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僕は異世界で君を探す~命よりも大切なもの~  作者: Re:You
序章 異世界からの招待状
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序章の五 負けイベントは認めない

 すく近くに立っている人間?は普通ではない。


 2メートルはある身長が、

 青色に近い紫色の皮膚が、

 手のひらに見えている凶暴な爪が、

 真っ赤に染まった右手の鈍器が、

 にこやかな顔で振り撒く嫌な気配が、


 そんな奴がそこにいるだけで思ってしまう。


 ああ、このまま立っていれば死ぬな。


 現に隣の意外美人は足をがくがく震わせている。奇遇だな、俺も全身が震えている。


 奴は電車が止まると迷うことなくこちらに向かった。

 やっぱり、あの石は僕たちの位置を知らせる物の可能性が大きくなってきた。


 僕は一秒だけ考える。やるべきことと優先順位、目標と。


「僕が囮になる。その間にやってもらいたいことがある」


「は・・・え?」


「いいか、一度しか言わない!よく聞いて!」


 僕は彼女に説明をした。時間がごく僅かしかないので端的に言う。


「え?何で?」


「時間がない!早く!」


「わ、わかりました」


 そう言って彼女は慌ててバッグの中から二つのものを取り出した。


 そのうちの一つはあの石だ。


 僕は二つの持ち物を手にとってすぐに電車を出た。


 電車を出た瞬間、奴と目があう。


 キラキラした目だ。今から蟻の巣に水を流し込むような小学生の目だ。


 奴が笑った瞬間、僕はすぐに視線をはずし、逃げることだけに集中する。


 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。

 逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。にげる。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。ニゲル。


 それだけを考える。


 脚力に集中し、目の前の障害物を避けることだけを考えながら逃げる。


 改札口にチケットを入れるのを無視して、飛び越える。


 周りの状況を視線に入れる。見渡す余裕はないが、情報がほとんどないままで駅の外に出るのはまずい。


 視界に移った惨状はやはり異常だった。


 人が誰もいない。乗り場のような惨状は見当たらないが、平日とはいえ、全く人がいないというのはあまりにもおかしい。


 考える時間は終了した。


「ズシン!ズシン!」と後ろから大きな足音が聞こえてきた。


「ああああああああああああああああ!!!」


 恐怖を叫び声でごまかした。


 振り向くとまずい気がして足音が聞こえなくなるように全力で走った。足跡が聞こえなくても、構わず走った。


 躓きそうになっても、踏ん張ってすぐに走った。


 息がすぐに切れても、根性で走った。


 外に出る。今はそれだけを考えろ。一秒後の事は外に出てから考えろ。


 外の光景を確認してからどのように行動すればいいのか判断がつく。だから、僕は必死に駅の外へ向かった。




 外には何もなかった。


「・・・・・・へ?」


 何もない。本当に何もないのだ。


 人や車はおろか、建物、歩道橋、あげくには道路すらない。まっ平らな白い地面しかなかった。


 ・・・なんだこれ?流石にこの状況は想定外だ。


 人払いで人がいなくなるところまでは想像できていた。

 どれくらいの権力やら、金の力がいるか分からないが、全くの不可能ではなかったのだから。

 そして、この状況で常識的な答えを要求したわけではないのだから。


 ただ、流石にこの光景は予想できなかった。これは現代技術、少なくとも僕が知っている技術でこれを表現するのは無理だろう。


「おいおい、聞いていた話と違うぜ」


 僕がこの光景に唖然していると、後ろから声が聞こえ、振り替えるとそこには化け物が突っ立っていた。いや、正確には立ってはいないな。


「あいつの言葉を信じて期待して待ってみたのにさ、全然お前駄目だね!まず逃げる、次に女を見捨てる、最後に人に助けを求める。あまりにも情け無さすぎだろ。最悪最低の屑人間だろ」


 奴はまるですぐに殺せるけど、何をするのか観察するために見逃したような態度でそう言った。


 実際、その通りなのかもしれない。奴は明らかに可笑しかった。なぜか?


 足が地面についていないからだ。普通に空中を自在に動いているように見えた。


「・・・・・魔法?」


 ワイヤーを使った手品や、科学を利用した装置などとは到底思えない。

 むしろ、そちらの方が都合が良い出来事が目の前で起こっていた。


 本当にタネも仕掛けもないのに奴は浮いていた。

 いや、タネか仕掛けはあるだろうが、少なくとも自分がわかる範囲を超えていた。


「は?魔法?違うし!魔術だし!そんな高等術式を使わなくても簡単に浮かぶんだよ!お前は無知だね、無知すぎて殺したくなるね!」


「魔法じゃなくて・・・魔術?」


 どう違うかは分からないが、きっと、奴には意味のある言葉であることは間違いない。


「・・・ちょっと聞いてもいいか?」


「は、俺がものすごく不機嫌なの見て分からないわけ?俺はすぐにでも殺してもいいんだけど!」


 奴は額に青い血管を浮かべてこちらを睨む。


 正直怖い、怖いが話が通じることが分かると、不思議と最初よりも恐怖の感情が僕の体を支配しなかった。体は動かせないが、パニックにはならない。

 だから、思考をまとめて最初に行う行動、そして、相手が行う行動を予測して対策を立てていく。


 僕はポケットに右手を入れて、準備を整える。


「僕は君に興味があるんだ。魔術と言っていたよね、それについて少し聞きたいんだ。」


「は?何言っているんだ?この状況を見てなんでそんなに余裕なの?夢だと思っているの?現実を見ることができないかわいそうな子供なの?・・・あぁ、もういいや。面倒くさいから死ねよ」


 そう言って奴は浮くのを止めて、地面に着地する。それを見て僕も臨戦態勢を整える。


 そして、奴が膝を大きく曲げ、姿勢を前に傾けたのを見て、


 僕はしゃがみ、ナイフを右横に突き出した。





 一秒後、僕の右手は折れた。




「うあああああああああああああああああああ!っっでええええええええええええ!」


 最初に訪れたのは指の感覚がなくなったことだ。


 そして、手首にじんわりと熱い感覚が訪れて視線を移すと、指は変な方向へ曲がり、手首は180度反対方向に向いていた。


 そして骨がおれていることに気づくと、急激な痛み、声に出せない痛みが現れた。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 頭が真っ白になるような痛み、何も考えられないくらいに痛覚が思考を支配する。


 そんな痛みをごまかすように頭を地面に打ち付ける。


 平然としろ、ここが勝負どころだ!ここでの行動が大事なのだから。


 そう、再認識して僕は顔を上げて、痛みを顔に表して叫んでいる奴を見つめた。


「おい、おまえ!」


 奴は僕の方を睨み、右ももを押さえている。


 そこには僕が持っていたナイフが刺さっていた。


「お前、何をした!俺の攻撃が見えていたのか?いや、わかっていたのか?」


 一秒の間に何があったのか?それは僕も完全にわかっていない。


 ただ、20m先にいた奴が僕に向かって一瞬で距離を詰めたのは分かる。

 例えるならバッティングセンターで投げる150㎞のピッチングマシーンより断然速い速度で向かってきた。

 でも、僕は予測していた。それぐらいはやるだろうと断定はできなかったけど、たぶん来るだろうなとは思っていた。

 だから、僕は姿勢をさらに低くし、奴が来るであろう軌道に僕はナイフを突き出した。

 そのナイフに奴は自分で刺さりに行ったんだろう。


 僕はその時に右手首が折れ、腕もヒビがはいっている。これは流石に予想外だった。

 痛みが半端ない。刺さっている奴より痛がっているかもしれない。

 そんなことを考えていると、奴は混乱した顔で僕を指で刺す。


「何で?何でだ?俺は「僕の首をその凶悪な爪がついた物騒な腕でもぎ取ろうとした」・・・は?」


 奴は僕が言ったことに驚いていた。いや、なんで驚くの?

 驚く理由が分からないんだが・・・もしかして俺が言った内容が図星だったから驚いているのだろうか?


「何で分かるんだよ!」


「そりゃあ、周りの惨状とあんたの言動、そしてこの異常な光景で分かったんだよ」


 分かるわけがない。


 そういう目で僕を見ている奴は疑いと怒りを含んだ目をしている。


「まずあんたの身体能力について推測したのは周りの惨状を見て推測した。武器を持っているようには見えなかったし、ワイヤー等の可能性もあったが、そもそも鋭利な切り口でなかった。つまり、武器を使わず人間の首をもぐような強靭な筋力でもいだ可能性があった。」


「・・・・・・・」


「普通の人間ならほぼ無理だが、どうやらあんたは異世界人だからな。常識の概念は無視させて考えた」


「なんなの?何言っているの?たったそれだけでそんな馬鹿な行動をとったの?」


「いや、他にも十を超える理由はあるけど、まあ分からなくていいよ。どうせ僕の言っていることを理解できるような頭をしてないだろうし」


 情報はたくさんあった。奴の服装は独特であるが、先ほどの異常な血だまりの光景の中で、血痕が全くないことから、奴が正面に突っ込むことはしないと分かっていた。

 動きを制御できるようならその考えは間違っているが、乗り場では壁にいくつもの衝突跡があったので、それもないと思った。


 奴がさっき人間の頭を握っていたのは右手だった。という事は右利きの確率が高い。

 ほかの行動を見ても、右利きだという判断はできたから、無意識に右手で攻撃するとは思っていた。


 あくまで推測だったから確証はなかったが、可能性として頭に入れてよかった。


 まあ、このようにして他にも予測していることはあるが、説明している余裕はないし、言う義理もない。


 だから、僕は奴を挑発し、次の作戦を実行する。


「ふざけるなよ、調子乗るなよ、殺す、殺してやる!」


 奴はそういうが、一向に動く気配はない。まあ、そうだろう。先ほどは突っ込んで自滅したし、右脚を痛めている。


 にもかかわらず、怒りの中に奴の余裕の笑みが見えた。


 可能性としては二つ

1 時間がたてば傷がすぐに修復する

2 遠距離から攻撃する手段がある。


 恐らくは両方だと判断をつける。


 先ほどあれほど痛がっていたのに、もう呼吸が緩やかになっている。

 それと、奴は魔術というものが使えるといった。

 足音から相当重量がある自分を浮かべていたのなら、他の物を浮かせて落とす攻撃だって可能だ。

 いや、弾丸のように攻撃することだって可能かもしれない。


「一応言っておくけど、いまさら謝ったって遅いからね。倒せるとか勘違いしていたら胸糞悪いからあらかじめ言っておくよ。俺につけた傷はこの程度ならあと10分で治るし、この距離でもお前を殺す方法はあるんだよ!」


「わざわざ解説どうもありがとう、お礼に一つ忠告しておく」


「なんだい?負け犬の遠吠えかい?」


 奴は余裕の笑みを見せて、そう言った。


 ・・・その顔が非常に苛立った。理由?それは簡単だ。気に入らないからだ!


「僕の許せないことは三つある。会話が成立しない人間ゴミ、筋を通さない人間クズ、そして、何度やっても結果が変わらないゲームの負けイベントだ!


 は絶対に認めない!無の可能性をは絶対に否定する!!」

皆さんこんにちは、Re:youと申します。

すぐに終わらせるはずだった序章がもう少しだけ続きます。


異世界突入までもう少しですのでもう少々お待ちください。

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