1章の十 初めての・・・
小説情報を確認したところ、評価が付けられていました。
評価をしていただいた方、ありがとうございます。
心の励みにして頑張ります。
日が登り始め、異世界の奇妙な鳥の鳴き声が聞こえて目が覚める。
昨日は色々とあった。
アレスやセーラ達の訓練に付き合っていたら領主の息子が表れて、
セーラが嘘をついたせいで、護衛たちと戦うことになって、
領主の息子も訳ありと思って話を聞いてみると、孤児院が危険な状態であることを知って、
そして・・・いや、今は考えるのをやめよう。
気分のいい朝からこんなことを考えては次に進まない。
それにそれらのストレスは発散されている。
女神に向かって魔力弾を放ち、逃げる彼女に対してどうやって当てるか?
夢とはいえ、あんな爽快なイベントをしたんだ。魔力弾についても理解を深めることができたし、結果的には良い夢だった。
僕は左腕を使ってベッドから起き上がろうとする。
「・・・すぅ、すぅ」
メインが僕の左腕を枕がわりに眠っていた。
・・・・・・え?
体が、思考が固まってしまった。
ウー!ウー!ウー!ウー!
緊急会議!緊急会議!緊急会議!緊急会議!
ただいま、意味不明の現状となっている!至急に状況確認と対策を決める会議を始める!
脳内長官(まずは現状、どうなっている?)
脳内部下1(サー!孤児院から借りたベッドで眠っていたら、メインが隣で眠っております!)
脳内部下2(サー!自分の左腕を枕にしてすやすやと眠っております!)
脳内長官(よろしい。ではどのような憶測が導き出せる?)
脳内部下1(サー!自分の脳みそはミジンコよりも小さいので分かりません!)
脳内部下2(サー!自分の頭はダイヤモンドよりもカッチカチなので思い付きません!)
脳内長官(馬鹿者!諦めるな!この状態を整理せねばならん!)
脳内部下1(サー!お言葉ですが長官!何故整理せねばならぬでしょうか?)
脳内部下2(サー!メインに直接聞いた方がよろしいのでは?)
脳内長官(愚かな貴様らにこの事態の深刻さを教えてやる!私の現在の服装を報告しろ!)
脳内部下1(サー!素っ裸であります!)
脳内部下2(サー!いつも寝るときは裸族であります!)
脳内長官(そうだ!そんな男が隣に女の子を寝かしておれば、どんなことが想像できる?)
脳内部下1(サー!『変態』という称号を得ます!)
脳内部下2(サー!『女の敵』という悪名になります!)
脳内長官(その通りだ!それはなるべく回避したい!)
脳内参謀長(発言よろしいでしょうか長官!)
脳内長官(参謀長か!どうした?)
脳内参謀長(まずはメインの状態を把握しておくべきです!最悪の場合は責任をとらなくてはなりません!)
脳内部下1(サー!責任をとらなくてはなりません!)
脳内部下2(サー!服装を見なくてはなりません!)
僕は参謀長の言う通り、メインの服装を確認した。服を着ているのなら、間違いが起きた可能性は低い。
上半身しか見えなかったが、メインは服を着ていなかった。
脳内部下1(サー!教官!責任をとるしかありません!)
脳内部下2(サー!教官!異世界の住人になるしかありません!)
脳内長官(お、お、お、お、落ち着け!まだそうと決まったわけでは・・・そもそも、昨日は早く寝て、女神と会話していたのだ!そんな間違いが起きることなどあり得ない!女神だってそう言っていただろう!)
脳内部下1(サー!女神の言うことは信じられません!)
脳内部下2(サー!女神の言うことはいつも何かがかけています!)
脳内長官(・・・は、反論できない!)
脳内参謀長(長官!参謀長の私から提案します!毛布をめくりましょう!)
脳内長官(何を言っている参謀長!気は確かか!)
脳内参謀長(今回のことは私でも推測できません!ですが、毛布をめくることでより確実な推測をすることが可能です!)
脳内長官(そ、そうか・・・いや、どうやって推測するのだ?)
脳内参謀長(まずは彼女のカップ数を!見た目ではAですが、もしかしたらダブル・・・)
脳内長官(むっつりが!このエロ参謀!そんなことをしている場合ではない!)
エロ参謀(しかし、長官!気にならないのですか!興味がないのですか!あの丘にあるピンク色のチョモランマを!)
エロ部下1(サー!私は興味があります!)
エロ部下2(サー!やるべきです!教官!これは確認のためです!)
脳内長官(ふざけるな!僕はスットーンには興味がない!興味がないんだ!)
エロ参謀(そうですか、では長官!死ね!)
脳内長官(ぐわー!な、何をする!参・・・謀・・・長!)
新・長官(これより、私が長官となった!毛布をめくるぞ!)
エロ部下1(サー!参謀長官!万歳!)
エロ部下2(サー!新長官!あなたのリビドーに万歳!)
新・長官(これより、チョモランマに登頂する!準備はいいか!)
エロ部下1・2((サー!!イェッサー!!))
僕はメインが起きないように左腕を慎重に外す。
「ん・・・んぅ」
彼女の息が聞こえてビクッと動きを止める。
「・・・すぅ」
やはりこの行為は危険だな。やめた方がいい。
にもかかわらず、脳内会議では「やーれ!やーれ!」とコールが続いている。ガキか!
このままでは参謀長官が無理矢理左腕を操作するかもしれない。
何かないだろうか?何か役に立つ道具は?
そう思って上半身を少し上げて何かないか探してみると・・・
扉から覗きをしているアレスとセーラを見つけた。
「・・・」
「「・・・・・・ごゆっくり」」
そう言って、アレスとセーラは扉を閉じた。
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結論から言うと、僕とメインは間違いをおかしていなかった。
というのも、どうやらメインはよく寝ぼけて他の部屋のベッドに入るらしい。これが初めてではないようで、何回もやっているとセーラは言っていた。
そして、メインも寝るときは裸族であった。
流石に下は穿いているみたいだったけど、彼女が目が覚めたときは襲われたと思ったのか、パニックになって何故か僕にビンタをかましました。
理不尽だ・・・と思ったが、覗こうとした僕に天罰が降ったと思えば、まあ許容はできた。
「さ、さてと、準備もできたから、そろそろ行くっす」
「りょ、了解」
問題は非常に気まずい空気になったことだけである。
さっきからこちらに視線を合わせない。
「留守中はいい子にしてるっすよ」
「「「はーい!!!」」」
子供達が笑顔でそういうと、僕とメインは孤児院の玄関を出て、庭を抜ける。
周りが草で生い茂る中、踏んで地面が固まっていることで草が映えてない自然にできた道を歩き出す。
この日、僕は異世界に出て、初めて外に出た。
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村までは凡そ10kmの道のり
歩いて二時間位の道のりを渡って村につく。
そう聞いていたが、その間に何も起きないのは珍しいらしい。
そして、この時も例外ではなかった。
「カズシ、魔物っす」
メインがそう言って、腰に着けていたナイフを取り出す。
僕も左手を構えて、魔力弾をいつでも打てるように準備した。
「何もいないし、足音も何も聞こえないが、本当にいるのか?」
「最近出来た足跡があるっす。この足音は『グラスウルフ』と言って、雑草に擬態して近づいてくる小型の魔物っす。足音も草が擦れる音に紛れて近づくから分からないっす」
「足音で判断すると言うことは、行動範囲は狭いのか?」
「そうっす」
なるほど、だから新しい足跡があると、近くにいると言ったのか。
何も知らなければ、無警戒に進んで食べられたと。
やだねー。
そんなことを考えると、風が吹いて、草が揺れて擦れる音が聞こえる。
そして、右側から突如襲いかかる緑色の狼が見えた。
一瞬で距離が詰まっていた。
「魔力弾」
僕が左手で魔力弾を放ち、魔物がそれに当たる。
「キャウ!」
魔物がそんな鳴き声を上げて怯んだ隙にメインがナイフで突き刺した。
一瞬で死闘が終わった。魔物は急所に当たったらしく、一撃で息が途絶えた。
こ、怖ぁ~!
一瞬だった!一瞬で死にそうになった!警戒してなかったら、本当に死んでいた!
「カズシ、怪我はないっすか?」
「え、ああ」
「嘘をついていないっすね?魔物の体液には病原体が沢山含まれているから、傷口に入るとヤバイっすよ」
「ほ、本当に大丈夫!怪我はしてない!」
僕がそういうとメインは安心した顔をとる。
そうだよな。俺ってここの世界での抗体がないんだった。
帰ったら清潔な水で手洗いうがいをしておかないと・・・傷はないけど、魔物の反り血を浴びている。
「近くに見晴らしのいい場所があるのでそこで休憩するっす」
「分かった」
その場所に向かうと、僕は荷物袋に入っている布で血を拭き取り、メインを見ていた。
メインは見事な手さばきで魔物の皮を剥いでいた。
見ていて気持ちのいいものではなかった。狼としては小柄のその魔物の動脈を切って、血抜きし、毛皮と肉に素早く分ける。その時の魔物のグロテスクな姿は悪夢で出てくるくらいにおぞましかった。
「毛皮と肉に分けてその後はどうするの?」
「毛皮は服の材料になるので服屋に、グラスウルフの肉は食用の肉になるので肉屋に売るっす」
「『グラスウルフ』の肉は旨いのか?」
「家畜の肉よりそりゃ不味いっすけど・・・カズシが孤児院で食べてた肉はこれっすよ?」
「マジで!」
孤児院のは不味い肉ではなかった。肉食動物の肉はアンモニアの臭いが強くてボサボサしているから不味いって聞いたことがあるが、僕が食べていたお肉は全然そんなことなかった!
「『グラスウルフ』の肉はまだマシっす。沢山食べられる所があるし、無駄な素材が全然ないっすよ!
問題は『スカルウルフ』っす。あれは肉がないし、あっても腐っているから食べられるところが全然ないっす」
スカル・・・不死系統の魔物もいるのか・・・やだなぁ。
「そういうのは夜にしか現れない?」
「いや、昼間でもバンバン出てくるっすよ。だけど、鈍間なんで昼に現れても全然大したことはないっす。
でも、視界が暗くなる夜になると、あいつらは厄介だから気を付けた方がいいっすね」
なるほど、昼夜は関係ないと・・・
「じゃあ、今捌いている魔物も『スカルウルフ』になるのか?」
「いえ、魔石はきちんと取り除くから大丈夫っす」
そう言って、メインは魔物の腹に切り口を入れて、手を中に入れると、内臓をドバっと取り出した。
内臓を取り出した時に異臭がして、鼻を塞ぐ。一瞬吐きそうになった。
「これが魔石っす。これが無ければ魔物にならないので安心するっす」
「そうか、わかった・・・『ヘルプ 魔石』」
魔石
動物、植物、無機物が魔物になるための媒介物質。魔石が大きいほど、魔物の力は強大となる。
魔物の媒介となっている間は、外気の魔素を吸収して魔力変換する性質を持ち、時間が経つにつれてどんどん大きくなっていく。
魔道具の装置にも利用されるため、主に魔術ギルドで買取してもらえる。
まあ、何というか、これが異世界なんだね。魔道具とか想像できるようなものが現れた。
魔素は・・・とりあえず、魔力の元となる一つの物質と判断すればいいのかな?後で調べてみよう。
「メインはこういう事に慣れているのか?」
「どうしてそう思うっすか?」
「いや、めちゃくちゃ慣れているというか・・・魔物に対して何の躊躇もなく殺していたし」
普通、命を絶つ行為は覚悟がいる。どんな状況であろうとだ。
たとえ、相手が可愛らしい子供でも、話の通じないキチガイな殺人鬼であろうとも、本能で襲い掛かる動物だろうと、命を絶つという行為は人間性から遠ざかる行為なのだ。
いくら、正統性を主張しようとも、合理性を主張しようとも、その行為の意味を知っていれば・・・迷うはずなのだ。
「・・・魔物を殺さないと、殺されるっすよ?」
当たり前のように言ったその言葉に、僕は気が重くなった。
僕は魔人を殺した。そんな男が殺す殺さないをどうこう言う資格はないが、やはり嫌になる。
覚悟はしていた。でも、覚悟は少し足りていなかった。
初めての討伐は・・・高揚感もなく、あっさりした感じでもなく、ただただ気分が悪かった。




