ポロンの種族講義 ~名前の由来と法則Ⅰ~
※この特別講義は本編の第40部分までの内容に沿い説明しています。
ポロン:「こんにちは、ポロンです」
シルヴィア:「シルヴィアだ」
ポロン:「読者の皆さんに説明するコーナーなんで敬語を使ってたんだけど、堅苦しいからいつも通りでと作者に言われちゃいました」
シルヴィア:「まあ、ポロンが敬語を使っているとこちらも変な気がするんでそれはありがたいかも」
ポロン:「あ!遅れてごめんなさい!私は主に一般常識・日常についての解説を担当します。担当は固定なので、日常的なものの説明は毎回私が担当するよ」
シルヴィア:「そして今回の補佐はボクが担当する。たぶん次の補佐は別の人になると思うので今回は特別だ。ボクは魔法・魔術の担当予定だからな。補佐にはあまり出ないと思う」
ーーーーー 名前について ーーーーー
ポロン:「それでは、そろそろ今回の解説を始めようと思います。今回は『名前』について。シルヴィアは知っていたかな?いろんな人の名前には、実は法則があるんだよ。場合によっては、生まれや育ち、種族やその人の民族名までわかってしまうんだよ!」
シルヴィア:「へえ、それは知らなかった。ボクは基本的に気になった人や物の名前しか覚えないからな。でも、確かにきまりがあるな、というのはぼんやりわかるな」
ポロン:「名前の形、発音、意味。種族や国家で色々な名前があるよ。特に私達の住むエールゲイル王国の国民は、ほぼ全ての種族がかたよりなくいるよ。だから、他の国よりもたくさんの名前を知る機会が多いと思う」
シルヴィア:「ふむ、なるほど」
ポロン:「でもシルヴィアはもうちょっと人の名前を覚える努力をしようね?ではまず、私の名前から」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン・キリク・マーベル
(名前)・(出身地)・(家名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルヴィア:「ポロンのような形の名前はエールゲイル国民に特に多いな。庶民でこのような形の名前なら、似たような由縁と考えていいのか?」
ポロン:「そうだね。庶民の名前って特にきまりがあるわけじゃないし、私の名前も名残として残っているだけだから特に意味はないよ。私はキリクって地方で生まれたわけじゃないし、そもそもキリクなんて場所は無くなっているからね」
シルヴィア:「確かポロンのような名前の家系は、もともと難民としてエールゲイルに来たんだっけ?」
ポロン:「そうだよ。私の祖先の故郷やロフォン帝国は、昔フェローシェの始祖族との間に大きな戦争があったんです。しかし、戦争に負けて滅んでしまったため、たくさんの難民が出てしまいました。この難民が私の祖先であり、エールゲイル王国の庶民に私のような名前が多い理由だよ」
シルヴィア:「む、そういえば、ネリーシャもポロンと同じ形の名前だな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ネリーシャ・ノルン・ワーリング
(名前)・(出身地)・(家名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン:「そうだね。ネリーシャも私と同じく難民の祖先がいたのかもしれないね」
シルヴィア:「ポロン。キリクは地名の名前だそうだが、キリクという場所について何も知らないのか?」
ポロン:「そうだねー……。あ、一つだけならお母さんから聞いてるよ。キリクはロフォンに味方していたマライア王国の地方の名前で、獣族が多い地方だったそうだよ」
シルヴィア:「ふうん。フェローシェと戦争したのはロフォンだけど、難民はなにもロフォンだけじゃなかったんだな」
ポロン:「ロフォンに味方した国はたくさんいたそうだからね。うちのエールゲイル王国だけは敵対に近い中立だったそうだけど……」
シルヴィア:「次は貴族の名前を教えてくれ。エールゲイルの貴族の名前にも種類があるようだし」
ポロン:「わかった。じゃあ次はエールゲイルの貴族の名前ね。第40部分までに出てきた貴族の名前のパターンは三つかな」
シルヴィア:「ボクの名前の形が一番よく出てきているみたいだな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルヴィア・カノーヴィル
(名前)・(家名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン:「これがエールゲイル王国貴族の基本的な名前の形だよ。でも、実際の名前はもっと長いらしくて、式典みたいな特別な場所以外は名前と家名しか名乗らないんだって」
シルヴィア:「貴族の名前はずらずら長いからな。それに、貴族の名前にはそれぞれに個人情報が含まれている。それがあまり名乗らない理由かもな」
ポロン:「私はこの特別講義の担当なんだけど残念ながら貴族の名前ってよく知らないんだよね。担当なのに……。というわけで、作者からもらったカンペを読んで足りない所をシルヴィアに説明してもらおうと思います!自分の本名くらいちゃんと覚えてるよね?……シルヴィア?」
シルヴィア:「………………」
ポロン:「あの、シルヴィアさーん?何してるんですかー?」
シルヴィア:「調べてきた」
ポロン:「本当に忘れてた!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルヴィア・フューレクト・フィア・アス・フォルフゲイル・カノーヴィル
(名前)・(幼名)・(飾り)・(継承位)・(所属)・(家名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン:「シルヴィア・ふ、ふゅーれくと、ふ……」
シルヴィア:「噛んだな」
ポロン:「長い!長いよ!長すぎるよ!」
シルヴィア:「全力で同意する。というか、長くて見にくいな。切るか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルヴィア(名前)・
フューレクト(幼名)・
フィア(飾り)・
アス(継承位)・
カノーヴィル(家名)・
フォルフゲイル(所属国)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン:「ありがとうシルヴィア、結構見やすくなったね」
シルヴィア:「ああ。じゃあ順番に説明していくか。ボクは詳しくないからポロン、カンペを頼む」
ポロン:「……ねえ、シルヴィアは貴族だよね?本当は私よりも詳しくなきゃいけないよね?何で詳しくないになるの!?忘れたの!?」
シルヴィア:「忘れるも何も、必要に迫られればそのつど覚えるさ」
ポロン:「今!必要!もー……。上から順に説明していくよ。名前はそのままの意味で、幼名。これは、幼少期に使われる名前らしいね」
シルヴィア:「正確には、幼少期に使われる仮の名前だな」
ポロン:「仮?本当の名前じゃないの?」
シルヴィア:「本当の名前さ。言い換えれば真の名前、自分自身の価値さ」
ポロン:「どういうこと?」
シルヴィア:「貴族の子供は生まれたらとりあえず仮の名前が付けられる。望まれ、最良の状態で母体から生まれたなら、当然親はそれを喜ぶよな?」
ポロン:「そうだね。子供が生まれるのはうれしいことだもん」
シルヴィア:「その子供が健康で器量が良く才能もあり跡継ぎとして優秀だったら、これも当然喜ぶよな?」
ポロン:「そう、だね?」
シルヴィア:「仮の名前。それは、最初に言った通り、その子供の価値を如実に表す名前なんだよ。第一子なのに病弱だったり、はずれの種族として生まれたら、跡継ぎとするには期待外れだろ?」
ポロン:「え、まさか……」
シルヴィア:「育っていく最中でも、途中で頭が悪いってわかったり、何か障害が見つかったり、あとに生まれた弟や妹が優秀だったらやっぱり期待外れだろ?」
ポロン:「つまり、子供の能力で名前が付けられるの?」
シルヴィア:「そう。カンペにも書いてあるでしょ」
ポロン:「本当だ……。庶民みたいな名前だったり、番号だったり、悪口みたいな名前を付けられる時もあるって……。自分の子供なのに……」
シルヴィア:「親が子供に興味がなかったり、呼びやすい名前にしたかったとか、理由はいくらでもあるかもね。だから、貴族の子供の幼名は統一性がないし、名前が付いていない期間があるんだ。最初は期待外れだったけど実はとても優秀だった、なんてこともあるから途中で幼名が変わったりも普通にあるみたい」
ポロン:「………………」
シルヴィア:「あとで見映えの良い貴族としての名前を付けるから、余計に幼名がおざなりになるのも理由の一つだろう」
ポロン:「………………」
シルヴィア:「でも、みんな悪い名前を付けられるわけじゃないよ。ボクは生まれてすぐ大お祖父様に名前を付けられたし、普通の名前を付けてもらえる場合もあると思うよ。そういう子達にとっては貴族として使う名前は大人への一歩みたいなものだし。でも、そう他人に教えるようなものじゃないのはわかるよな」
ポロン:「うん……。私達が貴族の名前を短くしたり呼びやすくして使っちゃダメって口を酸っぱくして言われるのはこういう理由だったんだね」
シルヴィア:「ああ、なんで長い名前を好き好んで使っているのかと思えば……そういうことか」
ポロン:「知らなかったの!?……あれ?シルヴィアの幼名ってフューレクトってなってるけど、男の子の名前じゃない?」
シルヴィア:「変わっているかな?ボクの幼名を付けたのは大お祖父様だから、フェローシェの名前なんだ」
ポロン:「だから男の子っぽく……」
シルヴィア:「ボクが小さい頃はわんぱくだったみたいで、大お祖父様には男として育つんだと思われたのが理由だ」
ポロン:「えっ?」
シルヴィア:「さて、次は飾りかな?これは説明ないなカンペは?」
ポロン:「……こっちもだよ。貴族ってことを示す飾りの名前みたい。次は継承位。これもそのままの意味?」
シルヴィア:「だね。爵位の継承の優先度を示したものだ。アスは数字の1。だから、長女のボクは一番次期カノーヴィル伯爵を継ぐことを優先されているんだ」
ポロン:「この国は女の人も爵位を継げるからね。これも幼名と同じように決められるんだ」
シルヴィア:「幼名と同じく親の意向で決まるが、これは基本的に生まれた順だな」
ポロン:「家名はそのままで最後は所属。これは私も知ってるからカンペ必要ないね。エールゲイル王国は、王族が直接治める中央直轄国フォルフゲイル、周りを四方に囲み大公爵が治める大公国で成り立っているよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・エールゲイル王家の治める中央直轄国フォルフゲイル
・ダイアン・ボルノス大公爵家の治める東方大公国エンノイルブ
・シェク大公爵家の治める西方大公国メイジケーグ
・ポローネロ大公爵家の治める南方大公国クロライア
・ロア大公爵家の治める北方大公国シドライアル
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルヴィア:「エールゲイル王国は四つの国の上を直轄国が頂点に立つ形でできているからな。五つまとめてエールゲイル王国として機能しているけれど、普段はそれぞれ別の国のように動いている」
ポロン:「だから、エールゲイルの貴族でもどこの貴族かはっきりさせるために名乗っているんだ」
シルヴィア:「そういえば、貴族でロアを名乗っている奴いたな。……そう、ファイトスだ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ファイトス・ロア・シドライアル
(名前)・(旧王家名)・(家名)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポロン:「ロア?そういえばファイトスは北方大公爵家の人だね」
シルヴィア:「ロアって何を指しているんだっけな」
ポロン:「大公爵家の人は、元はヴァイキア帝国に属していた国々の王族だね。ヴァイキア崩壊で難民がたくさん出たことは説明したけど、それと一緒になんとか難を逃れた王家もいくつかあったの」
シルヴィア:「難民の多くはヴァイキアやその味方をしていた国の民。ああ、なるほど。大量の難民を統治するために大公爵として据えたのか」
ポロン:「ヴァイキア王家はほぼ根絶やしにされた上に、逃げ切った王族も別の地でロフォン帝国の王族になっちゃったの。だから、逃亡した王族の中で自国の難民が特に多かった四つの王家を大公爵にした。それが」
シルヴィア:「ダイアン・ボルノス大公爵家、シェク大公爵家、ポローネロ大公爵家、ロア大公爵家というわけか」
ポロン:「旧王家名は継承位と家名の間に入るよ」
シルヴィア:「……ポロン、作者からカンペだ。5000字を超えたそうだ」
ポロン:「思ったより長くなったね」
シルヴィア:「そうだな。まだ他国や種族別の名前が残ってるが次の機会にするか」
ポロン:「うん!それでは、次は種族別の名前、他国の名前について説明するよ」
シルヴィア:「ここまで見てくれた読者の方には楽しんでもらえたかな?」
ポロン:「最後まで見てくれた読者様、ありがとうございます!次も頑張って説明するので、見てもらえるとうれしいです」
シルヴィア:「ボクからも最後まで見てくれた読者の皆様に心からの礼を」
ポロン:「最後は今回の講義のまとめです」
ーーーーー まとめ ーーーーー
○名前は情報
名前はその人の種族、民族、出身地などの情報がたくさん詰まっている。名前でその人の身の上をある程度予想することができる。
○エールゲイル王国の国民は大半が元難民
国民の多くは戦火を逃れたヴァイキアの民。なので、多くの国民の名前は似たような形をしている。
形:(名前)・(出身地)・(家名)
○貴族の名前は秘密
貴族の名前もたくさんの情報が詰まっている。家族や特に親しい人、特別な式典でしか教えない。貴族の名前を勝手に短くしたり呼びやすくしてはいけない。
形:(名前)・(幼名)・(飾り)・(継承位)・(所属)・(家名)。
○大公爵家は元王族
四つの大公爵家は難民と共に自国から逃亡した元王族。そのため、名前には旧王家の名前が入っている。
形:(名前)・(幼名)・(飾り)・(継承位)・(旧王家名)・(所属)・(家名)。