
声が頭の中で響く。
「……これが念話?」
「はい。一言で済ませるならば、声に出さず会話ができる技能です。剣の中に隠れている精霊も使えるはずですよ」
その言葉に従い、ロミちゃんに語りかける。
「ロミちゃん、聞こえたら返事して?」
剣の中にいるロミちゃんにも使えた。
《のぞみ様、口に出す必要はありません。心で話をしたい相手を思い浮かべて、言葉を届けるようにしてみてください》
心にライラとロミちゃんを思い浮かべて、話しかける。
《ライラ、ロミちゃん、2人とも聞こえる?》
《はい。お上手ですよ、のぞみ様》
《はい。……ラ……ライラさま!?》
念話を送ることに成功したが、ライラがいる事を知ったロミちゃんが、すごく取り乱しているのがわかる。
ロミちゃんを落ち着かせ、私とライラが契約したことを話した。
その事実を聞いたロミちゃんは、《わ、わたしなんかが……ライラさまとならぶなんて……》と、言葉を漏らしていた。
「のぞみ様にはもう1つ特典がありまして、『始まりの世界樹』のある場所『生命の聖域』へ、いつでも転移する事ができるようになります」
生命の聖域は、ライラの支配する場所だ。正確な場所は聞いていないが、この世界のどこかにあるのだと思う。
「転移魔法なんて……のぞみさん凄いじゃないですか!」
私はどう凄いのか、いまいちわからないけれど、クリスが驚いていた。
「……そうなの?」
私は魔法の使い方なんて知らない。鑑定で見た自分の技能欄には、火属性魔法と光属性魔法の2つがあるけれど、どう使えばいいかわからない。
そもそも、使う機会なんて今のところないし。
「はい。転移魔法の発動には、大量の魔力を使います。それこそ、私が転移魔法を発動しようとしても、魔力不足で発動できない程です」
ちなみに転移魔法を発動させるには、魔力に自信がある人間を数人使い、人間1人を転移させるのが精一杯だとか……。
そこにライラから注釈が入る。
「いえ、のぞみ様はこの場所への転移に限り、魔力消費はほぼありません」
「え?なんで?」
「のぞみ様は私と契約している『始まりの巫女』です。それに『始まりの世界樹』に『生命の雫』を与えましたよね。あの木にはのぞみ様の情報が混ざっていますから」
私の情報が生命樹に渡っている?『生命の雫』って世界樹の栄養分じゃないの?
私が精製する『生命の雫』について、もう少し詳しく聞くことにする。
「詳しく、ですか?」
「そう。私の情報とか、特に」
「……わかりました。それでは説明させていただきます」
その結果『生命の雫』はとんでもない代物だった。
まず、世界樹の栄養分であることは事実だ。世界樹以外の植物にも使え、1滴与えるだけで過程をすっ飛ばして、実をつける。
次に、クリスが作る薬の素材にした場合は、薬の効果が跳ね上がる。下級回復薬であれば、中級回復薬と同等、またはそれ以上になるらしい。
クリスが「試してみたい」と言っているが、保留にした。
最後に『生命の雫』は言ってしまえば、万物の子種だ。
私が人間の女性の体内に仕込めば、私を父親とした子どもが産まれる。人間だけでなく、動物や魔物の雌でも可能という話だ。
ちなみに自分自身に仕込むことはできないが、私自身は動物や魔物、果てはドラゴンまでも宿せるそうだ。
なお、頼まれたとしても、そんなことするつもりはない。
襲われないように気をつけなくては……。
そして、この『生命の雫』が必要になる儀式もあった。
私のパートナーとなる『生命の巫女』の体内に、直接『生命の雫』を注ぐというものだ。
詳細は教えてくれなかったけれど、既にその相手は世界のどこかにいるらしい。
話がだいぶ逸れたので、本題に戻る。
「ライラ……魔力消費がほぼ無い理由は……」
「それは簡単ですよ。生命の聖域は私の力の一部です」
言うなれば、この場所自体もライラの力の一部であり、契約により、私にも利用する権利があるということだ。
クリスにその権利はないが、私と一緒にいる限り、恩恵は受けることができる。
「魔力消費の時に聞けばよかったけれど……魔法ってどうやって使うの?」
私が疑問を口にしたら、クリスが「え?今ごろ?」とでも言いたげな顔で私を見ている。
「クリス……なんて顔してるの?」
「すみません、のぞみさんは異世界から来たんでしたね」
どうやら忘れていたらしい。
私だって、戻れるなら戻りたいとは思うけれど、この世界でもなんとかなるかなって思い始めている。
「魔法の使い方については、私からお話しします」
ライラの魔法講義が始まった。
まず魔法には火・水・風・土・光・闇の6属性魔法に、治癒魔法と神聖魔法を加えた、8つの種類を基本としている。
この8つ以外にも、魔法属性はあるが、今は置いておく。
魔法を使う為には、その属性の適正を持っていなければ、満足に使うことはできない。
適正が無くとも、小さな火を起こしたり、風を吹かせて物を乾かすといった、生活に使うような魔法は使うことができる。
そして、魔法の相性関係は、水は火に、火は風に、風は土に、土は水に強い。つまりは、水は火を消し、火は風を飲み込み、風は土を削り、土は水を奪う、ということだ。
ちなみに光と闇だけは、お互いに弱点という関係になっている。
私の魔法は技能にもある通り、光属性魔法・治癒魔法の2つあるが、他の適正は鑑定ではわからず、調べてみないとわからない。
ライラに見てもらったところ、火属性魔法と神聖魔法にも適正がある事が判明した。
つまり私は、火属性・光属性・治癒・神聖という4つの魔法を使うことができるそうだ。
魔法の使い方は、起こす現象をイメージし、発動させるそうだ。
「……それではのぞみ様、火属性魔法を放ってみましょう」
いきなり放ってみましょう、と言われても困る。
せめてイメージする形とか教えて欲しい。
とりあえず火を球体にして飛ばしてみることにした。
ボールを投げるようなつもりでイメージしているので、〈ファイヤーボール〉とでも呼ぼう。
「〈ファイヤーボール〉!」
片手を前に出しそう叫ぶと、ボールのように球となった火が山なりに飛んでいった。
「上手ですよ、のぞみ様。なぜそのように飛ばしたのか知りませんが、まっすぐ進むようにイメージすればまっすぐ飛んでいきます」
言われた通り放ってみれば、その通りに飛んでいった。
……もしかしたら、細かくイメージすればいろいろできるのではないか、と思い試してみた結果……本当に出来てしまった。
野球のボールのようにカーブしたり、蛇行しながら飛んでいったり……ブーメランのようにしたら、火の玉が戻ってきたのは焦ったけれど。
それに聖域と呼ばれる場所でこんなことしていいのか、疑問になったけれど、ライラが言うのなら問題はないのだろう。
ともあれ、私にも魔法が使えた。
「あの……ライラ様、私も適性を見てもらえませんか?」
クリスもお願いしたいみたいだけど……なんで私をみるの?ライラさん?
……あくまでも契約者は私だから、私に決めてほしいって?
いいから見てあげて。
ということで、見てもらった結果、クリスには水属性魔法の適性があったことが判明した。
このあと2人していろいろ実験していたら、魔力切れで倒れた事を報告しておく。




