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和ロリな少女は異世界を旅する  作者: ほずみ
本編
12/48

11 採取しよ……う?

 クリスの後について森へ入り、少し歩いた場所で立ち止まる。


「のぞみさん、この辺りで素材採取をします。この辺りであれば、ゴブリンも滅多にいませんし、なにかあっても家まで逃げられる距離ですからね」


 クリスのいう通り、振り返ればアトリエが見える。

 この付近で取れる物は、回復薬ポーションの素材となる『キュアグラス』はもちろん、食べられる木の実やキノコが採れるそうだ。

 食べられるキノコだけでなく、毒キノコもある。


「のぞみさん、このキノコはこのまま食べられますよ?」


 採ったばかりの黒っぽいキノコを差し出すクリスさん。

 ちなみに土のついた所は、ナイフで切り落としてくれてある。

 クリスが言うのであれば大丈夫だと思い、そのキノコを少し齧る。


「……少し固いけれど……おいしいね」

「そうですよね。ですがそれ、実は毒キノコなんですよ」

「!?」


 すぐに吐き出したが、少し飲み込んじゃった。


「そんなもの食べさせないでよ!」

「すみません……でも大丈夫ですよ。その量であれば、死ぬことはありませんし、あっても体が暖かくなる程度ですから」


 そう言われれば、少し体が熱を帯びてきた気がする。

 なんとなく他の効果もありそうな気がする。


「……ねぇ、クリス。本当の効果を教えて?」

「……あまり食べすぎると発情させる効果があります。1本くらいであれば問題ありません」


 このキノコを使って発情させるには、1度に5本以上食べる必要がある。しかし、キノコはそれなりの大きさがあり、その効果が現れる前に満腹になるため、普通の女性に食べさせるのは難しいと思う。

 ちなみにこのキノコ、注意書きがあることを除けば、普通に食べられているそうだ。


 クリスに「もうしないでね?」と釘を刺し、素材採取に精を出す。

 クリスは回復薬ポーションの材料や、食べられるキノコを取っていく。

 根こそぎ採ることはせず、少し採る程度にしている。

 理由を聞いたら、しばらく放置しておけば、また同じ場所で採取できるから、だそうだ。それに、群生地を探す手間が省ける、というのも理由だと言う。


 楽しそうに採取するクリスを眺めていたら、剣からロミちゃんが姿を現した。


「ロミちゃん?どうしたの?」

「……とあるせいれいさまが、ごしゅじんさまにあいたいそうです」


 精霊様?

 誰のことかわからず、ロミちゃんに聞こうとした時だった。

 突如、霧が出始めた。

 はぐれたりしたら困るので、今のうちにクリスの元へ駆け寄る。


「クリス!」

「なんでしょう?」

「この辺りで霧なんて出たことはある!?」

「ありませんが……こんなのは初めてです」


 なにか知っていそうなロミちゃんに話を聞こうとしたが、なにか様子がおかしい。


「ロミちゃん?」

「ごしゅじんさま、わたしはしばらくけんのなかにいます。せいれいのちょうてんにたつおかたに、わたしなんかがあうなんておそれおおいので……」


 ロミちゃんは気になるワードを残し、逃げるように光の粒子となり、剣の中へ消えていった。

 精霊の頂点に立つ精霊について、知っていそうなロミちゃんは、逃げちゃったので、ここはクリスに頼る。


「精霊の頂点ですか?おそらく『生命を司る精霊』とされる、ライラ樣だと思います」

「ライラ樣?」

「はい。説明させてもらいますね」


 クリスの説明によるとこうなる。


 この世界は、後に『始まりの生命樹』と呼ばれる事になる、1つの種から始まった。

 種が芽を出した瞬間、1体の精霊が生まれた。

 その精霊こそ、『精霊の頂点に立つ精霊』と呼ばれる事になる、全ての生命を司る精霊ライラである。

 彼女は生命樹の成長を助けながら、後に大精霊と呼ばれる、火、水、風、土、光、闇の6体の精霊を生み出した。

 始まりの生命樹が成長し、6体の大精霊に加え、その支配下の精霊達で、世界を任せられるようになった時、ライラは彼らの寝床として、6体の精霊それぞれに1本ずつ木を与えた。やがてその木は、大精霊と同じ属性を持ち、始まりの生命樹に次ぐ大樹となり、大精霊の住まいとしてだけでなく、その他の精霊の寝床となった。

 そして、役目を終えた『始まりの生命樹』と『精霊ライラ』は姿を消した。


「精霊ライラ樣の姿は、誰1人として見た者はいませんが、各地にライラ樣の伝承が残っていたり、大精霊と契約した過去の賢者樣が、精霊樣に聞いたとかで、その存在を信じる方が多いです」


 クリスが語ってくれた伝承の中に、こんな話があった。


 とある商人が事故に巻き込まれ、生死の境をさ迷っていた時、金色の平原と、その中央にそびえ立つ大きな樹を見たと言う。

 その光景に見とれていると、大きな樹の方から、この世に生きる人間とは思えない程、美しい女性がこちらに向かって、歩いてくる事に気がついた。

 声は聞こえなかったが、『戻れ』と言っているような気がした商人はそれに従い、来た道を戻る。

 金色の平原を抜け、その先の暗闇を抜け、気がついた時には、自分の家のベッドにいたと言う話だ。

 商人は後に、その女性をモチーフにした木の像を作り、毎日崇めていたところ、商人は大きな富を得たと言う。


 いくつか話を聞いたけれど『金色の平原』、『大きな樹』、『美しい女性』の3つが共通している。

 『金色の平原』が『始まりの生命樹』がある場所とすれば、『大きな樹』が『始まりの生命樹』であり、『美しい女性』が『精霊ライラ樣』だと予想ができる。

 いくつも伝承があるのに、この3つが共通していれば、存在する可能性は高いと思う。


 この話を聞いているうちに、辺りは完全に見えなくなってしまっていた。


「……クリス……進んでみよう?」

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ……断言できないけど、私達に敵意はないし。それどころか、こっちへ来てって、言われているような気がする」


 不安そうに私を見るクリスをなんとか安心させ、私はクリスの手を引いて歩き始めた。


 さっきから歩き続けているが、足の裏に伝わる感触から、すでに森の中ではないことが分かる。

 感覚としては、コンクリートの上を歩いているような気分だ。

 繋いだ手から、クリスが不安に思っている事が伝わってくる。

 クリスを励ましながらさらに歩く。


 やがて、金色に輝く平原に出た。


「わぁ……」

「……凄いです」


 あまりの光景に言葉がでない。

 さながらそれは、金色の絨毯のように見える。その金色の絨毯の奥には、空を貫くかのようにそびえ立つ立派な大木がある。

 繁らせる葉は青々とし、そこに風が吹けば、ザァザァと音を立てて葉が揺れる。

 その姿は生命の美しさを感じさせる。

 私はなぜか、その立派な大木こそ『始まりの生命樹』だと直感した。


「……クリス……行こう。『始まりの生命樹』のところへ」

「……はい。え?」


 私は進もうとするが、クリスが動かない。


「クリス?」

「……『始まりの生命樹』って、伝承にある大樹ですよね」

「たぶんそう」


 他にも金色に輝く平原を見ているし、あとはライラ様だけ。


「のぞみさん……私の頭がどうにかなりそうです」


 クリスは錬金術師としての血が騒ぐのか、興奮を隠しきれていなかった。

 ここで手を離したら、そのままどこかへ行ってしまいそうなので、このまま『始まりの生命樹』まで、引っ張っていくことにした。


 生命樹の根元まで来ると、私達の前で、ロミちゃんのように光の粒子が人の形を作る。

 背の高さは私よりも少し高い程度だ。

 伝承の通り、見た目は金色の髪をした若い女性であり、女である私たちでさえ、息を飲む程の絶世の美女だ。

 気品を感じさせるドレスを身に纏い、私達に優雅な挨拶をする。


「ようこそお出でくださいました。『始まりの巫女』様こと、柊のぞみ様、ならびにクリス・アルフィテリア様」


 どこかのお嬢様がやるような挨拶をされても、どう返すべきかわからない。


「えっと……」


 反応に困っていたら、精霊の方から口を開いた。


「驚かせてしまってごめんなさい。私はライラでございます。以後、お見知りおきを」

「あ、はい……。知っていると思うけど、私はのぞみ。こっちはクリス」


 流れに任せて自己紹介したけれど、あの精霊はライラって名乗っていた。

 クリスを見ると、時が止まったかのように制止している。


「クリス?大丈夫?」


 クリスの頬を指先でつつく。


「ひゃいっ!?」

「しっかりしてよね?」

「……すみません。ライラ様がいらっしゃると思うと……」


 それはそうか。目の前には伝承の登場人物がいる。私はなぜか平静を保っているけれど、普通はクリスのようになるか、騒ぐ。


 ともあれ、生命樹の精霊であるライラ様は、私達に、もしくは私に何を求めるのか、話をしよう。

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