5:第一次接近遭遇
さて。死体が着ていた服を着るのは抵抗があったが背に腹は代えられぬと思い、(少なくとも裸族が一般的ではないとわかって少し安堵)剥いだズボンを直接履いた。
パンツはちょっとね(汗)というかパンツはなかった。どうもシャツの下がそのまま股下に回り込むようなつくりである。昔のレオタード的な?(としおの誤解)
その時自分のあれを確認するが、特に変わった様子はない。色は少し黒い気がしたが、それはどうやら全身がそうなのだ。
白髪の混じった茂みを確認して(ややメタボなので全裸でも普段はあまり見えない)少し失望する。
だって普通は若返るんじゃね?10代とか20代とか。そのままの感じってどうよ!
ちょっと大きめのブーツを履いて皮の鎧的なもの一式とベルトに剣、ナイフをぶら下げ、リュックに袋幾つか、紐、布、水筒を入れて背負う。やっぱり臭うけど、ましかなあ。乾燥してるからか?
食料や毛布は自分が立っていたあたりに隠すように置く。
喉が渇いた。流水探しに行くしか無いね。
こちらに来てから1~2時間くらいか?徐々に明るさが増している。
茂みを抜けると、やはり森だ。植生は日本とそんなに変わらないかな。
耳を澄まして細流を探すが、風のざわめきに紛れてわからない。
神様も即死はしないと言っていたし気をつけて探すとするか。
紐を使って目印を作りながら谷筋を探して下っていく。
あった、川だ。しかし生水はどうなんだろう?
一見綺麗な水だし、前に山の名水百選かなんかに汲みに行ったときより清浄な感じだし、まいいか。
手をよく洗い、顔を洗い、手で掬って飲んだ。甘露やん。
水筒をよくよく洗い、水を溜める。
残念なことに流れが細く、今の顔を見ることは能わなかったが、なんかおでこにコブのようなものがあった。ナニコレ?
触った感じ顔の作りに違和感はない。鼻が高くなったり目がパッチリしたり、髪が濃くなったりはしていなさそうやね。
ちょっと残念やね。まあしょうがないよね。
さあどうしようか。ちょっと疲れたし。
洞窟に帰って寝ようか。
パンと干し肉を少しかじり、日は高かったがとりあえず寝ることにした。
しかし、毛布があるとは言えゴツゴツした岩の洞窟である。すぐに寝られないことに気づいた。
今日まであくせく仕事をしてきた日常からの開放感は、やっぱり不安定でわけのわからなすぎる現状を凌駕するほどではないのだ。
大体、干し肉が不味い。硬すぎるし塩が効きすぎて塩そのものを食べているような感じだし。パンも乾燥しすぎて、ナイフで削って水に浸さないと食べることができない。
そもそも食料が少なすぎる。町育ちwの自分に食べられる野草とか見分けられるはずもない。野生生物や鳥とか狩猟できるとも思えない。
「やっぱり詰んでるやん」
泣きたくなってきた。
「あの」
「うっひょぁっっっっっぅ!」
「ああああああああの!」
「なああああぁ!」
「あのあのあの」
「なななになんですか」
洞窟の入口に誰かが顔を出している。なんかしゃべってる!
「あの!あの!」
「なんでしょうか。」
あのという言葉が罵倒語でない限りとりあえずの敵意はないやろと思い、返事をする。声が高い。女?子供?影はやや小さい。
「すみません、道に迷ってしまって、、」
「はいはい。ちょっと待ってください。」
良かった言葉は通じたよ、まあプレートを見てわかっとたけどな、大体な、大体。
それにしても服を着ていてよかった、すっぽんぽんではどうにもならんとこやったよ。
立ち上がり、逆光の中の小さな影を見て慎重に近寄る。
「ああ、良かった。やっぱりオーガさんですね。」
「ええぇぇぇぇ……」
オーガってなんだよ……ていうか、お前、何?色は白いけど、まさか、ゴブリンのメス?
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