1章の十二 ギルドとレベル
後書きを修正しました。
「ほら、これで手続きが終わったぞ」
色々とかいた書類と引き換えに俺は冒険者ギルドのメンバーカードをいただいた。
「ありがとうございます」
僕はグリルに案内されて冒険者ギルドへ訪れていた。
冒険者ギルドと言っても、こじんまりした酒場のような場所である。
中に入ると、いくつかの机と一列に並んだカウンター、そして、壁には受付ボードが設置されて、そこに依頼書が張っている。
中に入った時はお酒のボトルを布で丁寧に吹いているマスターと冒険者にしては年齢が高そうな30代、40代の数人がテーブルで酒を飲みながら居座っているだけだった。
若者である10代や20代の冒険者は全く見られない。依頼をこなしに出かけているのだろうか?
そんなことを思いながら、僕はグリルに色々と教えてもらいながら、冒険者ギルドのメンバーカードを作成した。ちなみに手数料はグリルに支払ってもらった。あざーす!
カードを作成するときに自分の血を付けるのは本当に苦労した。
指を切りすぎて出血多量で死んだら困るからね!・・・って見事に切りすぎて、人差し指をヒモで結んでもらい、血止めしているんだけど。
と、あらかた作業が終わると、ギルドマスターが「最後に」と言って、奥の部屋からあるものを取り出して、テーブルの上に置いた。
「この水晶に手をかざしてみてくれや」
「これは?」
何だ?占いか?明日の運勢でも占うのか?
まさか、これからのことについて占いで決めるつもりなのか?
「読取だな」
僕の質問にグリルが答えてきた。
「ロード?」
ゲームでいうセーブ、ロードシステムだろうか?
・・・ええ!この世界って死に戻りできるの!
ループしてやり直しとか出来るの!
と冗談半分で思ってしまったが、説明を聞く限り、やはりどうやら違うようだ。
「えっと、さっきも説明した通り、冒険者ギルドにはAからFまでのランクがあるんだよ。
実力のないものが高難易度のクエストをして簡単に死んだりしないためにな」
マスターが少し面倒くさそうな顔で説明をしてきた。
「冒険者ギルドに依頼されるクエストの種類は様々なんだ。
冒険者の本業と言われる討伐系クエストや採取系クエスト、
ロマンあふれるダンジョンや未開地の探索クエスト、
あちこちと動き回る冒険者だから可能であるお使いクエスト、
誰でも簡単にこなせるような労働クエストなんかが存在する。
他にもギルドから個人に対して直接交渉するギルドクエストや、傭兵クエストとかもあるが、基本的なクエストは主にさっき言った5つだ。
そして、これらのクエストにはランク分けをされているんだ。
例えば、誰でもできる労働クエストは一番下のFランククエストだが、ゴブリンの討伐クエストはEランク、ワイバーンの討伐クエストならBランクのクエストになる。
そして、Eランクのクエストを受けるためにはEランク以上、Bランクのクエストを受けるためにはBランク以上の冒険者じゃないと受けることができない。
まあ、チームを組めば、チームランクが別に出来るからそれでランクBになって受けることも可能だけどな」
なるほど、クエストは能力に応じてできる内容が決まってくる。
そしてチームを結成すればそのチームでランクが作られて、どちらかのランクが到達していれば、希望のクエストを受けることが出来ると言うことか。
「最後に、個人のランクは実力と実績を用いて振り分けられる。
だがまあ、姿を見ただけで実力が分かる人間なんざほんの僅かしかいない」
と、ここまでの説明で読取の意味が何となく推測できた。
「これを使えば実力がわかると?」
「そうだ。カードを発行すると、カードが魔物なんかとの戦いの様子を記録してくれる。
どの魔物をどれくらい葬ったのか?
どれぐらいの傷を受けたのか?
あるいは、どれくらいの力や知恵、魔力を持っているのか?
どんな剣術を得ているか?どんな法術を持っているか?
そういうのをカードが記憶して、読み取り(ロード)して解析をすれば大体の実力を数値化してくれるのさ。まあ、どうやって数値化しているのか原理は分からねえがな」
「へえ」
原理がわからない・・・って、地球でも似たようなものか。
スマホやPCが動いている原理を答えられる人間って意外に少ないもんな。因みに俺も分からない人間の一人である。
「まあ、俺が見本を見せる。見てみろ」
そう言って、グリルは水晶に持参していたカードを当てると、水晶が光って、文字が浮き出てきた。
グリル・モワール 戦レベル16
たったそれだけの数値が表示された。
「へえ・・・」
たったこれだけ?どういう基準なのか、何で判定しているか、全く分からない。
「戦レベルが戦うときの参考の数値と言うのがわかりましたけど、数値の平均は?能力の詳細は出ないんですか?」
「この村の中にいる冒険者の平均だと大体が8~10だな。能力の詳細は高価な魔道具なら調べられるが、こんな田舎の村だったら、これが精いっぱいだ」
なるほどね・・・となると、グリルの数値は他の人よりかなり高いと見える。
「因みにこの村の冒険者はソロなら殆どがランクF
グリル様の実力ならソロでランクEと言うところか?」
ランクEと言うと下から二番目のランクだな。強いのだろうか?弱いのだろうか?この世界での強さの基準がいまいち分からない。
そもそも戦いを生業としている冒険者が全員ランクFということは可笑しいのではないか?
一応、他の人物も聞いてみよう。
「ギルバートって人物を知っていますか?」
「ああ、あいつは最近ここに来た奴だろ。見た目が怖くてさ、ビビったよあいつは・・・」
最近・・・いつ頃に来たのか気になるが、あまりそういう追求はやめよう。新人冒険者が聞きそうなことを聞く。
「彼のレベルはいくつでしたか?」
「ん?、ああ、いや、あんまり言いふらすのは冒険者の間でよろしくないんだが・・・レベルは30以上とだけ言っておくよ」
「・・・30以上」
単純計算なら、グリルが二人もしくはそれ以上の戦力になる。
「あいつはこの村でも別格だよ。余所の町でも有名だし、参考にしなくていい」
「でも、30だと、冒険者ランクでいえばどれくらいになるんですか?」
「そうだな・・・戦レベルが30だと、ランクはDだろうな。パーティで平均がそれくらいならパーティランクでランクCのクエストを受けられる」
D・・・30の数値はそんなに高くないのか?
「ああ、世間知らずみたいだから言っておくが、Dランクの冒険者になれるのは100人に1人くらいだ。大抵はFランクやEランクで冒険者人生を終えるからな。
こんな偏狭な村にDランク冒険者がいるのは凄いんだよ」
と、ギルドマスターが説明を補足してくれた。
「ま、王都に行けば、そのランクの冒険者は珍しくない。
CやBランクの冒険者だってうようよいる。もしかしてそこの出身か?」
「ああ、いえ、故郷はそういう稼業と無縁でしたので・・・」
そう言って否定するがギルドマスターは何かを確信した目で見ていた。いえ、違いますよ。その目は節穴ですよ!
でも、都会と田舎では冒険者の質が違うのか。
冒険者ギルドは人が多いところほど、盛んに行われているのだろうか?
純粋に冒険者の数が違うのか?
色々と聞きたいことはあるがそろそろ本題に移るべきだろう。
「と、まあ、説明はこれくらいにして、とりあえず当ててみろ。
戦った記録が入ってなくても、筋力や体内にある魔力量で大まかに判断することができる。正確ではないけどな」
「・・・分かりました」
さて、いよいよ僕の評価が明らかになる。
異世界に来てから、僕の体は自分の体ではないと思うくらいに調子が良かった。明らかに違うのだ。
これからの事を考えれば評価の大きさによって方針が変わる。
唾を飲み込んで、僕はカードを当てた。
カズシ 戦レベル18
「へえ、18か・・・18?
すごいな!最初の数値でこの数値とはかなり高い性能を持っているんじゃないか?」
これが・・・今の僕の実力・・・かはわからない。
分からないけど・・・これは微妙な結果が出た。
本来なら普通の冒険者の平均より倍近く高い数値に喜んでいいはずなのだが、事が事だけに素直に喜べない。
この数値だと流石に力で解決する武力行使は期待できそうにない。
まあ、チートを持っているわけではなかったから期待しているわけではなかったけど・・・そもそも武力行使は悪手なんだけどさ。
かといって、この数値は相手が無視できる数値ではないだろう。いや、嬉しいよ。平均の数値より高くて嬉しいけど!
それだけ他の人に目をつけられる結果である!
今回の出来事からすれば、ある意味最悪の結果と言っていい!
「まあ、最初の値はかなり不安定だからな。一度戦って、戦レベルが結構上がったり、逆に下がったりするから気にしなくていい。経験を積んだり、力をつけていけばレベルは上がるからな」
「だから、その数値に拘らずに弱いモンスターから討伐していけよ」とアドバイスをくれた。
その話が本当であれば、最初は1とかにしてほしかったです。もしくは100。流石にそれはないと思うけど。
小説では主人公の能力が最初は平均値や初期値でがっかりするし、高すぎる能力で目立ちたくないと憤慨するキャラも存在する。
でも今回に限っては逆であって欲しかった。この数値では相手の油断を誘えないし、ハッタリも使えない。僕にとって無価値だ。
それに大体の実力も知っている。少なくとも全力で戦ってもギルバートには勝てる見込みが薄いと知っている。
本来の実力はこの数値と同等かそれ以下だろう。
それくらいわかればもういいのだ。ただ、評価を知りたかった!その評価がこれだ!
「はい、頑張ります。いろいろ教えてくれてありがとうございます」
僕はそう言ってお辞儀をして振り返る。グリルと一緒に冒険者ギルドを出た。
「やはり、お前は見込み通りの実力だったな」
「・・・そうですね」
グリルが戦力として期待をしている。まあ、数値上では彼に勝っている。村の冒険者と比べれば、かなり強い部類なのだろう。
でも、規格外でもない、たった一人の戦力で流れが変わるとも思えない。
奴は僕をどう利用するつもりなのだろうか?
「それで・・・これからお前はどうする?」
逆に僕に聞いてきた。
「ああ、ちょっと村の中をうろついてみます。作戦会議はその後にしてほしい」
「何故だ?」
「時間がないことは分かっているけど、この村の実情を見たい。何も知らなければ思うように動けないし」
「指示は俺が出すと言っても?」
「まだ完全に信用しているわけではない」
そう言うとグリルは心外だと訴えるように黙り、そしてしばらく考え込んでニヤリと笑った。
「ある程度の信用は得ているのだな」
・・・なんか勘違いしているみたいだから、ちゃんとした理由を言おう。
手駒にできると勘違いしてもらったら、こっちも困るしな。
「・・・仮に信用していても、予定外の事があったらどうします?
いや、どんなことをするにしても、予定外の事は必ずと言っていいほど起きる。
そんな時にあなたの方針通りに動けるように色々と知りたいんだ」
そう言うと、グリルは驚きを隠せない表情をしていた。
「そうか・・・なるほどな。それは考えていなかった」
グリルはなにか納得をしているが・・・え?もしかして考えていなかったのか?
なんか怪しくなってきた。グリルの策に可能性が本当にあるのだろうか?嫌な予感がするのは僕だけか?
「分かった。それじゃ、日が暮れたらこの場所に向かってくれ。俺はいつでもいるから、用が終わったらメモの通りにしゃべればいい」
そう言って、グリルはギルドを出て村の出入り口の方角に体を向けた。
「・・・ええ、分かりました」
その言葉を聞くと、グリルは僕から視線をはずし、体を向けた方に歩いていった。
「さてと・・・どこから行こうか?」
村人の様子でも見に行こうか?村の中にも異変があれば、何かが分かるかもしれないし。
ああ、そうだ。一応、メモの中を見ておこう。
どこに行けばいいかは事前に把握しないと、人がいなくなってからじゃ道案内をしてもらえないしな。
僕はメモの内容を見てみた。
そして、ある事実に気づいてしまった。
「・・・読めない」
そういえば、1週間前はそんなことを懸念していたのに、すっかり忘れていた。
・・・どうしよう。
『ヘルプ』
ソロの実力でランクを振り分ける場合
ランクEに上がるためには最低でも戦レベルが15以上必要になります。
因みに戦レベル15以上の人族は人族全体の15%程で、貴族全体では半分以上がこのレベルです。




