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僕は異世界で君を探す~命よりも大切なもの~  作者: Re:You
序章 異世界からの招待状
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序章の八 怪しい女神様

 僕の名前は深山(みやま) 和志(かずし)


 行方不明になった三島を探すために手がかりを探しに彼女は向かったであろう場所に行ってみた。


 しかし、そこに居たのは魔人という、とても力が強い未知の存在でした。


 物凄い力とスピードで襲われて、魔術という現象で火の玉を投げられて、それでも必死に抵抗して倒しても、満身創痍な体で窮地に陥ってしまいました。


 それでも必死になってみたところなんと異世界の神様が僕の目の前に現れた!


「ってことか。よし納得」


「えっ!」


 目の前の女性が驚いた声をあげる。


「いや、呼んだのは貴方なんでしょ。もしかして『何これ!何だよこの超展開!さすがの僕でも流れについていけないぞ!』とか言った方が良かったんですか?」


「あ、いえ、今まで出会った人たちは驚いたり、喜んだりしていたんですが、そのような反応をした人は初めてでしたので・・・その・・・貴方は何か思ったりとかしないのでしょうか?」


 何も思い浮かばないと言えば嘘になる。今だって表に見せるつもりはないが、混乱しまくっている。

 ここはどこだ?とか、あなたが僕をここに呼んだのか?とか、三島の行方を知っていますか?とか色々聞きたい。

 聞きたいが、それについては後にする。今は冷静な対応をして、相手に主導権をとられないことだ。


「・・・気を失ってここにいるので、僕は死んで天国にいるのか?それとも、まだ生きているのか?それを知りたいなぁとは思っています」


 僕は女神にそう言うと、女神は嬉しそうな顔をした


「ああ、そうですね!それを言わなくてはならなかったです!」


「何で喜んでいるんですか?」


「だって、やっとあの悪魔から救えた初めての人ですから!」


 おいおい、女神様、ネタバレしてる!

 あれ?何だろう?先程までのシリアスシーンがきれいに吹き飛びやがった!


 でも、なるほど。僕はまだ生きているのね。・・・生きている感覚はしないけど。


 自分の手や足、頭なんかに重さが感じられない。水の中にいるような感覚だが、全然息苦しくないし・・・僕は呼吸をしていない。


 いや、出来ないのではない。必要ないといった方がいいかもしれない。

 先ほどまで負っていた体の痛みも疲れもなくなっている。

 となれば、ここが普通の場所ではないことぐらいには理解できる。


 さてさて・・・


 さっきの発言を察するに、女神は僕以外にもこの世界の人間と会ったことがあるらしい。

 でも『はじめて救えた』と言っていたということは、会った奴等は既に死んでいたと予想できる。

 そして、女神は『あの悪魔』とか言っていた。悪魔を知っていた。

 ・・・つまり、僕が対面した出来事も知っている確率が高い。そして、その場所で僕は沢山の死体を目撃している。となればこう推測出来る。


「・・・もしかして、あの駅で死んだ人を僕らで言う異世界に送っていたのですか?」


「ふぇ!な、何で分かったんですか!あ、いや、き、機密事項なので黙秘します!」


 ・・・あれ?ヤバい、この人ヤバくない?


 本当に女神なのか?創作物と全然印象が違うのだが・・・普通は僕たちよりも知的な発言をするものではないのか?


 いや、創作物に似せる必要はないのだが、女神なのか疑問に思ってしまう。


「あ、あの!この事は誰にも言わないでください!せ、先輩に怒られたくないので・・・」


 先輩って、え?神様も社会制度があるの?上下関係とか年齢とかそういう概念が存在するの?


 なんというか、どうにも目の前の存在が神様みたいに見えない。いや、神様を見たことなんて一度もないんだけどさ・・・

 僕が彼女に疑いの目を向けていると、彼女は思い出したように、


「えっと、こういうときは・・・そうだ!深呼吸!」


 ・・・と言った。ツッコミをいれていいのかな?ただのボケだよな?

 女神様は僕を無視して背中を向けると、「スー!ハー!」と深呼吸を何回かすると手のひらに何かを書いて口に当てて飲み込んだ。

 神様だよね?せめて書いていた文字くらいは『人』ではなくて『神』と書いているよね?


「大丈夫、大丈夫、私はできる。そう、私はできる人・・・じゃなくて神様

 練習もあれだけやったし、これぐらいの障害は問題ない

 誘導するだけ、そう、私は出来る。出来る。出来る。」


 何で自己暗示しているんだろう?というより僕を障害とか言っているし・・・練習?誘導?


 アカン、アカン、アカン、超不安になってきた。多分、この自称『女神』はまともではない。

 僕の心配をよそに、背中を向けていた彼女はこちらの方へと向き直すと笑顔を作った。


「・・・さて、深山和志さん、改めまして自己紹介を、私の名前はラキアス。


不幸な運命に巻き込まれた貴方に救済を与える女神です」


 ・・・これって合わせた方がいいのかな?ツッコミたい事はたくさんあるが、とりあえずある程度話を聞いて、情報を集めよう。


「うわー、女神さまなんて、ほんとーに存在するんだー。すごいやー、今まで出会った人たちよりもうつくしー存在がいるなんてー」


 僕がお世辞を言うと、女神は再び嬉しそうな顔をする。チョロい。


「私は本来は別の世界の管理をしている女神ですが、他の世界で不幸な結末を迎えている人に、私が管理している世界で新しい人生を送る機会を与えています」


「え、それでは僕は死んでしまったのですか?」(生きていると思うけど)


「いえ、貴方は死んではいません。悪魔に利用されそうになった貴方を私が救ったのです」


「そ、そうだったんだー、女神様、ありがとうー!」


 僕はその時について思い出してみる。


(まず・・・らがここ・見つけ・・・・くそっ・・・なったら・・・!)


 たしかクラインという悪魔の言葉、あまり聞き取れなかったが、言葉の前半部分が誰かに発見されたような発言だった。


 後半の言葉がほとんど聞き取れなかったので、何をしたのかはわからない。


 だが、その後にここに来たということ、あの悪魔が別の世界から来たということから、あの悪魔は目の前にいる自称『女神』が管理している世界の住人の可能性がある。


「それで貴方にはこれから・・・あの、話を聞いていますか?

 何か考え事をしているみたいですけど・・・」


「え、あ、すみません!少し考え事をしてしまって・・・」


「確かに、突然起きた出来事に混乱してしまっているのでしょう。ですが、今からあなたの運命を分ける大事な瞬間になるので真剣に聞いてもらえませんか?」


 女神が怒っているのだろうか?表情が険しくなる。


「あ、いえ、これからのことも聞きたいのですが・・・これまでのことで色々と疑問に思ったことがありまして、真剣にずっと考えていたんです」


「そ、そうですよね。あ、でも、過去のことを後悔するよりも、未来の事を考えた方が気分が明るくなりますよ!」


 と女神は僕に言ってきた。・・・何だろう?突然表情が変わった。


 話を聞いていないから、僕にたいし怒っていると思ったが、明らかにその表情ではない。

 その顔はまるで、子供が親に怒られたくないために、隠し事をしている顔だ。

 視線をそらし、声色が高くなり、額に汗が浮かんでいるその姿は、まるで、僕が三島の命令で必死に作ったプリンをこっそりと全部食べて、知らないふりをしていた妹と同じ姿だ。


「・・・あの、女神様、少しばかり聞きたいことがあるのですが・・・」


「わ、私はあくまでもあなたの世界とは違う神様で、あ、あ、あなたの世界で起きたことは、そ、その、く、詳しくないと言いますか」


 ・・・何も聞いていないのに言い訳を始めた。何か知っているな。そして、多分、僕にバレたら不味いやつだ。

 まあ、これが僕に関係なさそうで、こちらにとって大したことではなさそうなものであればともかく、突然起きたあの出来事は三島の行方を知る絶好の機会だ。


 ここで引くわけにはいかない。追求しないと。


「三島 京という女の人を知りませんか?」


 その言葉に彼女は視線を反らす。


「えっと、それは、お答えできません。無闇に別の世界の情報を・・・ましてや人間の個人情報は調べることも教えることもできないんです」


 ・・・なるほど、今の答えで女神の役割がうっすらと見えてきた。

 公務員や銀行員みたいな固い対応をするということは、彼女の役割は責任が大きい。また、『先輩』という単語やはっきりと答えることができない事から彼女には力がないと推測できる。正確には彼女よりも上の存在がいる。


 個人情報を調べることもできない程、別の世界へ干渉もできないのに、僕をここへ連れ出すという矛盾。つまり、今回の出来事はかなりのイレギュラーであり、おそらく、彼女の不備が原因だ。そうでなければ、あのように狼狽えて何かを隠そうとしない。


 でも、僕をここへ連れ出したのは、隠蔽工作だけではない気がする。その理由が何かまでは分からないが・・・とにかく隙はある。隙間だらけだ。


「そうですね、僕を助けた女神さまに無礼な行為を行いました。非常に申し訳ないと思っています」


「そ・・・そういうわけでもないんですが・・・」


 女神さまは本当に申し訳ないような顔をしていた。というか、なんか泣きそうな顔をしていた。


「・・・女神ラキアス様、もしあなたが僕に言えない事があるのであれば僕から聞くことはありません。


 ですので、今からいう事は独り言と思って、聞き流しても構いません」


「な、なにを言うつもりなんですか?」


 彼女が恐る恐る尋ねると僕は笑顔を取り繕う。カマをかけてみる。


「マッチポンプという単語を知っていますか?」


 その言葉に女神はビクッ!と全身を硬直してしまった。うわ、これが当たりかよ・・・やだな。


「和製外来語で意味は偽善的な自作自演なのですが・・・」


「え、え、え、えっと、そ、その、単語は、も、もち、ろん、し、知って、マス」


 まるでこの世の終わりが来たように、それこそ自分の最期を予期したかのように涙を流して答える彼女だった。・・・なんか、すごく言いにくい。僕が彼女を責めるみたいでとても気分が悪い。


 だが、ここははっきりと言っておかないといけない。


「あの時はその場の対応で頭が回りませんでしたが、今ですとある程度の予想が出来るんです。・・・でも、その予想はあくまで予想であって証拠も何もないのですから、女神様がやることとは思いませんが嘘で否定しても、追求できないのでご安心ください」


「そ、そうですね。でも、女神が嘘など・・・うぅ」


 涙がボタボタと流れていくその姿を見ていると、昔の事を思い出す。


 あれは中学二年生の時だっただろうか?いじめの主犯グループがやっていたことを公にした時、追い詰められた女子生徒がこんな風に泣いていたっけ?


 あれは非常にスカッとした。まあ、それをつい口にした時のみんなの目が冷たかったけどさ・・・


 まあ、要するに、そんな涙を流しても僕はそれくらいで止めないし、止める理由にはならない。嘘を言わないという言質もとったし、さっさと本題に入るとしよう。


「女神ラキアス様、この騒動を起こした張本人はあな・・・」


「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 女神は頭が割れるような大声を出して叫んだ。


「すみません!何でも言いますから!何でもしますから!その事は喋らずに心のなかにしまってください!」


 女神が土下座をした。地面はないが、綺麗な土下座の形をして頭を下げた。


 ・・・まあ、あの表情から察するに、僕の予想はある程度は当たっていたらしい。何でもすると言っているし、これ以上言う必要は・・・・


「ごめんなさい!喋ってしまうと先輩に聞こえてしまうんです!私の管轄ミスで『先輩の世界』に『私の世界』の住人が転移してきて、そのせいで何人もの人間が死んだとバレれば殺されます!しかも、そのミスを誤魔化そうと、死んだ人を『私の世界』に送ったり、目撃者の記憶を消して、都合の良い説明で手伝ってもらおうとした事などが知れたら、あわわわわわ・・・」


 あれ?そういう自分は喋っていませんか?しかも要点をまとめて分かりやすい。


 ・・・ん?目撃者の記憶を消そう?

 目撃って、もしかしなくても、あの場所のことだよな?

 あの現場の目撃者って・・・僕!


 何?そんなことまで考えていたの?(こえ)えよ!知らなかったことまで言っているし!しかも、なぜか僕を利用する気満々だったし!


 でも、何で僕を助けたのかは理解できた気がする。


 僕を助けて記憶を消そうとした理由はこれ以上犠牲者を増やさないためと、恩に着せて口止めをしたかったのだろう。決して女神様の優しさではない。


 多分だが『異世界』の生物が『僕らの世界』で影響を与えてしまうと駄目なのだろう。だから異世界の女神、彼女自身が僕を口封じで消すようなイベントなんかも起こせるわけがない。


 でも、事情を説明するわけにもいかない。何をしたのか分からないが、自分に不備があったと謝りでもしたら、相手が何を言ってしまうのか分からない。下手すれば、更にややこしくなる要望なんかを言われるかもしれない。


 というわけで、記憶を消して無かったことにしようとしたのか。都合の良いところを説明して、知られたくないところは記憶を消して、利用する。


 無駄なことをするのだな。


「女神様、貴女が僕に何をさせようとしたのかは分かりませんが、その行為は無駄だと思います。


 僕は今日の記憶を無くしても・・・いえ、例え三島の存在を思い出せなくても、きっと再び三島を探します。


 それが出来る自信があるし、そういう性格だと自分は自負しています。」


「・・・ええ、そんな貴方だからこそ生き延びれたと思います。だから?だったら私はどうすればいいんですか?


 どうせ、私は何もできないんです。ダメな女神なんです。駄目神なんです!」


 彼女は土下座の格好をしたまま、顔を上げずにそう呟いた。


「でも、僕にはお願いしたいことがあるんですが・・・」


「私に何をさせるつもりなんですか?駄目神ですから出来ることなんか無いですよ!」


 卑屈っているな・・・でも、駄目神とか自虐ネタを言っている余裕はあるのか?


「逆に問いますね。女神様でも出来ないことはあるんですか?」


「何でも出来る神様などいません。神が全知全能なら、こんな事態に陥るわけないじゃないですか。

 貴方が出来ないことで私に出来ることはあるかもしれませんが、貴方の要望には恐らくこたえることが出来ないでしょう」


 「それはあんただけではないのか?」と言いたかったが、まあ、普通に考えれば全知全能の存在などいるわけがない。人間(ゴミ)が存在する世界を作った神様を有能とは言えない。


 そんなくだらない考えも女神の次の言葉で一瞬で消えた。


「三島 京さんは既に貴方の世界にはいません。あろうことか悪魔と取引をして、異世界へ行きました。二度と元の世界に戻る気がないそうです。詳しい居場所も分かりません。ですので、二人を元の世界に返すことが出来ません」

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